(42)エピローグ
お待たせしました。本日分の更新です。
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同調の訓練を兼ねて、ディム・トゥーラは三日に一度は、自分のウールヴェに同調して地上に降り立った。
地上との機械通信設備がまだ復旧していない今、ウールヴェの同調移動はリアルタイムで接触できる貴重な手段になっていた。
もっとも非番の時は、きわめて個人的事情と目的により地上を探索をした。
案内人として駆り出されたの犠牲者は、カイル・リードだったが、彼が支援追跡者の要求を拒否するわけもなかった。
一応、ディム・トゥーラの研究行動は天下無敵の大義名分があった。
大災厄前の生物種調査と記録である。
最初は、同調の度に支援追跡者として同席していたロニオスも、やがて手を抜くようになった。それほどディム・トゥーラの同調は安定していた。
「これは俺のウールヴェの恩恵ですか?」
『君の能力とウールヴェの同調のなせる技だ。第二のカイル・リードだな』
「規格外と一緒にしないでください」
『規格外は褒め言葉だったのでは?』
師匠が、嫌な突っ込みをした。
ディム・トゥーラがいつもの同調訓練から目を覚ますと、傍らに座っているのはジェニ・ロウだった。
「おはよう。よいお目覚め?」
「……おはようございます……リードは?」
「ロニオスなら管理ルームよ。何かあれば、呼んでくれと、貴方の監視を私に投げたわ」
「……最近、彼は露骨に手を抜きますよね?」
「卒業証書の一種だと思えばいいのよ。貴方の安定ぶりを褒めていたわよ」
「そういうもんですか?」
「そういうものよ。散歩は楽しかった?」
ディム・トゥーラは赤面した。なぜ地上を散歩していることがバレるのだろうか。
「とても」
「それはよかったわ。ロニオスが管理室で貴方を待っているわよ」
「わかりました」
ディム・トゥーラはようやく半身をおこした。
「ジェニ・ロウ」
「何かしら」
「貴方はカイル・リードの研究都市で育った経緯に詳しそうだ。今度、詳細をきいても?」
なぜか、ジェニ・ロウはため息をついた。
「……負けたわ」
「は?」
「ロニオスと賭けをしていたのよ。貴方が私にカイル・リードの生い立ちを聞いてくるかどうか」
「――」
「ロニオスは、早々に貴方が聞いてくると言っていたわ」
「彼は予知能力者ですか?」
「いいえ、規格外なだけで予知能力の類は持っていないし、持っているなら、彼相手に賭けをする馬鹿がどこにいると思うの?」
「……そういえば、彼は修羅場のときに、アードゥル相手にも賭けを持ち掛けてましたね……」
「そうなの?」
「ギャンブルの醍醐味は、相手の行動の先読み、切り札の保持、相手に勝てないと思わせること、親の総取りだそうです」
「……あの人、貴方に何を伝授しているのかしら……」
「……俺も、時々同じ感想を抱きます……」
その時、二人の脳裏に思念が響いた。
『ジェニ・ロウ、ディム・トゥーラを起こして、来てくれ』
「彼は起きたわよ」
『そうか、少々やっかいな問題が起きた』
ジェニ・ロウは顔をしかめた。
「ジェニ?」
「覚悟して。彼が『少々やっかいな問題』というときは、大災厄並みの大事よ」
「やめてください、不吉な……」
ジェニ・ロウは、ディムの抗議に首をふっただけだった。
ディム・トゥーラの支援追跡を途中で手を抜いた問題の初代の人物は、いつものウールヴェ姿で旧エリアの管理ルームにいた。エド・ロウとともに、スクリーンに走る膨大な情報量を見つめていた。
「ロニオス、ディム・トゥーラが起きたから、連れてきたわよ」
「少々、やっかいな問題とはなんです?」
すぐにディム・トゥーラは本題を切り出した。
反応したのは、エド・ロウだった。彼は顔を向け、スクリーンを見ろと促した。
ディム・トゥーラはスクリーンを見つめたが、その映像を理解することに数秒を要した。そもそも、映っているものが何か理解できなかったからだ。
『全宇宙を司る精霊は、試練を施すのが大好きなんだな……』
リードが平坦な声でつぶやいた。
『全ての計算がやり直しだ』
惑星に落ちるはずの恒星間天体の巨大な金属鉄と岩石の物体は、真っ二つに割れ以前と形状を変えていた。
明日から恒例の閑話を数話はさむ予定です。
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