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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第5章 精霊の守護者
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(5)離宮②

 サイラスが真顔でミナリオに忠告をする。


「やめといた方がいいぞ。こいつ、絵画の模写に夢中になって部屋からでてこなくなって、晩餐会をすっぽかすのが目に浮かぶ」

「なっ――」


 まさかのサイラスの裏切りの忠告である。しかも、その内容はリアルすぎて、ミナリオが怯んだ。


「……案内は晩餐会が終わった後日にしましょう」

「英断だ」

「サイラス!」

「気もそぞろになって、晩餐会で失敗したら、恥をかくのは姫様じゃないのかい?」

「うっ……」


 痛いところをついてきた。反論の糸口すらない。ファーレンシアが主役なのに、エスコート役のカイルが失敗するわけにはいかなかった。


「晩餐会の成否は重要です。しばらくは、この部屋の天井画で我慢していただけないでしょうか」


 ミナリオの懇願に近い言葉にカイルは承諾するしかなかった。






 あらためて舞踏会場になる部屋の天井画を見つめる。

 天井までの高さが15mほどの吹き抜け構造なので、天井画の細部までが見づらい。


「中央の円形が若きエトゥール王と精霊の邂逅をテーマにしています」


 ミナリオが解説をする。


「そこから八方向にエトゥール王を支えた賢者達(メレ・アイフェス)になります。さらにその脇には象徴と言われる精霊獣が描かれています」

八賢人(メレ・アイフェス)について書かれた書が少ないのはなぜだろう。エトゥールの書庫にもほとんどなかった」

「書くのを許さなかったというのが定説ですね。もしかしたら、禁書としてメレ・エトゥールが所持しているかもしれませんが、あまり存在しないのは確かです。口伝が多く、精霊獣の化身やら様々な逸話が生まれたのもそれ(ゆえ)です。初代エトゥール王の時代は、ここら一帯はほぼ砂漠だったらしいですよ」


 カイルははっとした。世界の番人の領域でそんな映像を見たような気がした。

 書くことが許されなかったから、絵画で残したことも考えられる。


「今年で建国何年?」

「500年ほどになります」

「わずか500年で砂漠が田園地帯になったと?」

「エトゥール王は精霊に国の加護と繁栄を求めて、精霊と契約したと言われてます」

「精霊と契約……」

「契約をしたからこそ、エトゥール王家は精霊との対話の力を得たと言われています」

「ファーレンシアのような姫巫女?」

「はい」


 ミナリオが天井画の一部を示す。そこにはエトゥール王とおぼしき人物と青い髪の女性との婚姻が描かれている。


「初代エトゥール王は、精霊の声をきくことのできる巫女を(きさき)として迎えたのです。巫女の力を受け継ぐ王家の者は青い髪と緑の瞳を持つと言われています」

「……セオディア・メレ・エトゥールとファーレンシア」

「はい、御二方とも特殊な力をお持ちです」


 確かにセオディア・メレ・エトゥールとは、初対面から言語が通じた。彼はファーレンシアと同様無意識に、精神感応力を使いこなしているのかもしれない。

 シルビアはメレ・エトゥールが精霊鷹を自在に呼べるとも言っていた。会話ができるとも。

 街の散策時に、彼は精霊鷹がカイルを頑固と評していると、からかいの言葉を投げてきた。彼は実際に会話をしていたのだ。


 それが古代の契約の恩恵なら、初代エトゥール王が対価として精霊に払ったものはなんだったのだろう。

 精霊に大災厄の詳細を語らせない誓約を科したのは初代エトゥール王自身か、それとも別の存在か?


 美しい天井画は、カイルに何も語らなかった。

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