(38)幼体⑲
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しばらく夜の更新が続きます。(多分)
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「なんで虎なんだよ」
サイラスが目の前のウールヴェの形態に、呆れたように突っ込む。彼は、物珍しさにウールヴェの尻尾や足を確認している。爪の鋭さをチェックして、殺傷力を算出するところは、職業病に近いものがあった。
『俺に聞かないでくれ』
同調しているディム・トゥーラが答える。
「本人以外の誰が答えられるんだ」
『……専門家はカイルだろう』
「僕にふらないで。だいたいサイラスは他人のことを言えないでしょう?子供の飛竜型のウールヴェも十分特異だと思うよ」
『飛竜型のウールヴェだと?』
「ディム、研究はあとにしてね。今は対話でしょ?そのためにわざわざ聖堂まで来てもらっているんだから」
カイルは、やんわりと釘をさした。絶対にあとで飛竜の絵を要求される――そんな予感がした。
皆がディム・トゥーラの出現の報にエトゥールの聖堂に集まっていた。シルビア、サイラス、クトリ――西の地からイーレも飛んできた。
聖堂に到着した面々は、カイルのそばにいる虎の姿のウールヴェがディム・トゥーラであることに驚き、受け入れるのに数分を要した。
まさかディム・トゥーラがウールヴェに同調して、地上に現れるとは思わなかったからだ。
「同調って、簡単にできるものなのか?」
サイラスは首をかしげて、カイルに問いかけた。
「それこそ、僕に聞かないで。僕もびっくりだよ。僕の存在意義は地に堕ちたよ」
「同調は十八番だったもんな」
「体調は大丈夫なのですか?同調酔いは?」
シルビアが医者らしい内容の質問をした。
『リードと同調するよりはるかに楽だ。心配はない。むしろリードと同調したあとの方が反動がひどかった』
「症状は?」
『吐き気、頭痛、発汗、発作のような呼吸困難』
「平然としているカイルが規格外なのが、よくわかる証言です」
『論文が数本かける』
「後日、聞かせてください。この虎の姿なら問題ないのですね」
『多分』
皆はその返答に安堵した。ウールヴェに同調しての状態とはいえ、カイルしか連絡手段がなかったことを考えると、喜ばしいことだった。
「それにしても、さすがですね。ウールヴェをこんなに短期間で成長させるなんて――」
シルビアがつぶやく。
「やっぱり成長には使役主の精神感応能力の強さが要素としてあるのでしょうか……。非常に興味深い点です」
『あるかもしれない』
ディムのシルビアの考えに同意を示した。
「そんなことより、僕は観測ステーションに帰還したいです」
クトリが会話に割って入った。
『今、メインエリアの再起動中だ。移動装置の接続にはもう少しかかる』
「ええ~~僕、降下してから大変だったんですよ?」
『話はカイルから聞いている。クトリ、よくやってくれた』
ディム・トゥーラに褒められて、クトリ・ロダスは満足そうな表情を浮かべた。逆にカイルは憮然とした。
「……やっぱり、ほかの人はストレートに褒めているじゃないか」
『規格外という誉め言葉はお前だけの特権だ、喜べ』
「それ素直に喜べない……僕も普通に褒められたい……」
『100年待て』
イーレがぷっと噴出した。
「観測ステーションにいるような気分になるわ」
「確かに」
シルビアも微笑んだ。
「おかえりなさい、ディム・トゥーラ」
『ただいま』
「で、観測ステーションには、エドはいるのよね?」
イーレが確認した。
『いるが?』
「殴る。絶対に殴る」
『殴る?』
「イーレは所長が原体が死亡した場所に隠して連れてきたことに憤っているんだ」
カイルがディム・トゥーラに解説をした。
『……ああ、なるほど。所長は狸親父だからなぁ……イーレ、ジェニ・ロウもきている。イーレを心配している』
「私も二人と話したいわ。通信機の復活を待つしかないのよね?」
『そうなる』




