(35)幼体⑯
お待たせしました。またもや、日を跨ぎましたが、土曜日分の更新です。お楽しみください。
しばらく夜の更新だと思います。
ブックマークありがとうございました!励みになります!
「だいたいカイルの方が、ディム・トゥーラと付き合いがあるのに、何で僕達にディムのことを聞くんですか?」
「僕は、何にもディム・トゥーラのことを知らないんだ」
カイルの告白に二人は驚き、顔を見合わせた。
「あれだけの時間を共に過ごしていながら?」
「うん」
クトリはなぜか遠い目をした。
「貴方も個人情報には深入りしない質ですか。なんか既視感を覚えますね。似たような会話をして、ひどい目にあったや……」
「なんの話?」
「いえ、なんでもないですよ」
クトリはカイルを見つめた。
「本人に聞いてみればいいじゃないですか」
「それって、どう聞けばいいのかな?」
カイルの言葉にクトリは呆れたように口を軽くあけ、小声でつぶやいた。
「……不器用かよ」
「クトリ」
シルビアが軽く、クトリ・ロダスの脇をたしなめるように、小突いた。クトリはシルビアの方を向いて、言い訳をした。
「だって、これは研究馬鹿の引きこもりの人付き合い下手の変人同士の話ですよ?」
「言いたいことはわかりますが、もう少しオブラートに包んでください」
「わかる時点で、フォローになってないよ、シルビア。思いっきり肯定じゃないか」
カイルがシルビアの台詞に突っ込む。
「あら、失礼しました」
カイルはクトリを見た。
「変人同士って言うけど、別にディム・トゥーラは変人じゃないだろう」
「自分のことについて、変人認定を怒らないのですか?」
「事実だから」
「そこらへんの反応は対極なんですね。ディム・トゥーラには、思いっきり、根に持たれました」
「ディム・トゥーラが?」
「貴方の救出に躍起になっているから、不幸な事故だと割り切って中央に戻ればいいのに、労力を割いているのはなぜか、と彼にきいたんです」
「――」
「それに対して、彼は成り行きと答えたんですよ。成り行きでここまで深入りしているとは、あまりにも苦しい言い訳すぎて、研究馬鹿の引きこもりの人付き合い下手の変人認定したんです」
「――」
「そしたら、そのことを根に持って、中央に戻ったとき、大災厄についてのすさまじい量のデータ解析を押し付けてきたんですよ。ひどいでしょ?」
「――」
「プライドが高くて、貴方のために動いていることを、頑固に認めないんですよ。なんでしょうね、あのツンデレぶりは。こういう話ならいくらでもありますよ?」
カイルは反応に困って、シルビアの方を向き直った。
シルビアも内容を否定しなかった。
「確かにいくらでもありますね。ディムは貴方の処遇について、度々、所長に抗議していました。貴方もお人好しすぎて、依頼された案件を断ろうとしなかったでしょ?」
「それはディムにも言われたけど……」
「彼の不在中に水槽に落ちた事件で、彼も思うところがあったようです。私も常々不思議だったのですが、貴方の能力なら、能力目当てで近づいてくる打算的な研究者の本心なんてお見通しですよね?依頼に全部、馬鹿正直に応じていたのはなぜです?」
カイルはその追及にたじろいだが、諦めて懺悔をした。
「不和を起こしたくなかったんだ」
「不和?」
「みんな研究馬鹿でプライドが高いから、僕が内容を選り好みしていたら、断られた研究員の不満が増えていくのはわかりきっていた。長期間、閉鎖空間に滞在している状態で、そのストレスはよくない。僕が協力している限り、問題は起きないだろうと思ったからだよ」
「状況は理解できますが、実際は問題だらけだったわけですよね?」
「……うっ」
「だいたいあなたのストレスはどうなるんです」
「僕は平気だよ」
シルビアは首をふった。
「平気じゃありません。支援追跡者は、保護対象者の精神安定を第一に考えます。だから、ディム・トゥーラはそれを口実に、貴方が引き受ける仕事内容を精査して、断る窓口にもなったんですね」
「窓口?」




