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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第18章 精霊の帰還
629/1015

(10)帰還⑩

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。

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「駄目ですか?」

「駄目」

「いろいろ残念です」


 シルビアはあっさり引いたが、単純にお茶がともに飲めないから、『茶飲み友達』の枠からはずしただけではないかという疑惑は拭えなかった。単純な『友達』枠のトップに世界の番人が君臨しているような気配がした。


「私がお友達に頼んだとしても、降下の場合の位置ずれは想定すべきです。むしろ必要なら彼は容赦なく飛ばすでしょう」

「肯定してどうするの?!」

「カイル、冷静に考えてください。世界の番人は干渉してきますが、大災厄に関して、降下してくる人物を飛ばして私達に不利になりましたか?」

「――」

「私には緻密(ちみつ)な計算の上の援助に思えます。サイラスはリルに出会った。イーレは若長と縁を得た。クトリの移動装置(ポータル)は、間接的にアードゥルとの接触をもたらしています。紆余曲折(うよきょくせつ)ありますが、それらを経たのが、今です。私達は協力体制を築きつつあります」

「だったら解説の一つもあってもいいじゃないかっ!」

「解説できない理由があるのかもしれません。もしくは、何か制約が――」

「制約?」

「人には危害を与えられない」

「それ、制約なの?」

「リルはサイラスに出会ったとき、野盗(やとう)に襲われていたそうですよ?」

「――」

「リルを助ける直接的な干渉は、していません。戦争だってそうです。エトゥールを贔屓(ひいき)にしている割には、何も干渉していません。戦死者は出ています。野盗や敵国など一掃してしまえばいいのに、と単純に思いませんか?」


 シルビアの過激な指摘にカイルは軽く口をあけた。


「どんな悪人でも、彼は生きている人間に手を出せないのです。私はそういう仮説を立てています」


 シルビアは淡々と語り続けた。


「貴方だって、東国(イストレ)でアードゥルの剣を腹で受けつつ、世界の番人の干渉を期待して四つ目を一掃したのでしょう?四つ目が元はウールヴェだからこそ、できたことです。そう思いませんか?相手が人間の集団なら、貴方は今ごろ死んでいたことでしょう。世界の番人は、多くの制約の中で存在している。だからこそ、ナーヤのお婆様やファーレンシア様のような先見ができる審神者(さにわ)のような人間を必要とするのです。人間がもたらす災いは、人間の方で回避するように」


 自分が話題にでてファーレンシアは息を呑んだ。


「……そんな風に考えたことは、ありませんでした」

「ファーレンシア様はエトゥールという枠組みの中にいらっしゃいますからね」


 シルビアは微笑んだ。


「ナーヤのお婆様は、西の民の氏族という枠組みにいます。もしかしたら、各国にも審神者(さにわ)のような存在はいるのかもしれません。非常に興味深い点です」

「シルビアの移動装置(ポータル)は壊されている」

「そこですよ。彼は無機質な物――もしかしたら異世界の機械は壊せる、もしくは干渉できるってことですよ」


 シルビアは目を輝かせていた。


「シルビア」

「はい?」

「そこで興奮する意味がわからない」

「謎めいたお友達を知ることは、大好きです。だって、彼は今も聞いていることでしょう」


 なぜか、カイルには世界の番人が狼狽(ろうばい)しているように感じた。シルビアの暴走をやや抑えこむ必要をカイルは感じた。


「シルビア、シルビアの仮説はよくわかった。エトゥールに降りたったシルビアは誰と縁を持ったの?」

「私ですか?」


 シルビアは質問にきょとんとした。


「そう、シルビアが」


 意地悪な質問だったが、カイルはシルビアに考える時間を与えてみた。シルビアは真面目に考えこんでいたが、やがて頬に赤みがさしてきた。


――おお?


 部屋の皆がシルビアの反応を歓迎した。これは問題の人物に脈がある証明だろう。


「シルビア、誰が思い浮かんだ?」

「え、いえ、誰も――」

「誰が浮かんだ?誰か浮かんだよね?」


 カイルは問い詰めた。シルビアは珍しくたじろいだ。


「アイリです!アイリが浮かびました!」


 いや、その誤魔化し方は無理があるだろう――その場にいた全員が心の中で突っ込んだ。

次回予告(あくまでも予定)

アイリちゃん(がシルビアに対して)の教育的指導

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