表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第18章 精霊の帰還
628/1015

(9)帰還⑨

お待たせしました。

本日分の更新になります。引き続きお楽しみください。


ブックマークありがとうございました!

「なにか、やらかしたとは思っていました」


 シルビアの容赦ない言葉に、実際やらかしたカイルは、羞恥(しゅうち)のため両手に顔をうずめた。

 精神感応者(テレパシスト)同士の対話としては、間違いなくやらかした部類に入る。アードゥルの特訓で制御が上手くなったと持ちつつあった自信は、粉砕された。

 しかも、対話の混乱ぶりは、ウールヴェのトゥーラという中継機がシルビア達に伝達していた。カイルは見栄をはることも、叶わなかった。


「今までの精神感応者(テレパシスト)の昏倒事件は、相手の能力の未熟さの結果でしたが、ディム・トゥーラに思念を投射するとは、傷害で起訴されても文句は言えませんよ?」

「……ディム・トゥーラは許してくれたよ」

「許さないことが、今までありましたか?」

「うっ……」

「だいたい、ディム・トゥーラは貴方を甘やかしすぎなんです」

「まあまあ、シルビア様、よいではありませんか。無事にディム様の所在が確認できて、今後の連絡方法も取り決めもできた。素晴らしい成果です」


 ファーレンシアがカイルを(かば)い、シルビアにとりなした。


「ファーレンシア様も甘やかしすぎです」

「カイル様はなぜか甘やかしたくなるタイプなのです。ねぇ、ミナリオ」

「そこで、私に同意を求めるのは困ります。エル・エトゥール」


 専属護衛のミナリオは、立場上、遠回しにエトゥール姫に抗議をした。


「カイル様を甘やかす立場の代表は、私と貴方でしょう?」

「ファーレンシア様は婚約者ですので、堂々と甘やかしてよろしいかと思いますが、私は専属護衛の立場なので、甘やかすなどという表現は不敬にあたります」

「でも、甘やかしていますよね?」

「そこは、見て見ぬふりをしていただきたいと思います」

「お二人とも、今は甘やかしすぎないで欲しい、という要望が議題ですが?」


 シルビアがやんわりと二人の会話を(たしな)める。


「「無理です」」


 婚約者も、専属護衛も完全に努力を放棄していた。

 シルビアは、やや呆れたように話題の中心の人物に視線を向けたが、カイルは事態に赤面し、さらに両手に顔をうずめた。カイルには、ファーレンシアとミナリオには、甘やかされているという自覚があったからだ。


「で、話し合いの結果は?」

「1日1回の定時連絡を設けた」

「そうしないと、貴方がまた(わめ)きかねないからでしょう」

「ううっ……旧エリアを復旧させて、そこを地上専用にするそうだ」

「旧エリアを恒星間天体にぶつけるなら、それまでの暫定処置っていうことですか?」

「それもあるけど、ほら、思念で端末を操る怪しい動物がいたら、まずいでしょ?」

「ああ……」


 シルビアは納得した。


「それは捕獲されて、中央(セントラル)送りになりますね」

「でしょ?潜伏する場所として、旧エリアの管制室を再整備しているらしい」

「私達はそのまま、準備を進めていいのですか?」

「うん、そのうち欲しい資材があれば、送ってもらえる算段を取り付けよう」

「待ってください」


 シルビアは手をあげた。


「今、観測ステーションと繋がっている移動装置(ポータル)は、サイラスが定着させた南の森の1基のみです。それでは、心もとないのですが……」

「あ……」

「エトゥール城内か、せめてイーレのいる西の地にもう1基欲しいところです」

「もっともだね。問題は誰が定着させるか、だ」

「ディム・トゥーラに相談してみてください。クトリは戻っても再降下を嫌がるでしょうから、サイラスか、イーレ、私が候補になります」

「また東西南北に飛ばされたらどうするの?」

「次は北じゃないですか?」

「そういう嫌な予想はやめて」

「嫌な予想なんて――残っているのは北ですよ」

「シルビアの世界の番人(おともだち)によく言い聞かせてよ。ぽんぽん飛ばされたら困るって」

「お友達……」


 なぜか、シルビアはポッと(ほほ)を染めた。


「シルビア?」

「いい響きです。地上で『お友達』がこんなにいっぱいできるなんて、嬉しい誤算です」

「もしもし?」

「シルビア様?」

「茶飲み友達を100人作るのが、私の夢です」


 うっとりと夢想する治癒師の独白にカイルは慌てた。


「そこに世界の番人を同列でいれないでくれ、絶対にだ」

シルビア、まさかの(茶飲み)友達100人計画(小学1年生並み)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ