(3)帰還③
お待たせしました。本日分の更新です。
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「了解」
『我々の時代に測定した観測項目をそちらに転送する。再度、測定し最新値に更新したまえ。時間経過による地軸角度の誤差修正は特に重要だ』
「俺の専門は惑星物理学じゃありませんが?」
『そうか、今からよく勉強するように』
ディム・トゥーラの抗議はさらりと流された。
『惑星内部構造、地殻変動、重力分布、火山帯の構造確認と特色、地磁気まで統合解析が必要だ。全て軌道変更にかかわる分野だ』
そのやるべき項目の多さと専門外の分野に、ディム・トゥーラは吐息を漏らした。だが、優先事項なのは確かだった。
『絶滅危惧種の救済にも役立つだろう』
ブルー・ホエール並みの釣り餌が目の前に、ぶら下げられてしまった。獣姿の指導教官は人の動かし方が天才的であり、極悪だった。
ディム・トゥーラは諦めて、端末を起動した。
「……端末が旧式すぎます」
「あとで、切り替えてあげるわよ。ロニオスの人使いの荒さはこんなものじゃないわよ。覚悟しなさい」
「俺の未来は、お先真っ暗ってことですね」
ジェニの言葉は、ディムの懸念の裏付けになった。
このウールヴェの姿をした人物は、己の研究のためなら周囲を過重労働させる研究馬鹿タイプの代表格に違いない。それに優れた指導者の才が加わるから始末が悪かった。
カイルとの交信は、この作業の目処をつけて、個室でゆっくりとしよう。
地上に移動装置が定着している今なら、思念通話が妨害される心配もない。不意打ちの接触でカイルを驚かせるのも悪くない――。
そんな思いを馳せた時、ディム・トゥーラは耐え難い頭痛と強烈な吐き気に襲われた。
同調解除直後のような体調不良に呻き、操作卓に突っ伏した。
「ディム・トゥーラ?!どうしたの?!」
ジェニの言葉と同時に脳内に大声が響いた。
『帰っているなら、帰っているって、どうしていってくれないんだっっっ!!!』
「……………………」
たった今、ディム・トゥーラの密やかな楽しみは、相手に先手を取られ永久的に粉砕されてしまった。
「………………規格外め…………」
「ディム・トゥーラ?大丈夫なの?」
「思念波を浴びただけです。たった今、規格外に俺が探知されてしまいました……」
「あら」
「おや」
『すごいな。ディム・トゥーラ専用の探知機でも彼には自動搭載されているのかね?』
「……嫌な探知機ですね」
「嬉しいくせに」
上司の突っ込みにディム・トゥーラは睨んだ。
「こんな最悪な頭痛は嬉しくありません」
「相変わらず素直じゃない」
「貴方も突っ込んで虐めないの」
妻が夫を嗜めた。
「このツンデレぶりが面白いんだよ。普段とのギャップがね」
エド・ロウがニヤニヤと笑い、ディム・トゥーラをさらにイラつかせた。
『ディム・トゥーラ、作業が進まないだろうから、先に彼の対応をしていい。私にも筒抜けで非常にうるさい』
遮蔽を重ねても聞こえる地上からの思念は確かにうるさかった。
『ちょっと、ディム?!いるよね?!戻ってきたよね?!返事してよっ?!』
ディム・トゥーラは諦めて立ち上がった。
「ちょっと、休憩をもらいます。この馬鹿と話し合ってきます。説教込みで」
『支援追跡者の帰還にテンションが上がっているみたいだ。優しく対応してあげたまえ』
「その対応ができる自信はありませんので期待しないでください」
「ほら、ツンデレだ」
余計な突っ込みを上司はした。
『なるほど、俺は苦労して戻ってきたのに、開口一番に怒鳴られたわけだな?』
『うっ…………』
『普通はもっと別の言葉があると思うが、怒鳴られた、と』
ネチネチとディム・トゥーラは嫌味を盛大に込めながら、言った。
次回予告(初)
ネチネチツンデレ ディム・トゥーラ
VS.
無自覚無双キング カイル・リード




