(43)閑話:献身②
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。
ブックマークありがとうございました。
今週、土曜日、日曜日の更新時間予定は、夕方から夜にしておきます。
(反省反映)(チケット落選危惧の予防策)
ぶれない軸のようなものをもっている。頑固で断固たる信念が、人を魅了しひきつけ、アードゥルのような人間を従わせるのだろうか。
リードと名をつけた時に、どうせ仮名だ、と言った時点で、ウールヴェじゃないことを気づくべきだった、とディムはため息をついた。
カイルのウールヴェは、頑なにトゥーラという名を放棄してくれない。ウールヴェは主人がつけた名に執着する特性があるようだった。
「その地上に対する熱意の出どころを知りたいぐらいだ」
『言ったじゃないか。私達を超える進化の可能性だよ』
「俺にはそんな可能性は感じられない」
『認めたくないだけではないかね?』
ウールヴェは言った。
『下等な存在が我々を超える進化をすることに対しての抵抗があるのではないか?そういう偏見があるのでは?』
「それはあるかもしれない」
あっさりとディム・トゥーラは認めた。
「原始人が俺達を越えると言っているようなものだ」
『だが、その可能性がゼロだと証明できるかね?』
ウールヴェは目をつむったまま、告げる。
『地上は科学で割り切れない不思議で満ちている。それを受け入れるか、受け入れないかで世界の姿は変わるんだ。こうやって、ウールヴェ姿の私と会話することなど、探索に訪れる前の君は想像できたかね?』
「――」
『常識に囚われるな。自分の目で見て判断したまえ。中央の檻の中で過ごす時間が長いほど、思考が凝り固まり、視野が狭くなっている』
「貴方も、イーレのように中央に不信感があるみたいだ」
『あるとも』
「どんなところに?」
ウールヴェは黙り込んでしまい、それ以上追求できなかった。
リードは回復すると、すぐに地上に向かった。
二度目の残留組初代達との対話は、問題なく終了したようだった。今回、ディム・トゥーラは同行を拒まれ、彼自身も邪魔の入らない状態で対話を望む初代達の心理は理解できたので、了承した。
だが、対話の成果は、それこそ予想外の方向に向かった。
「アードゥルがカイルの指導教官だと?」
話をきいてディム・トゥーラは、口をあんぐりあけた。
アードゥルとロニオスの規格外ぶりは実感していたが、その彼がカイルの能力の訓練を受け持つというのだ。
『もちろん君の支援追跡者の地位は、維持だ』
「当たり前だ。アードゥルなんかに譲るものか」
『アードゥルは支援追跡者に向かない。人の心理に鈍いからな』
「あれだけ強大なのに?」
『思考を読み取ることには長けているとも。だが心理解析は下手だ。支援追跡者に向き不向きはそういうところで、判断される。君は得意だろう?』
「今も昔も古狸な上司に恵まれたので自衛本能が働くようになっただけだ」
『昔とは、エド・アシュルのことだと思うが、今は私ではないだろうね?』
「貴方以外の誰がいると?」
ウールヴェは不満気な表情を浮かべると、思念で端末を操り、データ保存領域にアクセスした。
『絶滅動物情報削除』
「待て待て待て!」
ディム・トゥーラは蒼白になって端末を手にとり、極悪なウールヴェからの思念操作を遮蔽することで妨害した。
「これは俺への感謝の表れだったのでは?!」
『気が変わった』
「鬼だっ!鬼畜だっ!極悪非道だっ!」
『ずっと、そう自己申告しているじゃないか』
ディム・トゥーラはため息をついた。この人物に勝てるはずもない。
「こんな悪戯をしていないで、後継者教育を始めてくれ」
リードは面白そうな顔をした。
『覚悟を決めたのかね?』
「引き継ぐ知識は、早めに得た方がいい」
『君の自己犠牲っぷりは、賞賛に値するよ』
「貴方ほど、じゃない」
『では、教育を始めるとしよう。最初に言っておくが、私はスパルタだ』
相方が同じように、スパルタ教育を受ける羽目になったことを、ディム・トゥーラはまだ知らなかった。
が、離れているはずの二人は同じ運命を辿った。




