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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第17章 精霊の献身
603/1015

(28)月虹⑦

お待たせしました。本日分の更新です。

昨日は最新話サブタイトルの話数ズレを「また」やらかしました。最近ボケボケです。

矢沢永吉のチケット抽選全滅の落ち込みを反映させないように鋭意努力中です。(号泣)

ブックマークありがとうございました。

こんな作者ですが、引き続き応援よろしくお願いします。


 アドリーに残っていたファーレンシアはよくやっていてくれた。カイルは伴侶(はんりょ)の行動に深く感謝をした。


 西の地と国境を接しているアドリーは、今回の現場である東国(イストレ)領域の海からかなりの遠方にあったにもかかわらず、突然の嵐で、木造の家屋(かおく)の倒壊などがあったらしい。

 アドリーの領地の被害を確認を指示したファーレンシアは、領主の不在を完璧にカバーしていた。



「ご無事で何よりです」

「ファーレンシアも怪我(けが)はない?」

「はい、おかげさまで」

「全ていい方向に向かっているよ」


 ファーレンシアはカイルの言葉に状況を察し、ほっとしたように、彼を強く抱きしめた。

 二人はしばしお互いを(いたわ)った。



 専属護衛とマリカ以外の事情の知らぬ者は、嵐で足止めを食ったに違いない領主の早い帰還に驚き、喜んだ。

 カイルはファーレンシアにそのまま対応をまかせ、ミナリオとともに執務室に(こも)ると、ミナリオに言った。


「ちょっと上空から被害の様子を見てくるよ。身体に異変が起きたら僕に遮蔽(しゃへい)をかけて」

「はい」


 カイルが長椅子に寝転ぶより早く、赤い精霊鷹がいきなり出現した。

 長椅子の背に止まると、翼を大きく広げて、「さあ、使え」とばかりに自己主張した。

 世界の番人の配慮かもしれない。それは非常にありがたかった。


「ありがとう」


 精霊鷹に礼を言うと、カイルは長椅子に横たわり同調を始めた。


 カイルの意識が乗った赤い鷹を、ミナリオは腕にのせ、窓を開け放ち、空中に放った。

 精霊鷹は強く羽ばたき、夕暮れの迫るアドリーの上空を飛んだ。





 歓声があがる。

 突然の嵐がもたらした被害の片づけに追われていたアドリーの城下民は、白光の輝きに包まれたエトゥールの吉兆(きっちょう)のシンボルが領主の(やかた)の方角から出現したことを目撃した。


「精霊鷹だっ!」

「精霊鷹が飛んでいるぞっ!」


 誰もが作業の手をとめ、空を降り仰いだ。

 王都で幾度も出現したという噂は辺境にも届いていた。

 その吉兆のシンボルがアドリーの上空を優雅に滑空(かっくう)しているのだ。


 赤い鷹は祝福をするかのように、アドリーの城砦(じょうさい)の上を3回旋回した。

 歓声が再びあがる。


 突然の嵐の被害を恨み、不平不満を唱えていた城民の心理は見事なほど書き換えられた。

 あれだけの嵐だったのに、死者もでなかったのだ。

 アドリーの被害はまだ軽いに違いない。精霊の加護があったのだから。

 しかも、これを見越したかのように、新しい領主は商人を誘致し、西の地からの木材などの販路を確保している。エトゥールの姫巫女の先見の恩恵(おんけい)ではないだろうか?

 精霊と新しい領主の恩恵に感謝し、城民は目撃した精霊鷹について語りあいながら、修繕の作業を再開するのだった。





 カイルは夕闇の迫る空を飛んだ。


『えっと……その身体を発光させるのは、必要かな?』


 カイルの突っ込みに精霊鷹は短く鳴いて、いる、と主張した。

 いや、いらないよっ!とカイルは心の中で反論したが、素体として身体を拝借している立場のため、謙虚(けんきょ)に黙った。


 倒木や道の寸断、豪雨による浸水被害を確認しながらカイルは飛んだ。

 行く先々で歓声が上がるのをカイルは感知した。



――目立つ。目立つ。ヤバいほど目立っているっ!!!



 吉兆のシンボルが発光しながら、宵闇(よいやみ)の空を飛んでいる。これ以上、目立つシチュエーションはないのではないだろうか?


『まさか世界の番人に何か命じられていないよね……』


 精霊鷹は今度は何の反応もしなかった。聞こえないふりをしている気配がした。


――ちょっと待てっ!!!


 つべこべ言わず被害を確認しろと、精霊鷹は鳴いた。

 カイルは溜息(ためいき)をついた。

 セオディア・メレ・エトゥールの前に出頭した時の説教ネタが、すごい勢いで加算されているのではないだろうか。


 カイルは諦めて被害調査を続行した。


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