(14)狂飆⑥
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『で、どうするんだ?』
『話し合いは交渉の基本だ』
『……ちっ、ハエみたいに叩き落とさないのか』
『……君、本当にアードゥルに点数が辛いね?』
釣り餌と言われてアードゥルは混乱した。この人はいったい何を言ってるのだろうか。
「なぜ、そんなことを」
『繰り返すが君達の協力が欲しかった。それは昔から変わらない。だが君達は当時、地上救済に耳を貸さなかったじゃないか。だから正攻法の依頼は諦めたんだ』
「――」
当の昔――。
再びアードゥルは唇を噛み締めた。
『もちろん、エルネストだけでなく、君の協力も常時募集中だ。どうだろうか?今からでも協力して――』
「断る」
『……口説き方を激しく間違えている』
『そうかい?おかしいなあ……酒が足りないか?』
『……そうじゃない』
白いウールヴェは拒絶を予想していたかのように、あっさりひいた。
『では仕方ない。私も諦めるつもりはないから、これも保留で次の議題にうつろう。何がいい?』
「……なぜウールヴェの姿なんだ?」
『ウールヴェの特性が必要だったからだ』
「なんだって?」
『まず一つ目の理由として、人の身体と意識ではいろいろ制限がでる。肉体の限界はともかく、精神については、常々私が言っていたように認知の問題が立ち塞がった。無意識に定着した常識が、いささか邪魔だった。この私ですら、だ』
「……邪魔?」
『あれはできない。これは無理だ。危険だ。ありえない。信じられない。そんなはずがない――他にどんな口癖があったかな?ほら、我々が目にすることのできない精霊が存在するか否かで、熱い議論を交わしただろう?君達は存在を否定したが、あれは無意識に未知の存在を否定したからだ』
ウールヴェは吐息をついた。
『科学文明の発展した我々ですら――我々だからこそ、未知の理解を越えた存在を否定した。カイル・リードなど頑固すぎて、手を焼いたよ。「精霊」という存在が理解できず、認めず、逃げ回り、最後は陥落して受け入れた。まったく、地上の人間の方がどれだけ柔軟なことか。我々は基本、頭が硬すぎる』
少しウールヴェは笑ってみせた。
『初代よりも、若い今世の研究員の方がやや柔軟だったな。カイル・リードの医療担当者は、地上の文明の産物として、ウールヴェと精霊をいち早く受け入れた。彼女の行動を模範とすべきだ。ウールヴェは、世界の番人の眷属。御使い。不可思議な生き物。エトゥールの創生神話を作り、流布し、日常に定着させるのも、ちょっとした苦労だった。だが、概ね上手くいったよ。ウールヴェの姿で現れたら、カイル・リードも彼の支援追跡者もあっさりと受け入れてくれた』
『なんだって?!!!』
『あー、君には私の後継者教育の一環として、特別授業を組んであげるから、質疑応答はそこで受付よう』
『後継者教育ってなんだ?!!!』
『君のツンデレぶりは学習済みだ。大災厄のあとに、カイルが地上に残るのに、君が中央に帰還する確率など、ここから蟻一匹撃ち抜く成功率より低いじゃないか』
『――っ!!!』
『ちなみに、絶滅動物情報の講義もそこに含まれる』
『なんて、卑怯な!!!』
『うむ、最高の褒め言葉だ』
『褒めてないっ!!この古狸めっ!!』
『エドと一緒にされたくないから、そこは古狐で頼む。私はうどん派だ』
『〜〜〜〜〜っ!!!!』
『大丈夫、私の極悪非道ぶりはこんなものじゃない。まだまだ私の評判の大暴落のネタはあるから、安心したまえ』
『……言葉の表現手法がおかしい』
突っ込みの思念に疲労感が加わったことをリードは笑った。
『問題はアードゥルに八裂きにされたら、試合終了なことかな』
『そういう不吉なことは言うなっ!!!』
作者は讃岐うどん派です(真顔)




