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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第17章 精霊の献身
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(14)狂飆⑥

いつも読んでくださりありがとうございます。

本日分の更新です。お楽しみください。


明日からの週末連休中は、昼過ぎ〜夕方(←保険)の更新予定です。

ブックマーク、全ダウンロードありがとうございます。

更新の励みになります。感謝!

『で、どうするんだ?』

『話し合いは交渉の基本だ』

『……ちっ、ハエみたいに叩き落とさないのか』

『……君、本当にアードゥルに点数が(から)いね?』





 釣り()と言われてアードゥルは混乱した。この人はいったい何を言ってるのだろうか。


「なぜ、そんなことを」


『繰り返すが君達の協力が欲しかった。それは昔から変わらない。だが君達は当時、地上救済に耳を貸さなかったじゃないか。だから正攻法の依頼は諦めたんだ』


「――」


 当の昔――。

 再びアードゥルは唇を噛み締めた。


『もちろん、エルネストだけでなく、君の協力も常時募集中だ。どうだろうか?今からでも協力して――』


「断る」





『……口説き方を激しく間違えている』

『そうかい?おかしいなあ……酒が足りないか?』

『……そうじゃない』





 白いウールヴェは拒絶(きょぜつ)を予想していたかのように、あっさりひいた。


『では仕方ない。私も諦めるつもりはないから、これも保留で次の議題にうつろう。何がいい?』


「……なぜウールヴェの姿なんだ?」


『ウールヴェの特性が必要だったからだ』


「なんだって?」


『まず一つ目の理由として、人の身体と意識ではいろいろ制限がでる。肉体の限界はともかく、精神については、常々私が言っていたように認知の問題が立ち塞がった。無意識に定着した常識が、いささか邪魔だった。この私ですら、だ』


「……邪魔?」


『あれはできない。これは無理だ。危険だ。ありえない。信じられない。そんなはずがない――他にどんな口癖があったかな?ほら、我々が目にすることのできない精霊が存在するか否かで、熱い議論を交わしただろう?君達は存在を否定したが、あれは無意識に未知の存在を否定したからだ』


 ウールヴェは吐息をついた。


『科学文明の発展した我々ですら――我々だからこそ、未知の理解を越えた存在を否定した。カイル・リードなど頑固(がんこ)すぎて、手を焼いたよ。「精霊」という存在が理解できず、認めず、逃げ回り、最後は陥落(かんらく)して受け入れた。まったく、地上の人間の方がどれだけ柔軟なことか。我々は基本、頭が硬すぎる』


 少しウールヴェは笑ってみせた。


『初代よりも、若い今世の研究員の方がやや柔軟だったな。カイル・リードの医療担当者は、地上の文明の産物として、ウールヴェと精霊をいち早く受け入れた。彼女の行動を模範(もはん)とすべきだ。ウールヴェは、世界の番人の眷属(けんぞく)御使(みつか)い。不可思議な生き物。エトゥールの創生神話を作り、流布(るふ)し、日常に定着させるのも、ちょっとした苦労だった。だが、概ね上手くいったよ。ウールヴェの姿で現れたら、カイル・リードも彼の支援追跡者(バックアップ)もあっさりと受け入れてくれた』




『なんだって?!!!』

『あー、君には私の後継者教育の一環として、特別授業を組んであげるから、質疑応答はそこで受付よう』

『後継者教育ってなんだ?!!!』

『君のツンデレぶりは学習済みだ。大災厄のあとに、カイルが地上に残るのに、君が中央(セントラル)に帰還する確率など、ここから蟻一匹撃ち抜く成功率より低いじゃないか』

『――っ!!!』

『ちなみに、絶滅動物情報(エクスティンクト)の講義もそこに含まれる』

『なんて、卑怯な!!!』

『うむ、最高の褒め言葉だ』

『褒めてないっ!!この古狸(ふるだぬき)めっ!!』

『エドと一緒にされたくないから、そこは古狐(ふるぎつね)で頼む。私はうどん派だ』

『〜〜〜〜〜っ!!!!』

『大丈夫、私の極悪非道(ごくあくひどう)ぶりはこんなものじゃない。まだまだ私の評判の大暴落のネタはあるから、安心したまえ』

『……言葉の表現手法がおかしい』


 突っ込みの思念に疲労感が加わったことをリードは笑った。


『問題はアードゥルに八裂きにされたら、試合終了なことかな』

『そういう不吉なことは言うなっ!!!』

 

作者は讃岐うどん派です(真顔)

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