(2)お茶会②
遅くなりました。本日分の更新です。
お楽しみください。
明日の日曜日も昼頃の更新になります。
(ブックマークありがとうございました!今後も頑張ります)
「アードゥル並みに鈍いとは?」
興味津々にエルネストが聞いてきた。
「メレ・エトゥールが外堀を埋めているのに、気づいていない。いや、気づいているのかな?」
「ほほう。メレ・エトゥールは彼女にご執心か」
「今回、彼女を連れてきたのは、エトゥール側の敵意のない証明か?」
アードゥルも確認してきた。
「いや、単にお茶会をして、新作のお茶菓子が食べたかっただけだよ」
「………………」
「………………」
「これは、世代格差というやつか?それとも、カイルに舐められているのか?」
アードゥルがエルネストにきいた。
「私にきかないでほしい」
「こいつの価値基準がわからない。恒星間天体の落下と、お茶菓子を同列に並べているんだぞ」
「価値基準が理解できないのは、私も同様だ。過去の彼との会話で何度困惑したことか」
「お茶菓子を重視しているのは、僕じゃなくてシルビアだし、別に同列視しているわけじゃない。お茶会は女性同士の親睦の手段だ」
カイルは首をふって、否定した。
「男同士は、酒でも呑み交わすべきか」
エルネストがのんびりと提案する。
「体内チップがアルコールを毒素と判断して分解するのに?」
「注射でチップの働きを抑制するんだ。ちゃんと酔える」
「なんという発想……」
「割と我々の世代では常套手段だよな?」
エルネストはアードゥルに同意を求めた。
アードゥルも頷いた。
「連中は、アルコールの中毒性を証明して見せた」
「誰が上手い酒を作れるか競争になったな」
「私は巻き込まれて、散々だった」
「散々?」
「原料である果実、穀物、芋類を栽培させられたんだ」
とんでもない話にカイルは吹き出した。植物専門家の思わぬ受難だった。
「それで、どうなったの?」
「どうなったも何も、大量の原料調達と発酵管理を、研究課題に仕込まれた」
「うわ……上司は止めなかっんだ?」
「止めるどころか、首謀者だ」
「……やっぱり初代は曲者だらけじゃないか……」
「我々は大人しい方だったよな?」
アードゥルはエルネストに確認した。
「品行方正、お手本と言われる大人しさだった」
エルネストの証言にカイルは疑いの視線を向けた。
「貴方達が?」
「私達が、だよ。本当に真面目だったんだ」
「……過去形だね?」
「おっと、正直すぎた」
「それは、他の初代が桁外れに非常識って、いう意味かなあ?」
「ああ、そう解釈してくれてかまわない。確かに曲者だらけだった。私達以外は」
しれっと、エルネストは自分達を棚上げした。
カイルは、本題に触れることにした。
「本当にリードと対話が成立したら協力してくれるの?」
「そのつもりだ。ただし、拠点を地上人の拠点にすることは、ごめんこうむる」
アードゥルは、はっきりと言った。
「エルネストの言う通り、私は地上の文明が存続する価値があるとは思えない」
「死んだエレン・アストライアーが望んだのに?」
「いきなり火種に爆弾を突っ込むなっ!!!」
カイルが禁断の話題を出したことにエルネストは蒼白になったが、当の本人であるアードゥルは無反応だった。
「私は未だにエレンが地上の存続にこだわったことが、理解できないでいる」
アードゥルは静かに答えた。
「多分、永遠に理解できないだろう。付け加えるならお前達もだ。昔のエレン達のように回避するために無駄な努力をしている。理解できない。この溝は埋まらないだろう」
「じゃあ、溝を埋めるために、一緒に過ごそうよ」
「………………は?」
「協力時にやってもらいたいことをリストアップしてきた」
カイルは衣嚢から高級紙を取り出して、やや唖然としているアードゥルに渡した。
中身を確認したアードゥルは目を向いた。
小さな字でかかれた膨大な数の項目があった。
「なんだ、これは?!」
「え?言ったじゃない。やってもらいたいことリストって」
覗きこんだエルネストも顔色を変えた。
「あ、エルネストの分は、別にあるよ」
「なんだと?!」
カイルは同じく懐から高級紙を取り出して、満面の笑みでエルネストに渡した。




