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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第17章 精霊の献身
577/1015

(2)お茶会②

遅くなりました。本日分の更新です。

お楽しみください。

明日の日曜日も昼頃の更新になります。

(ブックマークありがとうございました!今後も頑張ります)

「アードゥル並みに鈍いとは?」


 興味津々にエルネストが聞いてきた。


「メレ・エトゥールが外堀を埋めているのに、気づいていない。いや、気づいているのかな?」

「ほほう。メレ・エトゥールは彼女にご執心(しゅうしん)か」

「今回、彼女を連れてきたのは、エトゥール側の敵意のない証明か?」


 アードゥルも確認してきた。


「いや、単にお茶会をして、新作のお茶菓子が食べたかっただけだよ」

「………………」

「………………」

「これは、世代(ジェネレーション)格差(ギャップ)というやつか?それとも、カイル(こいつ)()められているのか?」


 アードゥルがエルネストにきいた。


「私にきかないでほしい」

「こいつの価値基準がわからない。恒星間天体の落下と、お茶菓子を同列に並べているんだぞ」

「価値基準が理解できないのは、私も同様だ。過去の彼との会話で何度困惑したことか」

「お茶菓子を重視しているのは、僕じゃなくてシルビアだし、別に同列視しているわけじゃない。お茶会は女性同士の親睦(しんぼく)の手段だ」


 カイルは首をふって、否定した。


「男同士は、酒でも呑み交わすべきか」


 エルネストがのんびりと提案する。


「体内チップがアルコールを毒素と判断して分解するのに?」

「注射でチップの働きを抑制(よくせい)するんだ。ちゃんと酔える」

「なんという発想……」

「割と我々の世代では常套(じょうとう)手段だよな?」


 エルネストはアードゥルに同意を求めた。

 アードゥルも(うなず)いた。


「連中は、アルコールの中毒性を証明して見せた」

「誰が上手い酒を作れるか競争になったな」

「私は巻き込まれて、散々だった」

「散々?」

「原料である果実、穀物、芋類を栽培させられたんだ」


 とんでもない話にカイルは吹き出した。植物専門家の思わぬ受難だった。


「それで、どうなったの?」

「どうなったも何も、大量の原料調達と発酵管理を、研究課題に仕込まれた」

「うわ……上司は止めなかっんだ?」

「止めるどころか、首謀者(しゅぼうしゃ)だ」

「……やっぱり初代は曲者(くせもの)だらけじゃないか……」

「我々は大人しい方だったよな?」


 アードゥルはエルネストに確認した。


「品行方正、お手本と言われる大人しさだった」


 エルネストの証言にカイルは疑いの視線を向けた。


()()()()?」

「私達が、だよ。本当に真面目だったんだ」

「……過去形だね?」

「おっと、正直すぎた」

「それは、他の初代が桁外れに非常識って、いう意味かなあ?」

「ああ、そう解釈してくれてかまわない。確かに曲者(くせもの)だらけだった。私達以外は」


 しれっと、エルネストは自分達を棚上げした。

 カイルは、本題に触れることにした。


「本当にリードと対話が成立したら協力してくれるの?」

「そのつもりだ。ただし、拠点を地上人の拠点にすることは、ごめんこうむる」


 アードゥルは、はっきりと言った。


「エルネストの言う通り、私は地上の文明が存続する価値があるとは思えない」

「死んだエレン・アストライアーが望んだのに?」

「いきなり火種(ひだね)に爆弾を突っ込むなっ!!!」


 カイルが禁断の話題を出したことにエルネストは蒼白(そうはく)になったが、当の本人であるアードゥルは無反応だった。


「私は未だにエレンが地上の存続にこだわったことが、理解できないでいる」


 アードゥルは静かに答えた。


「多分、永遠に理解できないだろう。付け加えるならお前達もだ。昔のエレン達のように回避するために無駄な努力をしている。理解できない。この(みぞ)は埋まらないだろう」

「じゃあ、(みぞ)を埋めるために、一緒に過ごそうよ」

「………………は?」

「協力時にやってもらいたいことをリストアップしてきた」


 カイルは衣嚢(いのう)から高級紙を取り出して、やや唖然としているアードゥルに渡した。

 中身を確認したアードゥルは目を向いた。

 小さな字でかかれた膨大な数の項目があった。


「なんだ、これは?!」

「え?言ったじゃない。やってもらいたいことリストって」


 (のぞ)きこんだエルネストも顔色を変えた。


「あ、エルネストの分は、別にあるよ」

「なんだと?!」


 カイルは同じく(ふところ)から高級紙を取り出して、満面の笑みでエルネストに渡した。


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