(46)再会⑯
本日、都合により更新が遅くなりました。申し訳ありません。
(土曜日、日曜日の更新は昼過ぎ〜14:00代ぐらいかと思います)
では、本日分、お楽しみください。
エルネストとアードゥルの仲は、未だに謎だった。お互い不仲と宣言しつつ、理解し合っているように見えた。
「お前は馬鹿か。理解しているわけないだろう」
カイルの思念を読み取ったアードゥルがすかさず言う。
「で、でも……長いつきあいだし……」
「腐れ縁という言葉を知っているか?悪縁として定義されている」
「………………」
嫌よ嫌よも好きのうちってヤツでは――という突っ込みをカイルはなんとか飲み込んだ。アドリー下に位置する拠点を大崩壊させるわけにはいかない。
だが、再びアードゥルには思念を読み取られたのか、睨まれたので、カイルは慌てて遮蔽を強めた。
なぜ、アードゥルに思念がダダ漏れになるのだろう。
「で、例のウールヴェはなんと?」
「二人に会うことを了承したけど――」
「了承したけど?」
「西の地の占者はウールヴェの安全を保証できなかった」
「私がウールヴェを殺す先見が出たということか」
アードゥルは怒りを見せることなく、その報告を受け止めた。
「ありうることだ」
「そこは否定してよっ!!」
「アードゥルの能力は、普段は完璧にコントロールされているが、不意の感情に対しては、やや弱い」
エルネストは、のんびりと茶を飲みながら解説をした。
「普段は大丈夫なの?」
「大丈夫じゃなければ、私などとっくの昔に八裂きにされている」
「逆だ。エルネストがいつも腹立たしくて、それを抑えるために私の忍耐力と制御力が成長したんだ」
「おお、私が君の制御力を育てたなら感謝される立場だな」
「やめろ」
アードゥルがエルネストに低い声で警告をし、エルネストは肩をすくめて見せた。紳士かと思っていたエルネストが、アードゥルをからかうネタを見逃さないことにカイルは驚いた。
アードゥルとエルネストとの不仲説がにわかに信憑性が帯びてきた。
「私はアードゥルが大好きなんだがね、切ない片思いだ」
カイルの思念を読み、エルネストが笑いながら嘯く。その瞬間、エルネストの飲みかけのお茶が、カップの中で沸騰した。
「!」
「アードゥル、地上の茶葉は湯温が大事だといつもいっているだろう。温度が高すぎる」
次の瞬間には、エルネストのカップは凍結した。
「!」
「こういうように、彼は通常、自在にコントロールしている。そもそもコントロールできない時点で四つ目にそれこそ八裂きされると思わないか?」
「た、確かに」
「西の地の占者が先見をしたということは、例のウールヴェは私を激怒させる可能性があるということか」
「あ、いや、可能性が五分五分だと言われたんだ。予測がつかないと」
アードゥルは軽く目を見張った。
「西の地の占者が?」
「わからない、って答えだった。アードゥルがウールヴェを殺す未来と、無事に話す未来と――があるって」
「ほほう」
自分に関する先見なのに、アードゥルはどこか他人事のような反応だった。
「エトゥールの姫はなんと?」
「何も見えないと」
「ほう」
「で、どうする?選択権はそちらにある」
エルネストはもっともな問いかけを投げてきた。ボールはカイル側にあるというのだ。
「馬鹿正直に言うと、占者は別の先見をしているんだ。この対話を成立させると、貴方達は協力者になってくれると」
「それは少し違う」
アードゥルが即座に否定をした。
「エルネストが協力者になり、私はそれを容認するだけだ」
カイルは首を傾げた。ナーヤの先見にそんなニュアンスがあっただろうか?
「アードゥルは協力してくれないの?」
「私に何を協力しろと言うのだ」
「専門は何?」
「植物」
即答したのは、エルネストだった。
「君が望むウールヴェの飼料植物の高速栽培など、お茶の子さいさいだ」
「!」
カイルは驚いてアードゥルをかえりみた。期待にカイルの目が輝いているのを見て、アードゥルは即座に否定した。
「私は容認だけと言っただろう」
「本当に専門は植物なの?!」
「……植物だ」
「植物の高速栽培が可能なの?!」
「……高速栽培は可能だが――」
「すごいっ!!」
「だから――」
「僕に教えてよっ!!」
「私は協力しないと言ってるだろう!」
「そんなもったいないっ!」
「人の話を聞けっ!」
カイルを焚きつけたエルネストは二人のやりとりに笑いを噛み殺した。アードゥルの反応を明らかに楽しんでいるが、カイルはアードゥルを口説き落とすことに夢中になっていてそれに気づいてなかった。




