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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第16章 精霊の恩恵
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(45)再会⑮

「腹穴を開けられた相手に頼みに行くか。西の民では考えられない選択じゃ」

「アドリーに来た彼等に会いに行けと言ったのはお婆様じゃないか」

「もちろん、そう言ったさ。(かけ)をして、会いにきたのはあっちじゃ。鼻をあかすにはいい機会だからのう」

「そういう目的だったの?!」


 カイルはあっけにとられた。


「彼等は西の民の占者(せんじゃ)を舐めておった。たまには隠している爪を見せねば、な」

「まあ……そうかもしれない。エルネストは確かにお婆様の言葉に驚いていた。アードゥルはリードの安全の保証も西の民の占者(せんじゃ)の先見を提案してきたし」

「先手、先手で物事は有利に進む。お前さんは、盤上遊戯(ばんじょうゆうぎ)が下手じゃのう」


 カイルはドキっとした。

 滅びる文明を好き勝手に弄んだ盤上遊戯(ばんじょうゆうぎ)()し手は、他ならね初代達だ。


「お婆様、それは……」

「どうせ馬鹿正直に、正面から(いど)むつもりだろう」

「うっ……」

「まあ、よい。そういう攻略方法もあるだろう」

「いいの?お婆様」

「お前に腹芸はできない」


 事実を西の占者(せんじゃ)は、鋭い刃物のごとく言った。





 アドリーの書庫の隠し部屋の移動装置(ポータル)に行き、カイルは拠点に飛んだ。

 待っていれば、拠点の稼働(かどう)に気づいたエルネストが来るだろう、と予想していた。


 いつものように居住区の長い廊下を抜け、中央の管理室に向かう。途中の個室(コンパートメント)から端末を拝借し、カイルは物品の在庫を確認した。

 在庫リストに女性の研究員服を発見したカイルは、保管庫に向かった。

 ファーレンシア用の研究員服で、アードゥル達の面会時の防護になるだろう。保険は何重にもあっていいし、カイルはシルビアとファーレンシアの安全の確保を怠るつもりはなかった。


 保管庫で研究員服を探していると、入口付近で気配があった。


「何を探しているんだ?」

「女性用の研究員服とできれば、僕の分も。この間、アードゥルに穴を開けられたんだ。これぐらい許してくれるよね?」


 エルネストの問いかけに、カイルは背中を向けたまま、答えた。


「それは悪かったな」


 カイルは驚いて振り返った。エルネストの横には、アードゥルが立っていた。


「衣料は、一番奥のユニットボックスだ。私達には不用だったからな」

「…………ありがとう」


 カイルの応答は、やや遅れたものになった。

 男女の研究員服を回収すると、カイルは二人がまつ入口に戻った。


「……拠点を全壊させる危険性があるから、来ないんじゃなかったの?」


 アードゥルはその言葉に顔をしかめた。


「お前は、意外とはっきり言うタイプだな?」

「いや……つい……」

「アドリーでの面会で、問題なかったから大丈夫だ」


 さらっと物騒なことを言っている。カイルは冷や汗を感じた。

 アードゥルは中央に向かって、すでに歩き出しており、エルネストはカイルに同情するかのように肩をすくめて見せた。


「ここに来たのは、研究員服の回収だけではないだろう?」


 エルネストが廊下を歩きながら、カイルに助け船をだすかのように、問いかけた。


「う、うん。エルネストに会うつもりで……」

「例のウールヴェと連絡はとれたのか?」

「そう、そのことで」


 中央にあるコントロールルームに到着すると、アードゥルはすでに椅子に腰を下ろしていた。特段、いらついた様子もなく静かだった。

 拠点にアードゥル本人が姿を現すことは、カイルも想像しなかった。ナーヤも特段何も警告しなかった。警告が不要だからか、アードゥルの行動が先見ができない範疇なのか、カイルには何も判断出来なかった。


 緊張しているカイルにお茶を入れてくれたのは、エルネストだった。


「まずは、君に詫びよう。先日といい、今回といいイレギュラー的に彼を連れてきたことを」

「私をイレギュラー扱いするな」

「君はイレギュラーそのものだろう」


 アードゥルはエルネストを(にら)んだ。

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