(41)再会⑪
夏休み自堕落更新も最後になりました。
お待たせしました。本日分の更新になります。
お楽しみください。
明日8/22から週末をのぞき、朝の更新を予定していますが、はっきり言って更新時間は自信がありません!(馬鹿正直)
ディム・トゥーラがカイルと再接触できたのは、リードの不調による断線から結局3時間後となった。
カイルは待ち構えていたらしく、リードがカイルのウールヴェであるトゥーラに打診をしてから、すぐに空間に現れた。
突然の断線の文句をリードに言うかと思ったが、カイルは静かだった。いや静かすぎた。
――様子が変だ
カイルを見て、ディム・トゥーラはすぐに異変を察した。リードも気づいたらしい。
『いつもより、厚めに遮蔽を。エトゥールの件を知った時ほどではないが、何かに動揺している』
リードの助言の念話に従い、ディム・トゥーラは遮蔽をカイルに対して重ねがけをした。
「カイル、何があった?」
ディム・トゥーラの問いかけにも、黙ったままだった。
ディム・トゥーラは遮蔽の確認のため、仮想空間に立ち尽くすカイルの額に触れた。
そのとたん、混沌としたカイルの思念が流れ込んできた。
「?!」
ディム・トゥーラは驚き、自分の遮蔽を強化したが、カイルが混乱の極みにいることを理解した。
自分の能力制御の不安。
ディム・トゥーラへの信頼。
リードへの不信感。
世界の番人への困惑。
周囲の人間への恐怖感。
ファーレンシアに対する愛情。
そして大災厄。
あらゆる感情がドロドロに混じりあっている。
「ひどいな。みごとにぐちゃぐちゃじゃないか」
「……ごめん」
「謝らなくていい。こうなった原因は?俺と別れて3時間程度だと思ったが、時間の流れが違うのか?」
「……一緒ぐらいだよ」
ディム・トゥーラの支援追跡を受けて、カイルは多少の安定感を取り戻した。
「リード」
カイルの名指しにリードの尻尾は、緊張で太くなった。
「さっきは絆がないと言って悪かった」
『い、いや、こちらこそ、断線してすまない。私が原因だ』
「リードが僕と絆があるということを期待して、聞きたいことがある。大災厄と無関係ですまないけど……」
ディム・トゥーラとリードは一瞬だけ視線を交わした。
『カイル自身のことだな?前回、中断した影響の件か?』
カイルは頷いた。
「僕は周辺の人間に影響を与える。その身近な例は、ミナリオやリルだ――そう、考えて間違いない?」
『その認識は正しい』
「強制的に覚醒させてしまうのかな?」
『外的要因もあると思う。例えば専属護衛は、責任感の強さと君に対する好意から、覚醒した。養い子に関しては、養い親に対する情愛と喪失の恐怖からだ』
「喪失の恐怖?」
『養い子は肉親を失った体験がある。それを繰り返したくはない、という無意識の願望がある』
「……なるほど」
『聞きたいことは、それだけかな?』
「まだある」
カイルは、リードを見つめた。
「僕とファーレンシアの子供には、僕の影響はどのくらい発現するのかな」
『――』
「――」
リードは驚いたようにカイルを見た。ディム・トゥーラもその点は盲点であったことにきづいた。エトゥールの姫も規格外の能力者であることは、間違いなかった。
「自分で行き当たった疑問か?」
「いや、シルビアの指摘だよ。僕も言われて、こちらの方が深刻な問題だと気づいた。身近な人間が影響を受けるなら、僕とファーレンシアの子供ほど、強い影響を受ける存在はいない。そうだよね?」
沈黙が流れた。ディム・トゥーラは返答を求められているリードを見た。
『…………言葉遊びではないのだが、イエス、ノーで答えることは難しい。この場合、「影響」は幾つかのパターンが考えられる』
意外なことに、リードはあっさりと語りはじめた。
「……幾つかとは?」
『君と姫の子供は、おそらく強大な能力を持つだろう。遺伝的な観点から見て。先見なのか同調能力なのか、はたまた精神感応なのか、正直わからないが、生まれる子供は間違いなく能力者だ』
「エトゥール王家の血筋のように?初代エトゥール王の遺伝子が末代まで発現しているように?」
『……まあ、そうだ』




