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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第16章 精霊の恩恵
557/1015

(41)再会⑪

夏休み自堕落更新も最後になりました。

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。

明日8/22から週末をのぞき、朝の更新を予定していますが、はっきり言って更新時間は自信がありません!(馬鹿正直)

 ディム・トゥーラがカイルと再接触(コンタクト)できたのは、リードの不調による断線から結局3時間後となった。


 カイルは待ち構えていたらしく、リードがカイルのウールヴェであるトゥーラに打診をしてから、すぐに空間に現れた。

 突然の断線の文句をリードに言うかと思ったが、カイルは静かだった。いや静かすぎた。


――様子が変だ


 カイルを見て、ディム・トゥーラはすぐに異変を察した。リードも気づいたらしい。


『いつもより、厚めに遮蔽(しゃへい)を。エトゥールの件を知った時ほどではないが、何かに動揺している』


 リードの助言の念話に従い、ディム・トゥーラは遮蔽(しゃへい)をカイルに対して重ねがけをした。


「カイル、何があった?」


 ディム・トゥーラの問いかけにも、黙ったままだった。

 ディム・トゥーラは遮蔽(しゃへい)の確認のため、仮想空間に立ち尽くすカイルの(ひたい)に触れた。


 そのとたん、混沌としたカイルの思念が流れ込んできた。


「?!」


 ディム・トゥーラは驚き、自分の遮蔽(しゃへい)を強化したが、カイルが混乱の極みにいることを理解した。


 自分の能力制御の不安。

 ディム・トゥーラへの信頼。

 リードへの不信感。

 世界の番人への困惑。

 周囲の人間への恐怖感。

 ファーレンシアに対する愛情。

 そして大災厄。

 あらゆる感情がドロドロに混じりあっている。


「ひどいな。みごとにぐちゃぐちゃじゃないか」

「……ごめん」

「謝らなくていい。こうなった原因は?俺と別れて3時間程度だと思ったが、時間の流れが違うのか?」

「……一緒ぐらいだよ」


 ディム・トゥーラの支援追跡(バックアップ)を受けて、カイルは多少の安定感を取り戻した。


「リード」


 カイルの名指しにリードの尻尾は、緊張で太くなった。


「さっきは絆がないと言って悪かった」


『い、いや、こちらこそ、断線してすまない。私が原因だ』


「リードが僕と(きずな)があるということを期待して、聞きたいことがある。大災厄と無関係ですまないけど……」


 ディム・トゥーラとリードは一瞬だけ視線を交わした。


『カイル自身のことだな?前回、中断した影響の件か?』


 カイルは頷いた。


「僕は周辺の人間に影響を与える。その身近な例は、ミナリオやリルだ――そう、考えて間違いない?」


『その認識は正しい』


「強制的に覚醒(かくせい)させてしまうのかな?」


『外的要因もあると思う。例えば専属護衛は、責任感の強さと君に対する好意から、覚醒(かくせい)した。養い子に関しては、養い親に対する情愛と喪失の恐怖からだ』


「喪失の恐怖?」


『養い子は肉親を失った体験がある。それを繰り返したくはない、という無意識の願望がある』


「……なるほど」


『聞きたいことは、それだけかな?』


「まだある」


 カイルは、リードを見つめた。


「僕とファーレンシアの子供には、僕の影響はどのくらい発現するのかな」


『――』


「――」


 リードは驚いたようにカイルを見た。ディム・トゥーラもその点は盲点であったことにきづいた。エトゥールの姫も規格外の能力者であることは、間違いなかった。


「自分で行き当たった疑問か?」

「いや、シルビアの指摘だよ。僕も言われて、こちらの方が深刻な問題だと気づいた。身近な人間が影響を受けるなら、僕とファーレンシアの子供ほど、強い影響を受ける存在はいない。そうだよね?」


 沈黙が流れた。ディム・トゥーラは返答を求められているリードを見た。


『…………言葉遊びではないのだが、イエス、ノーで答えることは難しい。この場合、「影響」は幾つかのパターンが考えられる』


 意外なことに、リードはあっさりと語りはじめた。


「……幾つかとは?」


『君と姫の子供は、おそらく強大な能力を持つだろう。遺伝的な観点から見て。先見なのか同調能力なのか、はたまた精神感応なのか、正直わからないが、生まれる子供は間違いなく能力者だ』


「エトゥール王家の血筋のように?初代エトゥール王の遺伝子が末代まで発現しているように?」


『……まあ、そうだ』


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