(35)再会⑤
夏休み自堕落中につき更新時間13:00代(断言)(開き直った!)
引き続きお楽しみください。
『君がウールヴェ達の子守りで発狂しないように、私が立候補しただけだ。どっちがよかったかね?』
「まあ、確かに……リード以外と上手くやれた自信はない」
それが英断であったことを、ディムは認めた。
「それでリードは、僕達の思念を喰ってるの?」
『私は酒の方が好みだ』
「それはリードは食べないという意味かな?一般的な他のウールヴェは食うの?」
カイルの念入りな突っ込みにリードはため息をついた。
『君は本当に誤魔化しがきかないな』
「誤魔化す大人が多すぎて、知恵がついた結果だよ」
カイルの言葉に、なぜかリードのイカ耳度が増した。
「トゥ……僕のウールヴェはどうなの?」
『あの幼な子は、君の思念を喰って成長した典型例だ』
「成長したのは、僕が意識がなかったからだろう?世界の番人に囚われたのは、事故みたいなものじゃないか。あれがなければ、どうなっていた?」
『多少、成長がゆるやかであったろうが、遅かれ、早かれ変わらない』
「僕のウールヴェは、僕のせいで進化したと」
『幼な子自身がそう言ってただろう?なぜ信用してやらない』
カイルは背後の白いウールヴェを振り返った。彼もリード同様にイカ耳になり、落胆していた。
「信用うんぬんなら、僕は信頼している。だが、この話は別だろう」
ウールヴェのトゥーラの耳がピクリと反応した。
――僕 かいるに 信用されてる?
「信用している。お前は僕を裏切らない。だから、そこのリードより遥かに信頼している」
ウールヴェのトゥーラの顔は喜びに輝くと、尻尾が興奮のため高速回転された。
が、反対にリードはその下克上に驚きの表情を浮かべた。
『待ってくれ、私が信用できないと言ってないか?』
「言ってる。僕は貴方と絆があるわけじゃない」
『い、いや、全く、ないわけじゃなくてだね――』
「ない」
カイルの容赦ない一言に、リードは硬直した。
――あ、縮みそう。
「カイル、ストップだ」
場外乱闘を仕切る審判のごとく、ディム・トゥーラはカイルを止めた。
「この空間に酒はないから、リードを回復させることができない。彼を叩きのめすのは、とりあえずそこまでだ」
「叩きのめし足りない」
「だから、落ちつけ。俺との接触が切れる可能性がある」
――あ かいるの方が 縮んだ
「縮んでない」
カイルは無表情で答えた。
――パンパンに 膨らんで いたのに 縮んだ
「それは冷静さを取り戻した、って言うんだ。覚えとけ」
珍しくディム・トゥーラが、ウールヴェの相手をして、教えた。
――覚えた
『カイルが私に対してこんなに不信感を募らせているとは、ショックだ』
リードはまだ衝撃から立ち直れていなかった。ブツブツとつぶやいている。
『どこで計算を間違えたんだろうか』
「なんの計算だ」
ディム・トゥーラが突っ込む。
『私とカイルの信頼関係の構築についてだ』
「構築をしてたのか?」
『してた……つもりだったのに……』
「そもそも計算が必要な信頼関係って、どうなんだ」
深く考えない発言をディム・トゥーラがしたが、次の瞬間、まるで断線したかのように空間が暗転した。
「ちょっと、待った!!切れたぞ?!!」
ディム・トゥーラは驚き、リクライニング・シートから跳ね起きたが、心あたりの犯人の姿は視界に入らなかった。
「リード?」
あたりを見回すと、いつぞやと同じ光景が展開していた。
叡智に満ち溢れていたはずのウールヴェは、屍のようにぐったりと床に横たわっていた。
精神的瀕死に陥ったウールヴェは、栗鼠の一歩手前のサイズまでダウンしていた。
だが、ディム・トゥーラには、何がリードにダメージを与えたのか、理解できなかった。
「リード?」
『すまない……一時間ほど黄昏させてくれ……』
――なんてめんどくさい
ディム・トゥーラは弟子入りを撤回すべきか、本気で悩んだ。




