(33)再会③
更新遅くなりました(土下座)(夏休み自堕落中)
引き続きお楽しみください。
「よくわからない。研究都市から中央に観測ステーションが没収されたんだよね?」
「そう」
「老朽化とは?最新鋭の機器ばかりでは?」
「初代が使っていたエリアは、500年前の古臭いステーションだ。そこの部分をさす」
『初代がすっかり年寄り扱いだな』
リードが少し遠い目をしてつぶやく。
「年寄りじゃないか」
『君はエレン――いや、イーレとジェニ達の前でそれを言う勇気はあるかね』
「………………ない」
『では、表現は日頃から気をつけた方がいい。彼女達の前でボロをだす。そこは婉曲な表現で頼む』
「初代が使っていたエリアは500年前の旧式機能を持つステーションで――これぐらいならいいか?」
『まあ、それぐらいの表現なら』
「そこの破棄が決定された」
「破棄…………」
カイルは、ハッとした。そこには全ての要となるものがあったはずだ。
「恒星間天体の軌道変更用の爆薬はどうなるの?!」
「落ち着け。旧エリアは観測ステーションから分離、現地破壊が予定される」
「でも――」
「その場所がどこだろうとかまわない。すでにジェニ・ロウが予定日と座標をハッキングして書き換えている」
「ハッキング……」
「たまたま、そこに恒星間天体がこようと我々は預かり知らぬことだ」
「ハッキングって、大丈夫なの?中央の監視に引っかからない?」
「もっともな懸念だ」
『だが、ジェニがそれをやっても発覚する可能性は、ほとんど低い』
「なぜ、そう言い切れるの?」
『それは、今の中央の監視プログラムのほとんどを開発したのが、ジェニ・ロウだからだ』
カイルは想像しなかった情報に眩暈を感じた。そんな専門家が味方として参戦するとは、夢のようだった。
『しかも、彼女は現観測ステーションの一部を買い取った』
「一部って……」
「旧エリアや、連絡シャトルを除いた部分だな」
「それ、大部分じゃないの?!」
「あくまでも、一部だ」
言葉の定義と表現がおかしかった。カイルの情報処理は遅れを生じていた。
「だいたい観測ステーションって、買取ができるもの?」
「研究都市や中央が処分に困ったデカブツを民間に押し付けることは、よくあることだ」
『……言い方……』
「別に年齢に言及していない」
『……ジェニ・ロウはまだ、中央の役人に属している』
「研究都市や中央が、民間機関を支援するために、善意的な払い下げを行っている」
『そこまで言うと、嫌味に聞こえる』
「難しいな……」
ディム・トゥーラとリードの言葉遊びをカイルは遮った。
「わけがわからないよ。ジェニ・ロウは中央の役人で、払い下げをする立場なのに、観測ステーションを買取ったの?!」
「そう、単純に見るとそうなる」
「単純じゃない見方があるの?」
『一つは、彼女がそれを500年前から計画していたことかな』
カイルは口をぱくぱくさせた。まったく言葉が出てこなかった。
『地上文明を存続させたい我儘な集団は地上だけかと思っていたが、物好きで我儘な人物が出世して中央の中枢に近い場所に潜んでいた、というところだ』
「なぜ、彼女はそこまで――」
『理由は多数あると言ってる』
「それは?」
『一つ目は、エレン・アストライアーを死なせてしまった負い目があるらしい。親友であった彼女の最後の望みを叶えたいそうだ』
「最後の望み?」
『地上を救いたいと――それがエレン・アストライアーの望みだった』
「――」
『ジェニはそれを叶えるために、あらゆることをすると言ってる』
「二つ目は?」
『現親友であるイーレが地上に滞在しているからだ。原体のように死なせるつもりはないらしい』
「三つ目は?」
『……尻拭いかな……』
「尻拭い?」
カイルはリードの回答に眉を顰めた。
「誰の?所長の?」




