表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第16章 精霊の恩恵
549/1015

(33)再会③

更新遅くなりました(土下座)(夏休み自堕落中)

引き続きお楽しみください。

「よくわからない。研究都市から中央(セントラル)に観測ステーションが没収されたんだよね?」

「そう」

老朽化(ろうきゅうか)とは?最新鋭の機器ばかりでは?」

「初代が使っていたエリアは、500年前の古臭いステーションだ。そこの部分をさす」


『初代がすっかり年寄り扱いだな』


 リードが少し遠い目をしてつぶやく。


「年寄りじゃないか」


『君はエレン――いや、イーレとジェニ達の前でそれを言う勇気はあるかね』


「………………ない」


『では、表現は日頃から気をつけた方がいい。彼女達の前でボロをだす。そこは婉曲(えんきょく)な表現で頼む』


「初代が使っていたエリアは500年前の旧式機能を持つステーションで――これぐらいならいいか?」


『まあ、それぐらいの表現なら』


「そこの破棄(はき)が決定された」

破棄(はき)…………」


 カイルは、ハッとした。そこには全ての(かなめ)となるものがあったはずだ。


「恒星間天体の軌道変更用の爆薬はどうなるの?!」

「落ち着け。旧エリアは観測ステーションから分離、現地破壊が予定される」

「でも――」

「その場所がどこだろうとかまわない。すでにジェニ・ロウが予定日と座標をハッキングして書き換えている」

「ハッキング……」

「たまたま、そこに恒星間天体がこようと我々は預かり知らぬことだ」

「ハッキングって、大丈夫なの?中央(セントラル)の監視に引っかからない?」

「もっともな懸念(けねん)だ」


『だが、ジェニがそれをやっても発覚する可能性は、ほとんど低い』


「なぜ、そう言い切れるの?」


『それは、今の中央(セントラル)の監視プログラムのほとんどを開発したのが、ジェニ・ロウだからだ』

 




 カイルは想像しなかった情報に眩暈(めまい)を感じた。そんな専門家(スペシャリスト)が味方として参戦するとは、夢のようだった。


『しかも、彼女は現観測ステーションの一部を買い取った』


「一部って……」

「旧エリアや、連絡シャトルを除いた部分だな」

「それ、大部分じゃないの?!」

「あくまでも、一部だ」


 言葉の定義と表現がおかしかった。カイルの情報処理は遅れを生じていた。


「だいたい観測ステーションって、買取ができるもの?」

「研究都市や中央(セントラル)が処分に困ったデカブツを民間に押し付けることは、よくあることだ」


『……言い方……』


「別に年齢に言及していない」


『……ジェニ・ロウはまだ、中央(セントラル)の役人に属している』


「研究都市や中央(セントラル)が、民間機関を支援するために、善意的な払い下げを行っている」


『そこまで言うと、嫌味に聞こえる』


「難しいな……」


 ディム・トゥーラとリードの言葉遊びをカイルは(さえぎ)った。


「わけがわからないよ。ジェニ・ロウは中央(セントラル)の役人で、払い下げをする立場なのに、観測ステーションを買取ったの?!」

「そう、単純に見るとそうなる」

「単純じゃない見方があるの?」


『一つは、彼女がそれを500年前から計画していたことかな』


 カイルは口をぱくぱくさせた。まったく言葉が出てこなかった。


『地上文明を存続させたい我儘(わがまま)な集団は地上だけかと思っていたが、物好きで我儘(わがまま)な人物が出世して中央(セントラル)の中枢に近い場所に(ひそ)んでいた、というところだ』


「なぜ、彼女はそこまで――」


『理由は多数あると言ってる』


「それは?」


『一つ目は、エレン・アストライアーを死なせてしまった負い目があるらしい。親友であった彼女の最後の望みを叶えたいそうだ』


「最後の望み?」


『地上を救いたいと――それがエレン・アストライアーの望みだった』


「――」


『ジェニはそれを叶えるために、あらゆることをすると言ってる』


「二つ目は?」


『現親友であるイーレが地上に滞在しているからだ。原体(オリジナル)のように死なせるつもりはないらしい』


「三つ目は?」


『……尻拭(しりぬぐ)いかな……』


尻拭(しりぬぐ)い?」


 カイルはリードの回答に眉を(ひそ)めた。


「誰の?所長の?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ