(27)手土産③
本日の更新が予定より遅くなり、すみません!(食事に拉致られました(笑))
引き続きお楽しみください。
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「俺はあいつのことを理解しようとしているのに、あいつは俺のことを知る努力をしていない」
『……』
「どうして理解もしてないのに、俺がカイルを拒否すると決めつけるんだ。あいつは支援追跡者を舐めてるのか?馬鹿にしているのか?ぐだぐだ悩む前に、とっとと俺のところにくれば、すぐに解決すると言うのに――」
『……』
「だいたい、なんで、あんな獣にカイルの相方ヅラされなくちゃいけないんだ?!」
『憤りの原点はそこか……』
リードはなんとも言えない表情を浮かべた。
『ディム・トゥーラ、何度もいうが、あれはまだ幼く、成長をしている段階だ。君の行為は、老人が5歳の子供に対して文句を言っているようなものだ』
「5歳の子供が年上の老齢者に自分が上だと非常に無礼なことを言ってるんだな。躾もしくは教育の責任者は誰だ?」
『……カイルと私だな』
「それで?」
『それでとは?』
「俺はあの獣がリード並みに知性と教養と礼節と品格を持たない限りは、認めないぞ」
『これまた無茶を言う……。褒めていただいて光栄だが、それは永遠に認めないと同義語だ』
「なぜ?それは、他のウールヴェも同じなのか?」
『だから、私を基準にするのは――』
言いかけてリードは黙りこんだ。
『ディム・トゥーラ、君は狡い』
「何が?」
『そういうところが、だ』
リードは軽く睨んだ。
『カイルに対しての憤りを口実に私から情報を引き出そうとしている』
「わからないものを探究するのは、研究者としての務めだ」
ディム・トゥーラはにやりと笑った。
『それは理解しよう。だが、世界の番人に筒抜けになる』
「いや、それは嘘だ。リード、あんたはあの馬鹿ウールヴェとは違う」
『そう思った根拠は?』
「自分で判断をしているからだ。アードゥル達からの面会要請も、世界の番人の助言を必要としなかった。誰かに隷属していない。世界の番人と対等な存在だ」
『………………君は非常に頭がいい』
「どうも。リードが知っていることを教えてくれ」
『単刀直入にきたな。それは、ものによる。何が知りたいんだ?』
「世界の番人は、エネルギーを自由自在にあやつる。カイルを無理矢理、観測ステーションから転移させたり、シルビアの移動装置を破壊したり。クトリはそれを『雷ではない純粋なエネルギー』と評していた」
『ほう、それで』
「そのエネルギーには限界がある。そうだよな?」
『なぜ、そう考える?』
「恒星間天体を阻止するのに俺達に依存しているからだ。多分、あの巨大な天体の落下を阻止する莫大なエネルギーは所持していない」
『まあ、順当な推察だ』
「そのエネルギーの源は、人々の思念エネルギーではないのか?」
『……………………』
「精神文明の低いこの世界では、人間はまだ思念を自由自在に操れない。そのエネルギーはどこに行くか?単に放出されるだけだ。思念喰いとカイルはウールヴェを判断している。ウールヴェを使役できるのが、加護持ち――覚醒した能力者であることから」
『君などは地上に行けば、ウールヴェにモテモテだ』
「そうなのか?」
『保証する』
「だが断る」
『残念だ』
リードは本当に残念そうな顔をした。
「話をそらさないでくれ。ウールヴェの吸収した思念エネルギーは、親元――世界の番人に流れる。どうだ?」
『……………………』
「だから世界の番人は文明の維持に躍起になっている。寄生している人間達が滅亡したら、己も滅びるからだ」
『査読返却』
「……は?」
『最後の部分がいただけない。君の悪い癖がでている』
「俺の悪い癖?」
『偏見に満ちている。だいたいその論説には欠点がある。寄生するなら生き延びるために、初代や現代のメレ・アイフェスに寄生して宇宙に脱出すればいいんだ』
「あ………………」
『君達の方が思念が強くて、美味い。極上の餌だ。そうなるだろう?だが、そうではない』
リードの指摘にディム・トゥーラは黙り込んだ。
『世界の番人に対する偏見が君の目を曇らせている。偏見をなくし、視点を変えて考察することだ。案外、物事は単純だ』
「単純?」




