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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第14章 精霊の祝福

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(4)駆け引き④

「本当にクトリ様にこの装置を作っていただき、よかったと思います」


 (かたわら)に立つミナリオが深刻な顔をしている。それから彼はカイルに対して深々と頭を下げて詫びた。


「この不手際(ふてぎわ)、申し訳ありません」

不手際(ふてぎわ)?」

「何度目でしょう。またカイル様を危険に(さら)してしまいました」


 カイルは意味がわからずキョトンとした。


「カイル様、貴方が言うべきは、貴方を守ることが出来なかった専属護衛達に対する叱責(しっせき)と、命令です」


 アッシュも無表情で語る。


「はい?」


 カイルは思わず聞き直した。


叱責(しっせき)なんか必要ないよ」

「目の前で拉致(らち)されたんですよ?」

「あれは相手が悪いよ。ああいう能力をもった地上人はいないでしょ?」

「そういう問題ではありません。身をもって()びるレベルです」

「身をもって?」

切腹(せっぷく)です」


 カイルはその特異な単語の言語検索に数秒を要した。検索結果に彼は慌てた。


「切腹?!」

「はい」

「それ自殺手法の一種だよね?!」

「腹切り、割腹、斬服、責任をとる行為で、東国(イストレ)の風習です。お命じください」

「いやいやいやいや」


 カイルは青ざめた。


「意味、わかんない。なんで、アッシュが腹を切り裂くのさ?!」

「専属護衛の(せき)はそれほど重いからです」

「――」 

「護衛の任を失敗し、誘拐され、婚約の儀の前に怪我までおわせてしまいました。万死(ばんし)に値します」

「待って待って待って」


 カイルはアッシュを押しとどめた。


「と、とりあえず、城に戻ろう。その話については、ゆっくり時間をかけて語り合おう」

「そのような時間は惜しいと思います」

「ミナリオもなんか言って!」


 カイルは救いを求めてミナリオを振り返ったが、結果、見事なまでに梯子(はしご)をはずされた。


「私もアッシュと気持ちは同じです」

「ミナリオっ!」

「我々が専属護衛失格なのは明らかです」

「失格なんかじゃないよ!あれは相手が悪かったっ!君達はちゃんと僕を見つけてくれたじゃないか?!」

「クトリ様の功であり、我々のものではありません」

「相手に殺意はなかったっ!その証拠にトゥーラは飛んでこなかったっ!!」

「……そういえば、そうですね」

「だろ?!」

「殺意はなくても、害意はありました。(ほほ)を傷つけられています」


 アッシュが静かに指摘する。


「侍女達は許さないでしょう」


 アッシュの言葉にカイルは事態の深刻さを悟り、がたがた震え始めた。


「……僕は四つ目を従えているアードゥルより侍女達の方が怖い」

「同感です」


 アッシュは真顔で応えた。






 三人はこっそりと城に戻り、聖堂に直行した。


「本当に治せるのですか?」

「治せなかったら、我々が侍女達に八つ裂きにされるだけだろう」

「八つ裂きで済めば、いいですが」

「……ねぇ?君達が話題にしているのは、侍女達の話題だよね?」

「間違いなく」

「それ以外、何があると言うのです?」

「魔獣の話題かと思ったよ」

「四つ目なら、まだ倒せます」

「……怖くなるから、それ以上言うのはやめて」


 カイルはこの間と同じ場所を選び、冷たい石床に腰を下ろした。それから、どこかにいるはずのウールヴェに呼びかけた。


「トゥーラ、来てくれ」


――なあに?


 主人の招請(しょうせい)に白いウールヴェはすぐに現れた。

 床に胡座を組んでいるカイルに首を傾げる。


――あ 怪我 してるね?


「それなんだけどね、この怪我をこっそり治したいんだ」


――自業自得って 言ってる よ


「誰が?」


――番人


「やっぱり見てたのか」


 カイルは溜息をついた。


「僕が癒すとコントロールがきかなくて、おおごとになりそうなんだ」


――そうだね


「そこは否定して欲しかった……。トゥーラ、協力してくれない?かすり傷だけど、3日後は婚約の儀だ。この傷をこっそり消したいんだけど」


――シルビア に 言えば?


「怒られる。侍女達にばれる。ファーレンシアにばれる」

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