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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第14章 精霊の祝福

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(3)駆け引き③

「でもさ、あれだけの四ツ目を使役できる精神感応者(テレパシスト)で、他者まで一緒に瞬間移動(テレポート)できる念動力を持ってれば、立派な規格外だよ」


 カイルの言葉に、アードゥルが目を細める。


「思い出した。そういえばお前は西の地で、どうやって野生のウールヴェを使役(しえき)した?野生化したウールヴェが使役(しえき)できないのは、さんざん実験済みだ」


 カイルは溜息をつきたくなった。

 同調能力を一言で説明するのは、なかなか難しい。


「あー、なんというか――使役(しえき)したんじゃなくて、野生ウールヴェに意識をあわせただけだよ」

「なんだと?」

「僕はウールヴェになって暴れたんだ」

()()()?」

「……僕の持つ特殊な能力だと思ってくれていいよ」

「――」


 アードゥルはカイルを凝視(ぎょうし)している。カイルは説明を端折(はしょ)ることにした。馬鹿正直に話す必要はない。


「他に質問は?」

「地上が滅亡するまでエトゥールで過ごすつもりか?」

「滅亡しない」

「するぞ」

「しない。恒星間天体の軌道を変えるんだ」

「軌道を変える?」

「観測ステーションを恒星間天体にぶつける」

「………………は?」


 さすがにこの話は、アードゥルの意表をつけたようだった。


「お前は何を言ってる?」

「これも事実だ。僕の優秀な支援追跡者(バックアップ)がそのために奔走(ほんそう)してくれている。質量を削って、地軸のぶれない位置に落下させる」


 カイルは静かに語った。


「それは大陸の中央にあるエトゥールという場所だけどね」


 二人の間に長い沈黙が続いた。


「……お前は鬼畜か?」

東国(イストレ)で大量虐殺をした貴方に言われたくない」

「本当に何を考えているんだ?その状況で婚約式まであげるだと?」

「量子コンピュータにかけて出した結論だ。中央(セントラル)は絶対に動かない。自力でなんとかするしかないじゃないかっ!今のところ、この惑星を救う最良の策がこれなんだ。だから僕は協力者が欲しい。貴方とアドリー辺境伯の助けが。僕が対話を望んだ理由はそれだ」


 カイルは感情を爆発させないように淡々と語った。それでも滅ぶエトゥールを思えば、声が震える。


「泣くな。みっともない」

「泣いてない。でも、大声で泣きたい気分だ。アドリー辺境伯にも伝えてよ。帰還の意思はないというけど、本当にこれが最後の機会になる。大災厄後はどんなに望んでも、帰還できない。観測ステーションがないんだから」



――その時、上空から影が降ってきた。




 それが、付近の屋根から路地裏(ろじうら)に飛び降りてきたアッシュだと、気づくのにカイルは数秒かかった。

 彼は二本の短剣を抜き放つと一気に、四つ目使いに襲いかかった。

 だが彼の行動は、見えない壁に弾かれた。


 アードゥルは防護壁(シールド)を張っていた。


 カイルはその場に現れたミナリオに腕をつかまれ、その背後に(かば)われた。

 アードゥルは笑いを漏らした。


「護衛が合流するまでの時間稼ぎか?凝った話で感心したよ」

「違うっ!!」

「まあ、邪魔が入ったから、話はここまでだな」

「アードゥル!!」


 アードゥルの姿はかき消え、代わりに一頭の四つ目が路地(ろじ)に現れた。


「四つ目っ!!」


 カイルが息を飲んだが、アッシュは既に行動していた。愛用の飛鋲(ひびょう)を四つ目の両目めがけて放ち、命中させていた。

 剣を抜き放ち正面から、視覚を失った四つ目の頭骨を叩き切る。


 

 一瞬で鮮やかに決着がついた。


 ふぅ、っとアッシュは、息をつき、剣の血糊(ちのり)を振り払った。


「……アッシュ、腕をあげてない?」

「……カイル様、言うべき言葉が違います」

「……えっと……四つ目を退治してくれて、ありがとう」

「それも違います」

「……よく、見つけてくれたね?」

「それも違います。が、クトリ様が作った腕輪のおかげです」


 アッシュは、カイルの傍らに立つミナリオを(あご)で指し示した。


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