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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第14章 精霊の祝福

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(1)駆け引き①

いつも読んでくださりありがとうございます。

新章開始します。お楽しみください。


 カイルは驚いていた。西の地で、そして東国(イストレ)で友好的とは言い難い彼と会うのは三度目だった。

 エトゥールで彼の手配書が出回っているというのに、こんなに堂々と日中に闊歩(かっぽ)しているとは、予想外もいいところだった。


 しかも瞬間移動(テレポーテーション)駆使(くし)してまで、カイルに接触してきたのだ。


「……貴方は、いったい何をしているの?」

「開口一番の台詞がそれか?」


 アードゥルがそっけなく、言った。


「他に何を言えと?」

「もう少し、この状況に危機感を持ったらどうだ?」


カイルは少し首を傾げた。


「危機感を持てと言うけど、貴方が本気になったら、僕なんかとっくの昔に吹き飛んでいるでしょう?もしくはあの場で四つ目の餌になっている」


 カイルの言葉にアードゥルはわずかに片眉をあげた。


「そういう手段を持っているにも関わらず、貴方がこうして僕を連れ出したのなら、害することが目的じゃないでしょ?」

「……」

「だから、僕の胸は初恋の人に再会したかのように高鳴っている」

「……………………いい根性をしているな」

「ちゃかさないと、緊張で倒れそうなんだ」


 カイルは視線をそらしたが、本心でもあった。


「おまえ、エルネスト並みのふざけた性格だぞ?」

「アドリー辺境伯には及ばない」

「なんだと?」


 カイルは降りたたんだ紙片を長衣の衣嚢(いのう)から取り出し、黙って差し出した。


「?」


 (いぶか)しんで、紙片を開けて読んだアードゥルは、声をあげて笑った。

 意外にも笑うと、男は表情の険しさが消え魅力的であり、カイルは驚いた。彼は笑いを噛み殺しながら、紙片を返してきた。


「エルネストに、既にやり込められた、ってか?」

「僕のプライドはズタボロだ」

「なんで、これを持ち歩いているんだ?」

(おのれ)(いまし)めるために」

「生意気な若者を正すのは年長者の務めだ」

「腹を刺すような指導はいらない」

「合間に勝手に飛び込んできたのは、詰めの甘い大馬鹿者じゃないか」

「――」


 だめだ。初代達には勝てない。

 能力でも、頭の回転でも、相手を精神的に叩きのめす根性の悪さにも――。


「私は昔から根性が悪いんだ」


――筒抜けだった。


 カイルは慌てて遮蔽(しゃへい)を強化した。ディム・トゥーラ並みの精神感応の持主だ。


「で、用件は?僕も貴方に会いたかったから、渡りに舟だけど」


アードゥルは腕を組んで、カイルを軽く(にら)んだ。


「このふざけたイベントは何だ?」

「イベント?」

「エトゥールの妹姫とメレ・アイフェスの婚約の儀だ」

「祝福にかけつけてくれるとは、感激だ」

「祝福じゃないという証明にここらへんに、四つ目達を離そうか?」

「ごめんなさい」


 カイルは即座に謝りつつも、反論した。


「別にふざけた儀式じゃない」

「なんだと?」

「彼女と添い遂げる覚悟だよ」

「――」

「初代だって、精霊の姫巫女と添い遂げているじゃないか」

「あの馬鹿と一緒にするな」

「……馬鹿なの?」

「馬鹿も馬鹿の大馬鹿だ。彼は、あれで特権官僚資格(キャリア)を捨てたんだぞ?」

「僕もアドリー辺境伯に大馬鹿認定されたんだから、行動が似るのは当たり前じゃないか」

「……………………」


 アードゥルはカイルの言葉にものすごく顔をしかめた。


「お前と話すと調子が狂う。本当にエルネストみたいな奴だな」

「それ、()めてるの?(けな)してるの?」

(けな)しているに決まっているだろう」

「なんだ、残念」

「なんだと?」

「アドリー辺境伯は貴方の相方だから、てっきり()めているのかと――」


 周囲の圧があがったようだった。


「ごめんなさい」


 ちっ、とアードゥルは舌打ちをする。

 多分、四つ目を召喚する気だったのだろう。カイルの謝罪に圧は消えた。

 カイルは、ほっとした。この取り扱い注意度は、ウールヴェを目の前にしたディム・トゥーラ並みに高かった。


「そんな恐喝じみた対話手法はやめてよ」

「そうさせているのは、若造、お前だ」

「そんなに、僕は失言しているかなあ?」

「無自覚か」


 アードゥルは(にら)んでいる。


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