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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第13章 精霊の選択

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(38)閑話:言葉

(30)癒しの風⑨のシルビアの課題の顛末


カイルの天然無自覚口説きスキルLv99に苦労する恋愛スキル初心者のファーレンシア

乙女ゲームで推しキャラボイス付きだった場合を想像していただけたら、ファーレンシアの心情が理解していただけるかと(おい)

「カイル様」

「ファーレンシア、聖堂はその――冷えるからね?」

「カイル様がおっしゃってくだされば、すぐに一緒に戻ります」


 カイルの目が泳ぐ。


「シルビア様の課題です」


 ファーレンシアは聖堂の冷たい床に、敷かれた敷布の上に腰をおろし、正面からカイルを見つめている。

 その瞳は期待で輝いていた。


「何を言ったのか、忘れてしまったよ」

「カイル様が忘れるわけがありませんし、必要なら私の記憶を読んでいただいて結構ですよ」


 ファーレンシアはやんわりと――だが、確実に――カイルの逃げ道を遮断(しゃだん)する。


――なんでこうなるんだ


 自分が無意識に口走った言葉を再現しろというのは、羞恥(しゅうち)のため、難易度が高すぎた。


「私はカイル様を困らせていますか?」


 カイルの反応に、強気で責めていたファーレンシアが、やや(しお)れる。

 困らせているのは確かだが、そんなにしょんぼりされてしまうとさらに困ってしまう。ある意味、無限ループだった。


 カイルは咳払いをした。


「ファーレンシア」

「はい」

「僕達は恋人同士で、婚約者で、もうすぐお披露目(ひろめ)までするよね?」

「はい」

「どうして、今更なことを求めるの?」

殿方(とのがた)は釣った魚に(えさ)をやらなくなるから、度々(たびたび)求めた方がいい、と助言をいただきました」


――誰だっ!そんな変な助言をしたのはっっっ?!


「……誰が言ったの?」

「イーレ様です」


 ガクッとカイルは項垂(うなだ)れた。相手の年の(こう)から――そう指摘すれば半殺しの目にあうが――、その助言を否定する根拠を見出すことは、困難の極み、とも言えた。


「ファーレンシアは釣った魚じゃないでしょ?」

「そうなんですか?」

「僕にとっては、大切な人だよ」

「――」


 ファーレンシアは真っ赤になった。イーレの助言はまだあった。「カイルは無意識に強烈な言葉を投げてくる天然のたらしだから気をつけろ」だった。


 どう、気をつけたらいいんですか、イーレ様っ!


 直撃を受けたファーレンシアはカイルに筒抜けにならないように、遮蔽(しゃへい)を意識しながら、心の中で叫んだ。

 顔の熱さを自覚し、両手に顔をうずめた。


「ファーレンシア?」

「……はい」

「大丈夫?」

「……だと思います」


 ファーレンシアは小声で答えるのはやっとだった。

 いきなりファーレンシアはカイルに抱き上げられた。


「カイル様?!」

「ごめん。長々とトゥーラの癒しにつき合わせたからだね?」

「……ち、違います……」


 もっと、はっきり否定するべきなのだろうが、この抱き上げられた状態も捨てがたい。なんていう究極の葛藤(かっとう)だろう。

 ますますファーレンシアは己自身の貪欲(どんよく)な思考に顔を赤らめた。


「ファーレンシア」

「……はい」

「君が望むなら何度でも言ってあげるよ。僕がファーレンシアを好きなのは、僕の意思だ。世界の番人が干渉(かんしょう)する余地はない。今後も干渉(かんしょう)させるつもりはない」


 望む言葉を得られたが、何か違う。状況が想定していたものとかけ離れていた。ファーレンシアは困惑した。


「あ、あの……カイル様?」

「熱があるみたいだ。今、身体を壊すのはまずいだろう?」


 その熱は、カイル様のせいですっっ!

 

 そう言うことを諦めて、ファーレンシアはおとなしく抱き上げられたまま、聖堂をあとにした。






「微熱がありますね」


 カイルから頼まれてファーレンシアを診療したシルビアが告げる。カイルは診療の邪魔にならぬように、とすでに立ち去っていた。


「え?」

「微熱があります」

「……カイル様のせいではなく?」

「カイルのせいかわかりませんが、微熱があります。私のせいかもしれませんね。カイルに余計な課題を出したため、聖堂で身体を冷やしたせいかもしれません。申し訳ありませんでした」

「いえ、シルビア様の責ではありません」

「カイルもよく微熱に気づきましたね。ファーレンシア様をよく見ています」


 シルビアが感心したようにつぶやく。その言葉にファーレンシアはまたもや頬を染めた。

 けっして微熱のせいではない。


「で、首尾は?」

「カイル様が、不器用で、優しくて、天然で、誠実で、無自覚な口説き上手なことをさらに実感いたしました」

「……課題はこなしました?」

「……私の微熱のために、あっさりと」


 シルビアはため息をついた。


「……ちょっと違いますね」

「……ちょっと違うかもしれませんが」


 ファーレンシアは微笑んだ。


「私にとっては、最高の言葉でした。ほかにもいただけました」

「ファーレンシア様がよろしければ、いいですけど……」

「はい」


 はっと、ファーレンシアは思い出したように言った。


「シルビア様の助言が欲しいのですが」

「なんでしょう?」

「イーレ様がおっしゃった『カイル様が投げてくる無意識に強烈な言葉』に対する対処方法を教えてください」

「ありません。耐えてください」



 即答だった。

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