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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第13章 精霊の選択

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(28)癒しの風⑦

「シルビアの言うことは、もっともだ。自重(じちょう)するよ」

「ディム・トゥーラの治療が必要だったことは、理解しています。貴方がディムの怪我(けが)に責任を感じていることも」

「……うん」

「今後、この治癒(ちゆ)(わざ)は周囲に目撃されないように気をつけてください」

「うん」


 トゥーラはカイルの(ひざ)の上から、ようやく立ち上がった。


――しるびあ 世界の番人 に 会いたいの?


「え?」


――そんな こと 思った でしょ?


「え、ええ、まあ、文句の一つでも言ってみたいと、常々思っていましたが」


――会って みる?


「はい?」


――世界の番人 に


 シルビアは目の前のウールヴェを凝視(ぎょうし)した。カイルもファーレンシアも同様だった。


「トゥーラ、何言ってるんだ?」

「会いたいと思えば、会えると言うことですか?」


――うん


「会ってみたいです」

「シルビア!」

「今後のことを含めて、話し合いをしたいと思います」

「シルビアっ!」


――わかった


 トゥーラの雰囲気ががらりと変わった。

 そばにいたカイルは、仰反(のけぞ)り、慌てて距離をとった。そこにいるのは愛らしいウールヴェとはほど遠い存在だった。


――――話を聞こうか?治癒師(ちゆし)


「お初にお目にかかります。シルビア・ラリムと申します」


――――何を話したいと?


「いくつかの質問の答えをいただきたいと思います」


――――よかろう、誓約(せいやく)にかかわらぬ範囲なら


「なぜ、カイルを衛星軌道から強制転移したのですか?」


――――彼が最初に地上にきたからだ


「精霊鷹に精神跳躍(ダイブ)した件ですか?」


――――そうだ。あとは彼が望んだ


「望んだ?」


――――もう一度、地上に降りたい、と


「えええええ?!」


 驚愕の叫びをあげたのは、本人だった。


きっかけ(トリガー)は、それだったの?!!!」

「……カイル?」

「は、はい」

「世界の番人が指摘するように、望んだのですか?」

「えっと……」

「望んだのですか?」

「……法規違反をして中央(セントラル)に強制送還だったから、もう一度降りたかったと思ったのは事実……です……」


 シルビアは両手で顔を(おお)った。これみよがしな盛大なため息が彼女の口から吐かれた。


「カイルが望んだ瞬間、転移ですか?」


――――正しくは違う。彼の位置が把握(はあく)できたからだ。


「意味がわかりません」


――――地上にきたあと、この者がしばらく認知(にんち)できなかった。


 シルビアは、はっと息をのんだ。


「……特別遮蔽室(しゃへいしつ)……」

「……あ……」

「なるほど、遮蔽(しゃへい)されていたから手を出せなかったのですね」


――――むろん、理由は他にもある


「他?」


――――地上では問題を解決できる者を望んでいた


 ファーレンシアが息をのむ番だった。


「つまり、貴方は望んだ者の望みを叶えただけ、と?」


――――そうだ


「それに巻き込まれた私やディム・トゥーラは?」


――――恨むなら初代を恨めばよい。壮大なきっかけ(トリガー)を引いたのは彼等だ


「ああ、尻拭(しりぬぐ)いって、やつですか?」


――――そうとも言う。だが、お前とあの壮絶(そうぜつ)に口の悪い男を怪我させたのは、こちらの不手際(ふてぎわ)だ。それに関しては、詫びよう。


壮絶(そうぜつ)に口の悪い男?」


――――ディム・トゥーラ


 不覚にもカイルもシルビアも吹き出しかけた。世界の番人にお墨付きを食らう口の悪さとは――。


「……カイル、ディムは何をやらかしたんですか?」

「……うん、まあ、いろいろと」


――――今回の治癒(ちゆ)はその詫びだ。癒しについての、見解はお前が正しい。聡明(そうめい)だな


「お褒めにあずかり、光栄です」

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