表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第13章 精霊の選択

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

402/1015

(25)癒しの風④

「天上のメレ・アイフェスも、地上のメレ・アイフェスもどちらが欠けては、世界は救えぬ」


 ナーヤはクコ茶を飲む。


「その片割れが、遥かな空の上で、エトゥールのせいで命を落としかけたんじゃ。地上など、どうでもいいと思われても致し方なしじゃなあ」

「――」

叡智(えいち)の使いがそばにいなければ、即死だったろう」


 イーレはぞっとした。

 もし、ディム・トゥーラが死んでいたら、カイルはどうなっていただろう。


「ディムは――天上のメレ・アイフェスは、もう地上に関わりたくないのかしら」


 イーレの質問にナーヤは大笑いした。


「ナーヤ婆?」


 ハーレイはナーヤの反応に眉をひそめる。


「何がそんなにおかしい?」

「いやいや、面白いのう。誰もわかっておらぬ。あれは対だぞ?地上と天上、光と影、表と裏、どちらが欠けても存在せぬ。いわば一心同体、魂の双子みたいなものじゃろうが」

「……それはディム・トゥーラとカイルのこと?」

「それぐらいで揺らぐ(きずな)なら、とっくの昔に切れておるわい」

「――」


 イーレは困惑した。


「ナーヤ婆、それではまるでカイルとディム・トゥーラは出会うことがきまっていたみたいじゃない」

「決まっていたさ。お前が、ハーレイと出会ったように、全ての出会いは必然だ。世の中の仕組みがそうなっている」

「いえ、ナーヤ婆、私がいいたいのはそういう概念的なものではなく――」

「そういえば、若長が言っていたな。お前たちには、(たましい)とか生まれ変わりという概念がないと」

「え、ええ」


 イーレは認めた。


「ついでに精霊とか世界の番人が理解しがたいわ」

「なぜ理解しがたいのだ?」


 ナーヤの問いかけに、イーレは考え込んだ。


「そうね、例えるなら、この茶碗は目の前にあるでしょ?触れることもできるし、視認もできる。これが茶碗という知識がある。存在が確認できるし、理解できるから認知しているのよ。世界の番人達はそうじゃない。私達は彼等を見ることは、できない」

「見ることはできなくても、存在していることは否定せぬだろう?」

「ええ、存在していると()()。まだ確信まで至らないわ。だって理解できないのだもの。最初は肉体を持たない精神生命体かと思ったわ。でも、ちょっと違う。彼等は地上のあらゆるものに干渉できる存在ではなくって?」

「そうだ。だからこそ、干渉はしない」

「……カイルが得体が知れないと言った意味が、よくわかるわ」

「おぬしの世界も、地上に干渉しないではないか。それと何が違う?」


 ナーヤの指摘にイーレは(きょ)()かれた。


「それは……私達の世界には、法があって……」

「世界には世界の(ことわり)がある。それは法ではないか?」

「……そう……ね」

「それを守るように促すものを『番人』『精霊』と呼んでいる。ただそれだけじゃ」

「きっと、そこだと思うわ。私達が得体がしれないと思うところは。『精霊』――『世界の番人』に世界の(ことわり)を教えたものが、さらに存在するのではなくって?」





 腰に手をあてて、中央(セントラル)の女性管理官は二人――正しくは一人と一匹――をにらんだ。


「これ以上、私を困らせないでちょうだい。ひどい意趣返(いしゅがえ)しだわ」

「……えっと……癒しをばらまく、とは?」

「我々の部屋まで、癒しが及んでいる」


 エド・ロウが天上からの金色の光の散布を指さした。


「画像記録は止めて消去したが、外部の者に目撃されるといささかまずい」


 ディム・トゥーラとウールヴェは顔を見合わせた。


「これは……どういう範囲設定だ?」


『わからない。カイルが君を非常に案じているのは確かだが――古狸(ふるだぬき)まで対象になるとは、いささか心が広すぎる』


「君、どさくさに紛れて酷いことを言うね。古狸(ふるだぬき)はお互い様だろう」

「どっちも古狸(ふるだぬき)が気の毒になるレベルの大馬鹿者よ」


 スパーンとジェニ・ロウが二人を言葉で叩き切る。


古狸(ふるだぬき)が対象になるのは、まだ理解できるわ。なぜ私まで癒しの対象になるかってことよ」


 意味がわからずに、ディム・トゥーラは上司を見た。エド・ロウが肩をすくめてみせた。


「私より、はるかに大量な光が降り注いでいる」

「……なんでだ?」


『……なんでだろう?』


 ディム・トゥーラは、自分の消えていきつつある身体の傷をあらためて見下ろした。


「……貴女にも、傷があるとか?」

「なんですって?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ