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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第13章 精霊の選択

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(23)癒しの風②

「カイルのことか?」


『彼以外に規格外がいるのかね?初耳だ』


「いないが、彼にそんな能力はない」


 ディムはもう一度天井を見上げた。金色の光はまだ降り注いでいる。

 再度確認のため(てのひら)で受け止めると、雪がとけるように光は手の中で消えていった。


『それはいつの話をしているのかな?』


「なんだって?」


『カイルが地上に降りてから1年以上が経過している。彼が変化していないとどうして思うのだね?』


「――」


 ディム・トゥーラは、はっとして自分の手を見た。巻かれていた包帯を取ると、傷跡が金色の光を帯びており、やがて傷自体がゆっくりと薄くなっていった。


「ありえない……再生ポットに入っているわけでもないのに、こんな短時間に傷跡まで完全に修復するなど」


『本当に君達は頭が固いね。なぜ、それをありえないと思うのか――その凝り固まった先入観は、いい加減やめた方がいい』


 子犬の大きさのウールヴェが指摘をする。


『そのうち、大切な物を見落とすし、成長を阻害する。自分で可能性を潰しているようなものだ』


「…………これをカイルがやっている、と言うのか?」


『癒しの力は、エトゥールの地にあるもので、カイルは君との(きずな)を経路として、君に癒しの力を送っているんだ。彼は自分のせいで、君が大怪我(おおけが)をしたことにショックを受けている』


「誰が俺の怪我(けが)をしゃべったんだ?!」


『トゥーラだ』


「あのクソ馬鹿犬野郎――っ」


『犬じゃない』


「トゥーラに教えたのは誰だ?!」


『間接的に私であり、私ではない。私が縮んでしまった余波をトゥーラも食らって縮んでしまい、地上はちょっと混乱したようだ。カイルに問われてトゥーラが馬鹿正直に報告した』


「トゥーラが縮んだって?そもそも、どうして地上の様子を把握できているんだ?」


『世界の番人が同情して干渉しているのと、ウールヴェは集合意識体だからできる』


「――ちょっと待て、今、さらりととんでもないことを言わなかったか?」


『世界の番人が同情して干渉している?』


「それもとんでもないが、そのあと」


『集合意識体?』


「そこだ。集合意識体とはどういう意味なんだ?」


『君はカイルの報告を話半分に聞いていたのかね?ウールヴェが個の記憶を共有できると、カイルは報告したと思うが?』


「あれは死んだウールヴェの記憶を共有できるって話だったはずだ」


『それをどうやってしていると思ったんだね?』


「……記憶のダウンロードのようなこととか」


『悪くないセンスだ。ついでにいうと、そのダウンロードされた記憶をアップロードすることは、ウールヴェの能力――使役主に左右される』


 ディム・トゥーラがそれについて深掘りしようとした時、ドアが開いて、エド夫妻が現れた。


「ちょっと、貴方達、エトゥールの癒しをばらまくのをやめてちょうだい。外部の人間に目撃されたら、どう言い訳するつもりなの?!」


 突然の非難に、ディム・トゥーラとリードは意表を突かれた。


『「………………え?」』






 カイルは胡座(あぐら)をかいて、瞑想を続けている。聖堂内の雰囲気が変わったような感覚がシルビアにはあった。


「シルビア様」


 ファーレンシアがシルビアに静かに声をかける。


「両手をこちらに」

「どうかしましたか?」

「癒しの力が集まっています。もしかしたら――」


 ファーレンシアはシルビアの両手を、自分の両手で包み込んだ。

 包み込まれた手が金色に淡く光った。


「いったい何を――」


 シルビアは、息をのんだ。急いで、最近手放すことが出来なかった手袋を脱いだ。

 カイルの同調能力の暴走で、傷だらけになったはずの両手から、一切の傷が消えていた。


「……ありえません」

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