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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
終章 エトゥールの魔導師
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(27)絆㉗

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

うん、やっぱり、同窓会でへべれけになりました(懺悔)


ブックマークありがとうございました!

現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

――生き残るのにふさわしいか


 大きな命題にハーレイは困惑した。


「………………ふさわしいか、ふさわしくないかの判断の基準は?」

「僕にもわからないよ。ウールヴェ達を犠牲にして、地上の人間に救う価値が本当にあったのか、なんて同化した今でもわからない。僕は、僕が関係している人達を救いたくて行動しただけで、そんな大義はなかったんだ。だが最後の時にウールヴェのトゥーラは言っていた。ウールヴェ達はずっと人間のすべてをを見てきたと。綺麗な面も汚い面も、人間に関する全ての記憶を共有していると。僕に協力して、僕に報いることが、ウールヴェ達の総意で『選択』だと。この意味わかるかな?」


 カイルは静かに語った。


「ウールヴェは『観察』し『考え』て『記憶を共有』し、人間に協力するか『判断』し、『選択』している。人間に対して審判しているんだ。問題は、人間が精霊の意に沿う行動をできるかだと思う」

「………………」

「権力に群がり陰謀(いんぼう)を張り巡らせる貴族や、宗教をゆがませて搾取(さくしゅ)する司祭、金に執着し賄賂(わいろ)(まつりごと)を腐敗させる老中、子供を誘拐(ゆうかい)し売り飛ばす奴隷商人、罪のない旅人達を殺害する盗賊、国同士を対立させて王位簒奪(さんだつ)をたくらむ王族の血筋――それらの行為は、全てを俯瞰(ふかん)して見る世界の番人の目にはどう(うつ)るのだろうか?」

「待ってよ。今の時代の人は、精神的にまだ未成熟(みせいじゅく)よ?そこで判断するのは、早すぎない?」


 やや呆然としているハーレイに代わって、イーレが抗議した。


「イーレ、僕が判断しようとしたわけじゃない」

「わかっている、わかっているわ。でも、世界の番人に弁護くらいはできる立場でしょ?だいたい今だってカイルの中で静聴(せいちょう)しているかもしれないわね?」


 ハーレイは青ざめた。

 自身の不用意な発言が、西の民の総意と取られることはあるのだろうか?


「そんなことはないよ」


 ハーレイの思考を読んでいるのか、カイルは苦笑して答えた。


「…………カイル」

「ああ、ごめん。心を読んだわけではなく、顔の表情を見ればわかるよ。今のハーレイは、僕より腹芸(はらげい)ができなくなっていると思っている」

「…………酷評(こくひょう)だな……」

「…………ハーレイ、普段の僕をどう思っているか、あとでゆっくり聞かせてね」


 にっこりと応じるメレ・アイフェスは、銀髪を治癒師を思い出させる微笑みを浮かべた。


「…………イーレ……」


 ハーレイは思わずカイルの指導者であるイーレに取りなしを求めた。


「ある意味、カイルが正しいわよ。今の貴方は、正直すぎるわ。いくら精霊の信仰が厚くても、精霊に対する交渉術は持っていてもいいと思うの。精霊は隷属(れいぞく)を求む支配者ではないでしょう?精霊というだけで、西の民は(ひる)みすぎよ。本当にそのうち利用されかねないわ」

「………………」

「今のうちにカイルに聞きたいことを聞いた方がいいと思うわ」

「………………そうだな」


 ハーレイは伴侶の前向きな助言を受け入れた。


「…………世界の番人は、人間を見捨てる可能性もある審判者であることはわかった。例えば、この先、精霊の加護は失われることがあるだろうか?」

「ハーレイ、加護をどういうものだと思っている?」


 ハーレイは考えこんだ。


「西の地では、精霊に愛されている証とされている。特殊な才だ」

「実は特殊でもなんでもない」


 いきなり否定されて、ハーレイは絶句した。


「…………と、いうと?」

「今は一部の人しか使えない能力と思われているけど、その素養は誰でも持っているものなんだ。使い方を知らないだけで」

「それではまるで誰でも占者(せんじゃ)になれるようだ」

「なれるよ」

「…………は?」

「本来はそうなるはずだったんだ。それが初代達の接触と血が混じって能力差が生じはじめてしまっただけで」

「「「え?!」」」


 黙って聞いていた他の二人も反応した。


「え?カイル、それどういう意味なの?」

「どういう意味もなにも、そういう意味だよ。シルビアに血液検査でもしてもらえば、確証を得られるかもしれない」

「「まて、なぜそう考えた?」」


 ハーレイとディムが声を揃えて、問いただした。


「ナーヤのお婆様の先見(さきみ)が異常だからだよ」


 カイルの答えは単純だった。


「「は?」」

「あとは、僕が3番目の子供だったことかな」

「それがなんの関係が――」

「あと二人の初代王の子供はどうなったか、と考えたんだよ」

「それは…………当然エトゥール王族の血筋じゃないのか?メレ・エトゥールも姫もそれなりの能力者だ」

「二人の子供のうちの一人が西の氏族に行った可能性は?」

「…………ない……とは言い切れないか……」


 ディム・トゥーラは頭の中でその可能性と老婆の異常な能力値を検討していた。


「先見は未来予知ではないのか?」

「世界の番人の――という修飾がつく」


 カイルは厳密な指摘をした。


「単純に世界の番人の言葉を聞いて伝える精神感応者(テレパシスト)ではないかと仮説をたててみたよ。加護を持っていると簡単に言語の壁を越えられるよね。身体能力の高さや、加護の能力、遮蔽(しゃへい)の素質を全員が狩りの訓練で取得していること、全員能力者と判断してもいいくらいだよ」

「それが、ロニオスの接触で遺伝子の干渉があったと?」

「遺伝子の干渉――まあ、単純に子孫だよね」

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