(23)絆㉓
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「そのエネルギー量が500年以上蓄積されたという根拠は?」
「だってエトゥールの建国の歴史は、初代ロニオスがエトゥール王になってからでしょ?地下拠点の上に城ができて精霊樹が存在しているのは、それからじゃないかな?あ、でも、もしかしたら精霊樹の元になる大樹があったから、ここに城をもうけたのか……?」
「世界の番人の記憶を覗けないのか?」
「覗いてもいいけど、きっと僕は長い間、眠りにつくよ?」
「前言撤回。絶対に覗くな。いいな?」
「あ、いや、ちょっとぐらい覗いて見たいかも……?」
懲りないカイルはディム・トゥーラに殴られた。
精霊の泉の移動装置を目指してカイル達は馬に乗って移動を開始した。ハーレイの後ろにカイルが、イーレの後ろにはディムが相乗りし、馬達の負担を考え、帰路はゆっくりとしたものになった。
先行しているミナリオがメレ・エトゥールに報告したあとに、聖堂を整えるための準備をする時間を与えるためでもあった。
本当は急いで帰って、アドリーにいるファーレンシアに愛情のこもった書をしたためたかった。
トゥーラがいれば、代弁者として半身のウールヴェをファーレンシアの元に飛ばしていただろう。
だが、トゥーラはいない。
またもや、カイルの中で半身を失った耐え難い悲しみがこみあげてきたが、それを察したディム・トゥーラが遮蔽を強化することで、周囲への影響を遮断してくれた。
カイルはディム・トゥーラに感謝の言葉を告げようとしたが、ディム・トゥーラは端末を注視し、あえてカイルを無視していた。
カイルは途中でぽつりぽつりと、皆に大災厄の最中にあった世界の番人とトゥーラを代表とするウールヴェの対話を語った。
「よく、わからないわ」
イーレは、正直に半ば憤慨しつつ言った。
「なぜ、世界の番人がウールヴェに命じては、いけないの?ロニオスかカイルが命じる立場であるのはなぜなの?カイルにそんな残酷な選択を強いたのはなぜ?」
「イーレ、僕を想って怒ってくれるの?感激だなあ……」
「ちゃかさないで」
イーレはカイルを叱り飛ばした。
「イーレ、カイルは照れているんだ。照れると、よくちゃかす」
「ディムっ!」
支援追跡者の裏切りに近い暴露に、カイルは顔を真っ赤にして制止した。
「照れてるだろう?」
「…………ディム……」
「私は怒っているのよ、理不尽な選択を強いた世界の番人に。カイル、貴方は傷ついているじゃない。自分の選択した結果、半身であるウールヴェを失ったことに」
「……………………」
「世界の番人の警告はある意味正しいわ。貴方は一生、この選択で負った傷を心的外傷のように背負うのよ。それが世界を救うためにこれだけ奔走した者への褒賞?おかしいでしょ?」
「……………………」
「なぜ、世界の番人はそんな重荷をロニオスや貴方に押し付けたのよ?」
「重荷というより代価かな。滅亡するはずだった世界の救済の代価は安くない。ただそれだけだよ」
カイルは小さく息をついた。
「僕は、その覚悟があるか問われた――本当にただそれだけなんだ。ロニオスにはその覚悟があった」
ディム・トゥーラは思い出していた。
――私は目的のためなら手段を選ばない男だ。妻も子供も私にかかわる者も、犠牲にすることを厭わない。もちろん私自身も犠牲にした。文明を救うという巨大なトロッコ問題を解決するのに必要なものは、一歩もひかないという断固たる決意だ
アードゥルと対決していた上空で、ロニオスはそんなことを言っていた。
ロニオス・ブラッドフォードは遥か昔から、ウールヴェ達のように全てを賭ける覚悟はできていたのだ。
「それに僕もお人好しじゃないよ?ちゃんと働いた代価はそれこそ、世界の番人から取り立てる」
カイルは高らかに宣言をした。ふふん、とほくそ笑んでいる。
「こうやって世界の番人を救うことで、彼に強制的に恩を売ってる。利子まで取る予定だ」
「……思考パターンがロニオスに似ている……」
「え?!」
ぼそりとつぶやいたディム・トゥーラの言葉にカイルは目を剥いた。
ディム・トゥーラはカイルの抗議を受ける前に端末を操作しているふりをした。
カイルは唇を尖らせて支援追跡者を睨んだあとに、話を続けた。
「重荷のような選択――これも僕はいろいろ考えたけど……人間の未来を決めるのは、人間であるべきで、僕達のように深い介入が禁じられているのではないかな?」
「どうしてそう思った?」
「西の民のナーヤやエトゥールのファーレンシアの存在がいるから」
カイルはあっさりと答えた。
「先見か」
「そう。そもそも介入が許されるなら、先見ではなく、もっと直接的な道の示し方をしていると思うんだ。例えば命令するように。だけど、そういうことはない。選択をして、行動するのは、人間に託されている」
「昔、俺は占者の警告を軽視して痛い目にあっている」
ハーレイはその説を認めるかのように告白をした。
「その後、しばらく精霊を逆恨みもしていた。加護を失ったのも、その頃からだ」
「貴方が精霊を逆恨み?」
イーレが驚いたようにハーレイを見た。
イーレは精霊に対する信仰心が厚い若長の姿しか知らない。




