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毒親告訴  作者: 宇野大江
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恐喝罪告訴

久しぶりに訴えます。

あの人は他人の手柄を横取りするような薄馬鹿の無礼者でありますぞ。このような奴を崇めてはなりません。あなた方はあのシスコンに騙されているのだ。


あれは先日のことでした。丁度大洪水が起こり、全てが水に沈んだ後のことです。


食料などあるはずもなく、皆飢えて途方に暮れ、何でも良いから腹を満たしたいと思っていたところに一匹の赤蟻がトウモロコシを担いで通りかかったのであります。


飢えていたものですから、みんな赤蟻のトウモロコシを物欲しそうに見ていたのですが、私も腹が減って盗み一つくらい許されるかもしれないと誘惑に駈られたものですが、何とか我慢していたけれども、あの人は違った。


何をするかと我々不思議そうに見詰めていると、あの人は突如として赤蟻を恫喝したではありませんか。トウモロコシの在処を教えなければ通さないと言うのです。


たかが蟻一匹脅して、少しは恥ずかしくはなかったのでしょうか。


私はあの人の性根を見たような気分でありました。


あのシスコンは、自分よりも弱い者を虐げるのが楽しくて堪らないのだ。暴力に頼ってでも人から崇められたいのだ。他人に譲歩させて威張り返ることだけを至上の喜びとする田舎者なのだ。


きっと伯父様に都から追放されたのが悔しくて、自分より弱い奴を苛めて憂さ晴らししようという魂胆なのです。そうに違いありません。私は幼少の頃から人の顔色を窺うのが得意な男であります。下品ではありますけど、親の内心であれば読めないはずはない。


思えば妹に手を出したのもこれが理由だったのかもしれない。


あの人は偽善者のくせに善人ぶっているから上辺だけの綺麗事しか言えない。女の人もそれを本能で嗅ぎ取ってやはり澄まして応じるものだから、口説くなんてことはできやしない。けれど妹は普段からあの人をそういう人だとして接しているから、自然と不倫に持ち込めたのだ。


田舎者は酒に酔えば本当に好き勝手に振る舞うものですよ。俺が大臣になれば景気は良くなるだの、俺以外みんな馬鹿だの、何て無法なことを喚くのでしょう。けれど自分よりも強い者が同席していれば途端に大人しくなる。ああ卑しい。卑しいね。だからあの人は田舎者なんだ。


あの人の度重なる嫌がらせに赤蟻はついにトウモロコシの在処を喋ってしまいました。


私は、何故これまでこんな田舎のシスコンに認められたいと思って努力してきたのだろうという妙な落胆が胸に込み上げてきたのでありました。


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