第04話 心機一転
俺が死んだ後の話をアエラ様から聞いた後は、今後の話となった。
「あの、アエラ様、私たちは、この後どうなるのでしょうか」
落ち着きを取り戻した母さんがアエラ様にそう尋ねた。
確かに気になる、確かアエラ様は普通は転生するといっていた。俺たちもそうだろうと思う、でも、ここに母さんを呼んだということは何か理由があるんだろう。
「そうですね。もちろんほかの方々と同様転生していただきますが、お2人の場合は少し違います」
やはり、違うらしい、でも違うって一体何が違うのだろうか。
「違うとは?」
母さんも気になってそう聞いた。
「実は、咲奈さんはともかく、啓太郎さんはこのまま転生させるわけにはいかないのです」
「どういうことですか?」
どうやら、違うのは俺の方だけのようだ。
しかし、母さんとしても、俺のことだからか食い気味で聞いた。
それを見たアエラ様が微笑みながら、でも時折哀しそうに答えた。
「啓太郎さんは幼いころより、大変ないじめを受けました。そのために表面には出ていませんが心の奥底に恨みや憎しみというものがあり、その深さはご本人が思っているよりも深いのです。それは、たとえ転生による魂の浄化や記憶を消しても消えるものではありません。また、啓太郎さんぐらいのいじめを受けた方は確立としては低いですが、逆に誰かをいじめてしまうか、誰かをひどい目に会わせてしまうという傾向があります。その際、わたくしは罰しなければなりません。わたくしとしては啓太郎さんを罰したくはありませんから」
アエラ様は心底残念そうにそういった。
「そんな、啓太郎に限って、そんなこと」
母さんはアエラ様の話を聞いて衝撃を受けている。俺としては、魂の状態となった今、生前ではそこまで感じなかった颯太たちに対する恨みや、そのきっかけを作った父親に対する恨みや憎しみを何となく実感できていた。
だからといって、アエラ様の言う通り来世でそんなことをするつもりはない。
でも、それはあくまで俺が自分がいじめを受けていたという記憶が現在あるからだろう、そのつらさもよくわかっている。だから、誰かにそれを強いようとは到底思えない。
だからといって、記憶を失う来世でそう思うかはわからない。
「わたくしもそう思いたいですが、可能性としてあるのです。ですので、お2人にはもう一度人生をやり直して頂きたいと思っています」
「「やり直す?」」
どういうことだろうか。俺も母さんもよくわからない。
「はい、そうです。その方法として、まずは咲奈さんが転生し、そのお子さんとして啓太郎さんが転生します」
「えっ、ということは、また、啓太郎の母に!」
えっと、どういうことだ、つまり、先に母さんがどこかに転生して、そのあと俺が母さんの息子として転生する。もう一度親子としての人生を歩むということだろうか。
「その通りですよ、啓太郎さん、もう一度お2人には親子として人生を歩んでいただきます」
これには驚いた、まさか、やり直すということがそういうことだとは思わなかった。
そうか、だから母さんを待ったのか。
「さて、納得していただいたところで、お2人に転生していただく場所について、説明しますね」
「あっ、はい、お願いします」
「お2人の転生先は、わたくしが創造した世界のアエリースという星です。そこは、文明レベルは低いですが、魔法技術が発展した。いわゆる剣と魔法のファンタジーという世界ですよ」
笑顔で言われても、俺にはよくわからない、しかし、母さんが若干興奮している。
「魔法ですか、一度使ってみたいと思っていたんです。あの、私も魔法使えるんですか」
「もちろんですよ。ですが、申し訳ありません、この星は魔物もうろつく少し危険な星なのです。本当ならもっと平和で安全な星に転生していただきたかったのですが」
アエラ様が本当に申し訳ないという感じで誤ってきた。
「そういう場所はないのですか」
「あるにはありますよ。ですが、それがあるのはこの世界、そして、この世界は複数の神が管理する世界ですから、実はわたくしにはそれほど権限がありません」
「権限がないっていうのは、俺たちを転生させるってことですか」
「そうです。本来転生は天界のシステムによりランダムに選ばれた場所に、となります。ですが今回は異例につきわたくしがシステムを介さず手動で行うことになります。そういった場合、どうしてもわたくしが自身で創造した世界でしかできないのです」
「アエラ様の世界には平和で安全な場所がないということですか」
母さんがもっともなことを聞いた。
「残念ながら、わたくしは神としては新人、まぁ、それなりに長くはやっていますが、そのために創造した世界もまだ小さいのです。その世界にはいくつか生命が宿った星があるのですが、人型の生命というと、1つしかないのです」
1つじゃ選択も何もないよな。
「その星って、どのくらい危険なんですか」
俺はその星の危険度を聞いてみた。
「そうですね。魔物がうごめき、毎年多くの人たちが亡くなっています。また、文明のレベルも低く、戦争なども頻発していますね」
思っていたより危険な星のようだ。
「ですが、先に転生する咲奈さんが行く場所は、比較的安全な場所を選ぶつもりですのでご安心ください」
「というと……」
「とても小さな村なのですが、周囲に出没する魔物は、その星では最弱といわれるものばかりで数も少ないですし、盗賊なども全く出ません。また、戦争などもを行っている場所も遠いですから、その影響も全くない場所です」
思っていたよりも安全な場所らしい。
「その代わり、少しばかり貧しい生活となってしまいますので、その苦労はあるかと思います。ですが、これらは咲奈さん次第だと思いますよ」
「私次第というと、どういうことですか」
「咲奈さんもですが、啓太郎さんもわたくしの創造した世界に、わたくしが手動で転生させます。その影響で膨大な魔力を持った状態で生まれることなります。また、咲奈さんには地球の技術などの知識などもありますよね」
「はい、一応ありますけど」
「それらを行使すればより良い生活にできると思います。といっても、あまりいっきに文明レベルを上げられると少々困りますが……」
どういうことだろうか、俺にはよくわからない。
「なるほど、確かに、文明が一気に進めば混乱が生じますからね」
どうやら母さんにはわかったらしい。
「はい、お願いします。さて、それではそろそろ、時間です咲奈さん、準備はよろしいですか」
大体の説明を聞いたところでどうやら母さんが転生する時間が来たようだ。
「はい、啓太郎、お母さん先にいって待っているからね」
「うん、後で行くよ」
母さんが俺に向き直りそういったので、俺もそれに答えた。
「今度こそ、幸せになりましょうね。啓太郎」
「うん」
それから、母さんは光の粒になって消えた。
「行った、か」
「ええ、そうですね。ですが、すぐに会えます」
アエラ様がそういうってことはもしかしたら、また時間を止めるのだろうか。
「それでは、再び啓太郎さんの時間を止めますね」
そういって、アエラ様が俺に向かって手をかざした。




