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Fラン生徒は元大賢者 ~先生! 召喚魔法で魔王が来たので早退してもいいですか?~  作者: ああああ/茂樹 修
第一と二分の一章 先生……今回の試験『勝ち』に行っても良いですか?
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おまけ ~ある生徒会室の光景~

特典SS「風」のミニエピソードです。

時系列は1章と1・5章の間ぐらいですが、あんまり気にしなくて大丈夫です。

「ちょっとアルフレッドぉ? その書類はそっちだって言ったでしょ」

「はいはい」


 ため息をつきながら、ビッチ先輩……ではなくビッチ新会長の指示に従って書類棚を整理していく。ここはフェルバン魔法学園の由緒正しき生徒会室なのだが。


「ったく、どうすんのよ……この汚い部屋を。今日中に片付けなきゃならにってのに」


 頭を抱えるビッチ会長。もちろんこの惨状を招いたのは他でもないこの人である。


「言っておきますけど、会長が悪いんでしょう? 見栄張って一人で生徒会室の改装出来るだなんて言い出すから」


 問題ばかり起こしているという自覚すら嫌でも芽生える召喚科は、今回何も悪くない。普通は新生徒会役員が総出でやる作業を、アタシぐらいになれば一人でも余裕よ? そう、この生徒会長ならね! オーッホッホ! とか言い出したからさぁ大変。


 結局一人じゃ書類の整理すら出来ず、暇そうで口も固そうな俺に白羽の矢が立ったのだ。少しは反省して欲しい。


「ねぇ、もう一回言いなさい」

「見栄張って一人で生徒会室」

「違うわよその前の……か、い、ちょ、う、よ」


 得意げな顔でウィンク何か飛ばしてくる我らがビッチ新会長。反省してないなこれ。


「あんまりふざけてるとエル呼んで全部焼いてもらいますよ」

「ったく、冗談よ冗談……ノリ悪いわね」


 そういうのは手を動かしてる人だから言っていい言葉だと思うのだが、そこで議論をしたところで生徒会室の片付けは一向に進まないので口を閉ざす。多分この瞬間だけは、ビッチ会長より頭良いだろうな俺。


「ま、実際のところあの女の残した物なんて、危なっかしくてアタシの大事な新生生徒会役員には触れさせてくないのよね」


 そこでようやく反論を諦める俺。結局マリオン前会長とクロード先生の凶行は対外的には無かった事になりつつも、風の噂として学内に広まっていた。曰く駆け落ちの末だとかそういう話。おかげでマリオン前会長の派閥は力を失い、ビッチ新会長による新生徒会が発足したというのが事の顛末。


「で、俺なら別に何かあっても良いと」

「アンタは当事者でしょ。それに頭吹っ飛んでも生きてるんでしょ? 便利で良いじゃないの」

「さぁ……どうでしょう」


 まさか便利の一言で片付けられるとは思わなかったが、当事者なのは事実である。だからマリオン前会長の残した怪しい物は処分できれば、という下心が少しはあったのだけれど。


「にしても、ゴミばっかですね」

「そうね」


 生徒会室の倉庫から引っ張り出してきた木箱の中には、いつかのイベントで使ったような小道具大道具その他諸々の類ばかりだった。禁呪がどうだとかクロード先生が残したどうとか考えていた自分が恥ずかしいわ。


「あ、これ懐かしいわね」


 箱の中に手を突っ込み、黒い布切れを引っ張り出すビッチ会長。これ片付け進まない奴だな、と思いつつも気になったのでつい尋ねてしまう。


「何ですかそれ」

「バニーガールの衣装ね。去年の学園祭で……ったく何で着せられたんだか」


 思わず生唾を呑み込む。何で着せられたかという理由はビッチ会長の出る所が出た体を見れば誰でもわかるだろうという言葉も飲み込む。代わりに出てきたのは。


「何で……ですかね、ちょっと着てみたらわかるんじゃないですか?」


 うん、しょうがない。大体タダ働きの俺だそれぐらいの報酬があってもいいだろう。


「どういうことよ」

「いや、やっぱり実物見ないと理由わからないっていうか」

「えぇ……今着たら片付け終わらないでしょ」

「終わらせますから! 俺が!」

「わかったけど……アンタ鼻息荒いわよ」

「すいません、片付けの気合い入れてました」


 思わず口元を腕で覆い、ついでに明後日の方向に視線を向ける。


「まぁ、そんだけやる気があるなら着ても良いわよ」

「よしっ!」


 さすがチョロチョロビッチ会長、最早褒めるまでもないぜ。


「じゃ、アタシ更衣室行って着替えてくるから……片付け終わらせておきなさいよ」

「はい、任せて下さい!」



 部屋を片付ける魔法、なんて都合のいい物はない。風で物を運べるが、凧揚げのようなものだ。細かいものを運ぶのなら断然手を動かす方が早く、ついでに言えばこの部屋にあるものはそういう類の物ばかりなので。


「……疲れた」


 片付けを終わらせた俺は、額に汗を流していた。だがこの労働は全てビッチ会長に似合うというバニースーツを拝むため――。


「ちょっと、何だっていうのよ!」


 なんて一息つく間もなく、廊下からはビッチ会長の悲鳴が聞こえてきた。大丈夫ですか、と勢いよく飛び出さなかったのは、風にのって嗅ぎ慣れた匂いが漂って着たせいだ。


「何ってお前、その格好ふざけてるのか」


 ライラ先生である。呆れた顔でタバコをふかしながら、ビッチ会長の肩を叩いていた。


「これは、いや、生徒会で!」


 ビッチ会長とバニースーツの組み合わせは、思わず首を縦に振るぐらいには似合っていた。出た所の出た肉体を、隠すは黒い布と網タイツ。それに首と手首の白い襟は、なるほどよく似合っている。そして耳がその全てを完結させる。


「生徒会室にいるアルフレッドに……着ろって言われたのよ!」

「よし」


 俺は頬を叩いて生徒会室の窓を開けた。掃除したばかりの部屋に吹き込む風が優しく頬を撫でるから。


「……帰るか!」


 ライラ先生に絞られる前に、さっさと脱出しましたとさ。

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