試されるもの⑦ ~試される時~
そして迎えた試験当日。教えて大賢者アルフレッドちゃんシリーズを読破した俺に最早一部の隙もない。何だあの表紙と驚いた日が最早懐かしく、彼女の冒険の軌跡はしっかりと胸に刻まれていた。
他人事のように学べたのが良かった。
いやまぁ相棒はあんな事言っていたが、伝わっている事実と俺が体験した事の差はあまりにもかけ離れている。例えば俺がちょっと寄り道気分でやった事が大げさに記録されていたり、逆にあれだけ苦労した事がどこにも載っていなかったり。ついでに自分の記憶もあやふやなのだから、どうしようもないとはまさにこの事。
ありがとう本屋の人。でもエロ本は遠慮しておきます。
「余裕そうですねアルくん」
「まぁね、俺にはこれがあるからね」
登校してきたディアナにしたり顔で俺は答える。そして見せつけるのは例の本、ってあれこれ女の子に見せて良いものなのかな表紙的に。
「あ、懐かしいですねそれ!」
良かった大丈夫だったらしい。全く本屋の人のせいでいらない心配する羽目になったじゃないか、今度文句言わないとな。
「子供の頃それ読んで勉強しました!」
「うんうん……うん?」
子供の頃?
「はい、懐かしいなぁ……お姉ちゃんと一緒にはじめて本屋に連れて行って貰って、その時買ってもらったなぁ」
「え、うん? えーっと……それ、いくつぐらいの話?」
「七つか八つぐらいの時ですね、それぐらいの子向けの本ですし」
いやうん、確かにこの本には難しい語句も無かった。それに絵が沢山で簡単に読み終えたし読み返せた。ということはもしかして。
「つまり今回の試験には」
「えっと、試験範囲的にはあってると思いますけど……」
けど、の先をディアナは言わずそのまま自分の席につく。それからもう一度教えて大賢者アルフレッドちゃんを読み返してみるが、なんだか急に子供っぽい物のように思えた。というか子供向けだねこれ、何を薦めて来たんだろうねあの本屋、エロ本売りたかっただけですね。
「あ、でも! 今回の試験はすっごく簡単だってお姉ちゃんに手紙で聞きましたから! 大丈夫、大丈夫ですよアルくん!」
ありがとうディアナ、そうだねまだ諦めるには早いよね。
「ちなみにアルくんは……自分が一番だったらどうするんですか?」
「え?」
「いえその、アルくんが一番だったら自分で自分を好きにして良い訳ですから……どうするのかなぁって」
「ああそういう事ね」
言われてみればそうなるのか。まぁ毎日自由で休みみたいな物ではあるが、自分の予定を進んで立てた事ってそう言えばあまり無かったかな。
「そうだなぁ」
改めて考えてみる。きっとこういう時にこそ人の性格何かが出るのだろう。というか今回の事だって、それぞれがやりたいことを持ち寄っている。
俺はどうなんだろう。あるのだろうか、やりたい事が。誰かがどうじゃなくて、自分自身の望みがどこかに。
「俺は……」
それだけ言いかけて言葉に詰まった。今がそれなりに楽しくて、いつか望んだ今日だから。
その先を願う資格なんて、無いように思えたから。
「お、今日は全員早いな」
と、良い所でライラ先生が入ってくる。今日はタバコと一緒に試験問題も持って来ている。
「準備は出来てるな、どうせホームルームもやる事ないし……早速始めるか」
ここ最近で一番不気味な笑顔を浮かべるライラ先生、こういう時も人の性格って出るものですね。試験問題を裏返しのまま全員の机の上に置いてから教壇に戻って手を叩く。
「よし行き渡ったな」
周囲を見回せば、全員が真面目な顔で試験を睨んでいる。かつてない緊張感がこの教室に広がっていた。
「では……始め!」
一斉に試験を裏返す俺達。ディアナはあんな事を言っていたものの、腐っても教えて大賢者アルフレッドちゃんだ。むしろ子供でもわかるという事はそれだけ奇をてらわず素直に伝わっているという事、ゆえに俺が学んだ事は間違いなど無い、さぁかかって来い第一問!
問一。大賢者アルフレッドの生没年月日を答えよ。
ああうん、生没年月日ね。いつから生きていつ死んだ的なアレね。えーっと俺の田舎ね、まともに戸籍とか管理してないし誕生日とかも凄い適当な場所だったからね。
こういう時はあれですね。
――教えて、大賢者アルフレッドちゃん。
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