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Fラン生徒は元大賢者 ~先生! 召喚魔法で魔王が来たので早退してもいいですか?~  作者: ああああ/茂樹 修
第一と二分の一章 先生……今回の試験『勝ち』に行っても良いですか?
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試されるもの② ~召喚魔法の使い方~

 試験? どういう意味ですか? という質問は飲み込んでから、ライラ先生に改めて尋ねる。


「えっ、試験なんてあるんですか?」

「お前は学校を何だと思ってるんだ」


 その通りなんですけど。


「いやでも、召喚魔法って」


 思い出すのはオリエンテーションだかで配られた一枚の紙。召喚魔法のついて三行でまとめられた至高の一枚。召喚魔法の製作者としてはあながち違うとも言い切れない所が悲しい。まぁ普及してもらうために簡単にしたから仕方ないんだけどさ。


「ああ気にするな、学年共通の学力調査みたいな物だ。試験内容も受験の筆記みたいな物で、成績とは特に関係ない」

「良かったあ」


 これで留年とか言われたら犬に泣きつくところだったぜ。


「まぁ赤点は補習だがな」

「それぐらいなら」


 家でエルとイヴの言い争いを見てるぐらいなら、教室で勉強していた方がマシだ。いや待てよ、かなり重症な発言だな俺。


「マイフレンドよ、丁度いいんじゃないか?」


 と、ここでシバがそんな声を上げた。丁度いい、という言葉に思わず首を傾げてしまう。というか我慢できずに聞き返す。


「何の事?」

「平和的な戦いの事さ。二人とも学生なんだし、試験で張り合うなら健全で良いじゃないかな?」

「確かに」


 ひとり大きく頷く。何も殴り合いだけが生存競争ではないのだ、二人共一応は学生という身分を与えられているのだから、確かに試験は良い機会だ。


「おう上等だクソガキ、テメェのオツムの緩さを確かめる良い機会じゃねぇか」

「はぁーっ? こっちもヤモリの脳の小ささを調査してみたいと思ってたんじゃが?」


 早速乗り気でいがみ合う二人。いやぁ良かった良かった、これでしばらくの間は静かになりそうだね。


「お、珍しくやる気があるな」

「いやぁ良かったですね」


 ライラ先生の言葉に大きく頷く。平和が一番だよねやっぱり。


「お前もやる気出したらどうだ」

「え? でも補習すれば良いんですよね?」


 違うんですか? と顔に書いたら思い切りタバコの煙を吐かれた。


「全く……これだからFランなんだよお前は」


 それからライラ先生は両手を叩いて、とんでもない事を言い放った。


「よし、じゃあこうするか。一位の奴は一日アルフレッドを好きにしていい事にしようか」

「えっ!?」


 好きにしていい、ってエルとイヴに言ったら本当に好きにされるのわかっていますよね? 本当学生がやっちゃいけない範囲簡単に飛び越えちゃいますからね?


「いいんですか!?」


 立ち上がって声を張り上げるディアナ。こっちはまだセーフな範囲だろうけど他の二人に殺されるよね俺。


「いや、あの俺は」

「お前が一位になったら好きにしろ」


 つまり俺が生きるためには、俺がFラン一位の成績を収めなきゃならない、と。


「あ、あ、あ、あアルくん! お買い物! お買い物行きましょう!」


 お買い物ならまぁ、と思いつつエルとイヴから冷たい視線を感じる。はいやっぱり殺されそうですね。


「なんでもいいなら私も頼みたい事がある。劇薬棚の整理したかった」

「あれぇ」


 小さく手を挙げてファリンがそんな事を言い出す。劇薬棚って、落としたら死ぬやつかな?


「僕もスジャータへの愛を伝えるべきだと思っていたからね」

「うわ辛いやつ」


 マジでキツいしマジで実行出来る奴来たな。


「あ、じゃあ我も最近キャラが薄くなった事で相談が……」

「地味に重いのやめよう?」


 エミリーも深刻そうな顔で手を挙げる。ややこしくしないで本当ね。


「よしよし、私もお前らの成績が低すぎるのは困るからな。クラス全員やる気になるなら御の字という奴だ」

「あの俺は」

「アルフレッド」


 そう尋ねればライラ先生が笑顔で俺の肩を叩く。


「お前が一番頑張るんだよ」


 はいそうですね、死にますね俺勉強出来ないからね。


 ――とはいかないんだよな、今の俺は。


「仕方ないですね、これだけは使いたくなかったんですが」


 そうこの俺、アルフレッド・エバンスは大賢者その人である。教科書の最初のページに乗っている偉人なのだから、試験ぐらい余裕としか言いようがない。知識があるわけじゃない、自信なんてどこにもない。


 けれど俺には。


「何だ、秘策でもあるのか?」

「見せてあげますよ、先生。召喚魔法の使い方って奴を」


 魔法がある。全ての魔法の基礎である、最強の召喚魔法が。


「ほぅ」

「召喚!」


 指先に魔力を込めて、五芒星を描き叫ぶ。召喚魔法で召喚できるのは魔物や獣、という訳ではない。


 これは今この瞬間より過去に存在した、ありとあらゆる事象を呼び出せる最強の魔法だ。


 炎なら燃えたぎる溶岩を。雷なら暗雲に轟く雷鳴を。水なら大海原を畝る波を。


 そして試験だというなら。




「試験問題いいいいいいいいいいいいっ!」




 そう、あるのだ。試験が来週だというならもう試験問題は完成している。だから俺は召喚できる。完璧だ。


「よしっ!」


 次は模範解答を呼び出せば完璧だな。


「よくねぇよ」

「ああっ!」


 折角召喚した試験問題をグシャグシャに丸めて、そのまま魔法で火を着け灰にするライラ先生。


「カンニングは補習どころじゃないからな、わかってるだろ」

「はい、肝に命じておきます……」


 命じるけどさ、この状況って。


「じゃあお前ら……今日も自習しろ」


 打つ手なし、って奴じゃないかな。

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