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Fラン生徒は元大賢者 ~先生! 召喚魔法で魔王が来たので早退してもいいですか?~  作者: ああああ/茂樹 修
第一章 先生! 召喚魔法で魔王が来たので早退してもいいですか?
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第三話 大空を翔る白き翼⑤ ~コウノトリじゃない説~

「はーっ、女子更衣室侵入に女子便所侵入、おまけに教室のドア八枚に窓ガラス十六枚ぶち壊して生徒会役員を医務室送りとか……お前ら鬼ごっこってどんな遊びか知ってるか? ハイハイからやり直すか? ん?」


 はい、説明不要。


 でもしておくね、ここは生徒指導室。もう三回目で教室にいる時間より長いけれど、今日はちょっと違う。


 隣にシバがいるからね。


「すみません先生、もうしません」


 頭を下げる。




 ――ちなみに事の顛末だが、俺とシバはそのまま大空を駆けて逃避行……などとは行かなかった。


 途中グリフィードが昨日までの白い鳥の姿で戻り、そのまま近くの森に墜落。


 トボトボと学園に向かって歩いているところを鬼の形相をしたライラ先生に確保されましたとさ。


 ちなみにグリフィードは教室で他のクラスメイトが面倒を見ている。




 ってさっき説明したらふざけるなって怒られた。


「いいかアルフレッド、もうしないっていう台詞はだな……生徒指導室に三回も来る奴が言っていいものじゃないんだよ!」


 そしてまた怒られる。


 怒鳴って机を思い切り殴るライラ先生。机の上に置かれた灰皿は来た時は空だったのに今はもう山のようになっている。


 めちゃくちゃ煙たいですこの教室。


「待って下さいライラ先生! 僕はまだ一回目です!」

「あ、シバずるい!」

「ったく、しかも仲間割れとはな……もう面倒だ二人共、明日から生徒指導室で出席取るぞ」

「反省してます」

「もうしません……僕は」


 頭を下げる俺とシバ。いや僕はって俺ももうしないからね。


「全く、とりあえずそこで反省文でも書いてろファンタスティック馬鹿共。私はお詫び行脚でもしてくるさ」


 とりあえず束になった紙とペンをぞんざいに渡す先生。


 そのまま咥えていた煙草を灰皿の山の頂上に添えて、生徒指導室の扉を開く。


 が、振り返らずに言葉を続けた。


「ところで二人共、リタ・アンバーって女子生徒知ってるか?」

「いや知りません」

「誰のことですか? 生憎友人以外の名前を覚えるのは苦手でして」


 すっとぼける俺とシバ。ここに来てそう言えば叡智の欠片渡して無いなと思い出す。


 けれどそれはどうやら杞憂だったようで。


「さあてね。何でもお前らに絡まれてるって誤解されたおかげでクラスに友達ができたと私に報告してきた、変わった二年生の名前さ。随分嬉しそうに話してくれたが……お前らには関係ない話だな」


 そのまま先生は扉を閉じる。全く骨折り損とはこのことだろう。


 けれどシバは笑っていた。そういう性格なのだろう、彼は。


「なにはともあれ、作戦成功……かな?」


 シバが俗っぽく拳を突き出す。俺も笑う。


 確かに骨折り損かもしれない。けれど冷静に考えようか。




 リタ先輩には友達が出来てシバの召喚獣の名前が決まって自分の教室で殺されかけて女子更衣室でシバがボコられて女子トイレには変態がいて生徒会の人を医務室送りにして扉と窓ガラスが粉々になって召喚科の地位はおそらく更に下がって今生徒指導室にいて眼の前の反省文用の紙の束はまぁ三十枚近くあって。


 だから。




「……えっ、どこが?」


 何一つ嘘偽りのない言葉を、俺は吐き出す。


 ついでにシバの拳ははたき落としておきましたとさ。






 夜遅くに帰宅した俺とシバ。


 地獄の反省文提出を何とか今日中に終わらせられたものの、もはや食事を摂る気力すら残っていない。


 というわけでそのまま自分の部屋に直行したのだけれど。


「おっ、おう遅かったなアルゥッ!」


 ベッドで寛いでいたエルが、俺の顔を見るなり顔を真赤にして挨拶してくれた。


 なんか枕抱いてる。


「ああエル先帰ってたんだ。授業は楽しかった?」

「ままままままあな! でもあれだな! オオオオオレオレオオオレぐらいになるともう学ぶことなんてひとっ、一つもないけどなあっ!」


 声を何度も震わせながら、今日の感想を教えてくれた。


「そりゃ良かった」


 疲れ切った俺は気のない返事を口にしながらベッドに倒れ込む。


「けけけけけどおっ!? ほほほほ保健ってのはあれだなぁっ! こう、コウノトリって関係ないっていう説は興味深かったけどなあっ!」


 説って。


 あ、もう無理だ眠くなってきた。


「そそそそそっちの、説を……だな」


 だから説って、まぁいいかそんなのは。


「試したかったら……良いんだぞ、アル」

「おやすみなさい」


 よく聞こえないまま返事する。


 

エルはそのまま抱きしめていた枕で俺の頭をバシバシと叩いてきたが、もう疲れ切った俺はそのまま眠りに落ちることしか出来なかった。

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