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ストーリーが止まってしまう現象につける6つの薬

作者: 深森

第1の薬.文法力

第2の薬.構成力

第3の薬.思考力

第4の薬.集中力

第5の薬.持続力

第6の薬.創造力



――【第1の薬.文法力】


基本形「主語&術語」を、ワンセットで考えましょう。


「○○して、××して、**して、☆☆して……」と言う風にズラズラとつなげるタイプの文章も有り得るとは思いますが、これは一般的には、論文でも「読み込みにくいタイプ」のテキストとされています。「分かりにくいから、直しなさい」と言われやすい文章です。


いわゆる「途中でストーリーが止まりやすい」というタイプの作品は、文法力の無さも、原因の一つでは無いでしょうか。区切りがハッキリしないまま、ダラダラと続く……というタイプの文章は息切れしやすいため、全体的に、先細り型の構成になりやすいです。


つなげるタイプの文は、「2回程度の繰り返しに収めつつ、スパッと切って行く」という風にまとめていくだけでも、分かりやすさが違います。短い文に分割する事で、主体が明確になる、時系列などの状況が分かりやすくなる、という事も多いです。


――「一つの文」は、端的に。時系列のあり方にも、配慮を。


文と文を連結する(或いは、語句と語句を連結する)、「そして」「なおかつ」「また」などという接続詞のテクニックを極めると、細かいロジックをハッキリさせる事が出来るようになって来るので、意外に便利です。ただし、「一つの文」が端的じゃないと、却って「わずらわしい要素」になりますので、注意!


文法表現のバランスが良くなってくると、「地の文」がパワーアップしますので、実際の文章も見違えるようになって来ます。推敲も楽しくなって来ると思います。


「地の文」がパワーアップすると、会話文をシッカリと支えられるようになります。多人数による会話劇となると、また別のテクニックが必要になって来ますが、だいたいは「地の文」の応用でカバーできます。


会話が重要なパートであればある程、縁の下の力持ちとしての「地の文の分かりやすさ」が重要になって来ます。この「分かりやすさ」を実現するためには、或る程度の演出力が必要になって来ます。これは次に述べる「構成力」と関係します。


文章力が付いて来ると、作風や個性も自然に付いて来ます。キレやテンポの良い文章は、パワーがある……というケースが多いようです。


何はともあれ、全ての基礎となる「国語力」を鍛えましょう。


「手っ取り早くパワフルな言葉を揃えたい」という書き手にお勧めするのは、外国の詩歌作品(翻訳作品)と、漢詩です。外国語と日本語とを、語感的にも情感的にもマッチさせようとして翻訳者が苦心して揃えた言葉が並んでいるので、サラッと読んでみるだけでも勉強になります。


漢詩では、格調のある綺麗な表現が多いです。読み下し文もカッコいいですし、新しいお気に入りの言葉や表現が見つかったら、ラッキーですね!



――【第2の薬.構成力】


「重要な要素」と「重要でない要素」は、きちんと区別できていますか?


時々、何を言いたいのか分からない話をする人がいますが、そういう人は、他人が理解できるような話を構成する事が出来ません。「重要な要素」と「重要でない要素」が、きちんと区別できていないからです。


国語力と、構成力との間には、「部分」と「全体」という、切っても切れない関係があります。


「明瞭な文章」に直結するのが国語力(文法)であり、「地の文の全体の分かりやすさ」に直結するのが構成力です。


構成力を決めるポイントは、「要・不要の取捨選択=情報の絞り込み」であります。


この「要・不要の取捨選択=情報の絞り込み」は、人によっては「5W1H」とも言います(論理的構成力)。


焦点となる物(=見せたい物)を定め、そこに通ずる時系列ラインに沿って、要・不要を取捨選択し、絞り込んで、文章の各所にテンポよく割り付けていくという形になります。


例えばホラーですと、話が進むにつれて主人公の心理や視野が非常に狭くなっていく、感覚が偏りつつも鋭敏になっていく、という傾向があります。選択肢も次第に奪われて行く。それに沿って、強調されるべき重要な要素が、どんどん偏っていって、絞り込まれていきます。


クライマックスに向かってビシバシ追い上げて行く時も、こんな風になります。事件に事件が重なって、周辺情報が絞り込まれ、偏りつつも研ぎ澄まされていって、クライマックスになだれ込む……という流れです。


ですから、一目でパッと分かるような「論理的に明瞭な文章」である事は、より必須になるであろうと思われます。


こういった構成上の絞り込みが甘いと、情報が取っ散らかっていて要点がつかめない、目的が分からない、そういう意味不明な内容になりやすいです。要点や目的を見失えば、ストーリーが迷走して、しまいには動かなくなる……という事も珍しくありません。


「不要なキャラをやたらと増やす」と言うのも、同じような結果になりやすいので、注意です。


ナレーションにおける構成要素と、各キャラ視点における構成要素は、明らかに違います。この辺りを馴染ませていくのは「ストーリーテラー(筋立て,語り口)」のテクニック次第という事になりますが、自在に使い分けができるようになると、演出力が伸びていきます。


演出次第で、読者視点を或る程度コントロールできるようになりますから、「この辺でドキドキさせたい」とか、「この辺でギョッとさせたい」とか、そういった目論見を仕掛けていく……という事も出来るようになると思います。



――【第3の薬.思考力】


まずは、基礎となる国語力、すなわち言語とロジックの力を鍛えましょう。


思考力を支えるのが言語の力なので、国語力が無ければ、どうにもなりません。「思考力」を考えるのは、その先の話になります。


ここでは、ストーリー戦略に直結する思考力に、焦点を当ててみます。


一般的には、この思考力は、「起承転結」「プロット」「伏線」などと呼ばれるもので表現される事になります。いずれも、要素と要素を有意に連結するための、論理のカタマリです。


一話完結するためには、原因と結果が矛盾しない程度の一貫したロジックが必要です。特にミステリー物、クエスト物、謎解き物では「原因→結果」という論理構成となります。


現実には論理を超えた出来事がいくらでもありますが、ストーリーの中の出来事では、論理を貫徹させなければなりません。


「何が、どうして、こうなったのか?」――思考力が無い人は、これを論理的に説明できません。思考力とは推理力であり、科学力であります。科学力の基礎も、国語力が支えているのです。


一応、本能的・直感的に筋道の通ったストーリーを、思い付きでパッと作れる人も居ます。そういう人は、何も考えていなくても無意識のうちに、ストーリー戦略を応用できている筈です。


ただし、そういう類の、思考プロセスを欠いたスタイル――直感的なストーリー作成では、長編ストーリーが作りにくく、話も余り広がらない傾向があります。割と一発芸に近く、どちらかと言うとテンプレを組み合わせた内容になりやすいでしょう。


無限にネタやアイデアが(完成形で)湧いて来る――と言うような特別な作話の才能が無い場合、直感的なストーリー作成スタイルで、大河ドラマ風の長編を仕立てようとするのは、無謀です。そう言う事が出来るのは、超絶的なストーリーテラーの才能がある人だけだろうと思われます。


いずれにせよ、ストーリー流れで出て来る種々の展開について、その理由を説明できるだけの論理が用意できなければ、読者の思考を納得させることが出来ません。


ストーリー戦略ツールとして、「起承転結」「プロット」「伏線」色々ありますが、結局は、思考や論理の時系列プロセスを効率よく可視化・図式化するために、工夫され生み出されてきたツールです。


思考は目に見えませんから、どうにかして可視化しておかないと、いつの間にかストーリーの中で論理がズレてしまっていても、作者側は案外に気が付かないものなのです。



――【第4の薬.集中力】


目標やゴールに向かって集中できない人は、一連のお話(特にクライマックスのあるお話)を作るのは難しいと思います。


気楽なお喋りと、一話完結のストーリーは違います。


集中力と言うのは、演説力や演出力の問題も含んでいるかも知れません。


特に「クライマックスに向かって各エピソードを配置し、仕掛けていく」場合、各エピソードで展開する文章にも、クライマックスに向かう方向性(矢印)を持たせる必要があります。クライマックスの中心に向かって、設定や伏線も含めて必要十分な量の集中線が引ければ、そのお話は「演出に成功した」と言っても良いです。


世界観が緻密に練り込まれているファンタジーの場合、設定などの内容をどうやって説明していくか。これは、演説テクニックの応用になります。スルスルと分かりやすく設定を見せて語っていくためには、かなり強い集中力が要ります。


実際の作話では、最初に設定回(いわゆる前書き、プロローグ回)を押し込んで、ナレーションで、キャラクター設定や世界設定などを語っていくパターンが一般的です。これは方々で指摘されている通り、読み手の頭をパンクさせる傾向が強いようです。


演説スピーチで言われているコツですが、「覚えていてもらいたい内容は、最低でも3回以上は繰り返す」というのがあります。


例えば……


1回目、ナレーションで、サラッと設定の大枠を語る(観光ガイドみたいに、イメージ喚起力のあるテキストを慎重に選んで、注目・関心を惹く)。


2回目、住民による情報提供、周辺の日常の光景という形で、近況情勢を加えて設定を語る。ここで、ちょっとしたミステリーを匂わせてもOK。ミステリー要素で更に関心を惹く。


3回目、主人公に近い身辺の事象の中で、残りの設定の情報を提供する。雰囲気イメージ喚起力のあるテキストを選びつつ、ミステリーに対する解説も追加して、一気にストーリー世界に引きずり込む。


……こういう風に組み立てて語ってみる……という方法が考えられます。


この「3回以上は繰り返す」という作業では、ストーリー設定の説明自体は、書き込む場所が離れていても大丈夫です。……というよりも、各エピソード内部の演出要素として考え、適当に離して配分した方が良いです。


ただし、このように断片化した情報が、分かりやすく適切な配分になっているかどうか――に関するチェック作業は、非常に面倒くさいです。序盤でこのような情報を入れる場合、この序盤は、プロの人も何度も推敲する部分になるという事です。「強い序盤(引き込み)の構築」というのは、それくらい難しい。


「読み手の根気や関心、記憶がいつまで続くか」と言うのもちょっと怪しいので、特にストーリーの本筋に関する内容、ストーリー全体を貫く目的や謎の提示に関しては、それほど間を空けない方が良いかも知れません(※)。


(※)この辺りは自分でも研究中なので、確かな事は言えません。その点はご了承ください。



――【第5の薬.持続力】


「お話を作る」というのは、完成形の分からないプラモデルやジグソーパズルに取り組むのに近いところがあります。


空白を埋めていくという作業だけでも、実際はかなり体力と気力が要ります。


お話の最大の特徴は、そのプロジェクト性、すなわち「目に見えないけど、想定イメージ的には、到達するべき目的やゴールがある」という部分です。つまり、「これで良し!」というストーリー地点に至るための時系列スケジュールが必要になる訳です。


プロットからストーリーを組み立てるという事は、様々な企画に沿って一連の時系列スケジュールを組み立てて実現していく……という事と同じです。その時系列スケジュール、つまりシナリオに沿って、ストーリーが流れていきます。


過去から未来へ流れるストーリーが一般的ですが、回想形式のシナリオであれば、現在から過去へジャンプする形のストーリーとなるでしょう。


ストーリー完結までの持続力を維持するコツは――


プロットからシナリオを立ち上げる時に、実際のストーリーラインにおける「重要な要素」「重要でない要素」をガッツリ絞り込み、或る程度、本筋と寄り道に振り分けておく事がキモです。


実際にストーリーを展開していく時は、思わぬところで本筋と寄り道がダイナミックに交代しますから、「或る程度」という振り分けレベルで充分です。柔軟性を実現するための遊びは、あった方が良いです。


なおかつ、ストーリー展開をしていくための、強いパワーを持ったキャラクターを整備する事が、重要になって来ます。長編の場合は、最低でも3人の主要キャラクターが必要です(一般的には、主役,脇役,敵役)。


充分に強いキャラクターであれば、そのキャラクターの側面部分からストーリーのアイデアが新しく出て来る、という事も多いです。「キャラが意外に主張して来る、キャラが自然に走り出す」というのは、そういう事です。そう言う風になってくれば、各キャラクターがストーリーを引っ張って行ってくれるので、筆が乗ると思います。


どの要素が本筋で、どの要素が寄り道なのかというのは、作者側(主人公視点)の方では、きちんと区別しておかなければなりません。ストーリーを彩るための寄り道として用意した筈のエピソードが、本筋として振る舞い始めたために、本来のストーリーラインを見失い、迷走していったと言うケースは非常に多いです。


重要性の低い枝葉末節のエピソードをダラダラと続けていると、当然、キャラクターのパワーを浪費するという状態になります。


そして、いつかどこかで、書き手自身でも迷走して、ストーリーが止まります。この違和感はハッキリと現れます。「何だか、あまり良い話が作れそうに無い」という感覚は、書き手の誰もが、程度の多少はあれ、感じた事があるのでは無いでしょうか。


気ままに語っていくストーリー「ヤマ無し、オチ無し、イミ無し」の類であれば、そんなに問題は無い? と思いますが……


「本筋エピソードが寄り道エピソードに乗っ取られてしまう」――これは、「構成ロジックが混乱していてグダグダ」、「キャラクターが弱い」というのが、大きな原因である事が多いです。


この場合は、キャラクター設定を見直す必要が出て来るでしょう。場合によっては、そもそものプロット段階、キャラ設定の段階から組み替える必要があるので、ストーリーを丸ごと作り直すレベルの大工事になると思います。


*追記:

各キャラクターのパワー強度は、「ストーリー上の存在理由の強さ」で決まります。その時、その場に、その性質・性格・スキル等を持ったキャラが登場する理由、その行動を取るだけの必然的な理由(論理的に説明できるだけの強い理由)が、あるかどうか……という事です。「行動」と言うのは、思考や感情、セリフ、態度の在り方・変化も含みます。



――【第6の薬.創造力】


お話は人工物です。クリエイトしない事には、お話は永遠にできないです。当たり前ですが。


肝心のお話は、何処から出て来るのか――「どうも無意識が大きく関わっているらしい」という事が言われています。


執筆している段階で、無意識の中で既に全体像が出来ている場合は、お話は、ちゃんと完結するそうです。無意識との協調リンクを確立するのが大変なのですが(場合によっては数年がかりになる)、確立すると、後はスルスルと出て来るとか。


こういう事を可能にするためには、一旦、無意識に向けて、「こんな感じの話を書きたい」というようなキーワードやイメージを、繰り返しインプットする必要があります。無意識は「ものすごくニブイ性質」ですから、トイレに行ってる時でも、寝てる時でも、1日中お願いして&考え続けているような、「しつこくて、真剣なお願い」にならないと反応が返って来ないです。


(しかも無意識からの反応は一瞬な事が多いので、メモ帳を常時、持ち歩いている必要があったりします……)


人生上の悩み、心理的クライシス、大きなショック、幼少時からの疑問、感動的な出来事……そういった異様なレベルの揺さぶりを含むインプットがあると、無意識からの反応も明確になる傾向があります。夢、インスピレーション、ひらめき……などという形で、ストーリーが一気呵成に出来る場合もあるようです。


ストーリーになるか、ならないか。これは、「誰かが、何かを、する(している)」という形式のイメージが閃くかどうか――で決まる所が大きいようです。イメージは、単数の事もあるし、複数の事もあります。聞く限りでは、モヤモヤしたままの曖昧なイメージである事も多いようです。


そういうイメージの中で、「これを書きたい!」と思えるテーマや内容が見つかれば、ラッキーと言えますね。その「内容」をジックリ温めて育てていけば、人によっては、ライフワークと言って良いくらいの大作になる可能性もあります。


実際は、心の中にモヤモヤと抱えている「内容」を意識の上に浮かび上がらせて、形にするのは大変です。必要最小限のストーリーの種子――「誰かが、何かを、する(している)」という部分を、シッカリと仕込む事が出来れば、大したものだと言えるかも知れません。


プロでも、ひとつの作品イメージを得るのに5年から10年くらいは掛かるという人も居るそうですから、決して簡単な作業では無い、という事は言えると思います。


あと、最も重要なポイントとして、「とにかく色々な見聞をして、大量の情報を詰め込んでおけ」という事は、確かに言えます。多くの本や資料を読み込む事で、素材不足も経験不足も、或る程度は埋める事ができます。


無意識から湧き上がってくるイメージは、極めて原初的なイメージで、モヤモヤしている事がほとんどです。そのモヤモヤを捉え、小説の形にしようと言うのですから、ありとあらゆる知識・情報……イメージキャッチのための多種類の枠組みを持っている方が有利です。


*****


――最後になりましたが。


やはり、「自分で楽しみながらストーリーを作る」というのが、一番です。


楽しい創作ライフを満喫しましょう♪

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