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家族と引き換えに世界を救います‼  作者: アカツキ
転生
5/10

朝の鍛錬

お盆休みも終わりなので更新遅めになります。

3日に1回は更新できるようにします。

アルガード王国、ロウドが転生したパーセルの町が属している国である。

高さ5000m~8000m級の山に囲まれ中央には直径100㎞にもなる巨大なハンガー湖を持つ。

険しい山々は天然の障害として国を外敵から守る壁となり、周囲の山から水が流れ込む湖は豊富な漁業資源を産出する。

湖からは大きな川が一つ流れ出ており、南東の湿地帯を抜けて山脈を貫いて国外に流れ出ている。


湖と山の間には湿地と平原が広がっている。

漁業の町パーセルは湖の北西部の平原にあり、ハンガー湖の水揚げ拠点の1つとなっている。ここからアルガード北西部へ魚介類を運んでいくのだ。

人口は1万人ほど、町に住むのは主に漁師、魚の加工業者だが買い付けに来る商人、運搬業者、その護衛隊などが常に出入りするため宿屋、酒場等も発展している。



朝の6時、漁業の町としては一番賑やかになる時間帯、その時間帯でも最も賑やかになる市場を駆け抜ける少年少女達の姿があった。


「ロウ‼今日は負けねぇかんな‼」

先頭を走るのは猫人(バステト)の少年、カルゼイだ。

赤い耳と赤い尻尾を振りながら人混みを駆け抜けていく。

時折魔法を使用しているのか地面についた足下で陣のようなものが光る。

その3歩後ろを人間(ノーマル)のロウドが追っていく。


「カルゼイさん‼これは鍛錬ですよ‼勝ち負けはあまり関係ないと言っているでしょう‼」

前を走るカルゼイに注意をするロウド。

こっちは純粋に筋肉のみで走っている。魔法に頼らない筋力強化、持久力、人混みを駆けるステップの鍛錬だ。

4歳とは思えないしっかりとしたフォームで人混みを駆けている。

時折後続が気になるのか振り返って確認している。


「カルゼイ兄たち待ってよ~。」

小柄な2人が疾走する後ろを3人が追っている。

前の2人は鳥人(ガルダ)の双子ハリエラとエイタスだ。

女と男の双子は白い頭部の羽毛、背中からは焦げ茶色の翼、黄色いくちばしをもつ。

2人はあまり地上を走るのは苦手なのか先頭の2人から少しずつ遅れている。


「ほらほら。他の人は気にせず走りなさい。」

2人を気遣って一緒に走っているのは象人(ガナパティ)の少女クユリだ。

長身と象人(ガナパティ)にしては痩せ過ぎの身体、肌は色素が薄いため少し弱々しく見えるが双子を気遣う余裕は十分にあるようだ。


この年齢も種族もバラバラの集団は毎朝市場を抜けて港まで走り、折り返して町の中央にそびえる光の塔の最上階まで走るのだ。

始めはロウド1人で行っていた鍛錬だったがカルゼイ達近所の子供に見つかってからは全員で競争するようになった。

最年長はカルゼイとクユリで6歳、次いで双子が5歳、ロウドは最年少だがこの集団の中ではまだ負けたことは無い。


「ゼィ、ゼィ、ゼィ。やっと着いた。」

カルゼイが光の塔の最上階についたのは7時近くだ。

マナも切れ、スタミナも枯渇した状態でフラフラ上がってきた。

「カルゼイ、おっそい。なんであんたが最下位なのよ」

展望室入り口で待っていたのはクユリだ。ちなみにクユリは4着。

「いや、流石に空飛ぶのはずるくね?」

「飛んでんのはハリエラ達だけよ。ロウドと私は一緒に走ってたでしょうが。それに個人の鍛錬なんだから飛ぶのはアリよ。カルゼイのスタミナが足りないのよ。」

クユリに正論をぶつけられちょっとへこむカルゼイ、耳と尻尾が垂れている。


「で、ロウ達は?まだ飛んでんの?」

「みたいね。全く年下なのになんであんなに体力があるんだか。」

カルゼイとクユリは展望室の外を見る。


「ローウ‼カルゼイ兄も上がってきたよー‼」

ハリエラがカルゼイの無様な姿を確認したようだ。

「はーい。じゃあ最後の攻撃にしますね。行きますよー。――空気(エア)よ走れ。我が投球に速さを‼――」

ロウドと双子は空中でサッカーのようなゲームをしていた。

攻撃と防御の二手に分かれて手の平サイズのボールを投げ合うのだ。

攻撃側は光魔術で作った輪にボールを通せば勝ち、防御側はそれを防ぐのだ。

魔法の使用は怪我をしない程度に、一回の攻防で攻守交替し終了時得点の高い者の勝ち。


もちろん空中だ。ロウドは空気(エア)属性の魔法で身体を空中に浮かせ、ハリエラとエイタスは自前の翼で飛んでいる。

ロウドの手から投げられたボールが魔法の力を借りて加速している。

「――(サイコ)よ形作れ。我が盾となりし壁を‼――」

守るのはエイタスだ。手に防御魔法を展開し、ボールを跳ね返そうとしている。

「――(ファントム)よ隠せ。我の攻撃を覆いつくせ‼――」

すぐさま、ロウドが2つ目の魔法を発動した。するとエイタスに迫っていたボールは跡形もなく見えなくなった。困惑するエイタスの後ろで光の輪の色が赤くなった。


「はーい。ゴール。エイタスの負け―。やっぱり私たちはロウちゃんに敵わないね。」

ハリエラが肩をすくめながら展望室へ戻っていく。

「ローウード、見えなくすんのはズルいだろー。守りようがねーじゃん。」

「ハイハイ、エイタス。年下に負けたからって拗ねないの。ロウちゃんだってこっちのルールに従ってやっているんだよ?地上に降りたらそれこそ私たちに勝ち目無くなるって。」

ハリエラに続いてエイタス、ロウドも展望室に戻ってくる。

「ごめんなさい。魔法の並列起動も鍛錬の一つなんですよ。」

ロウドはブーブー言うエイタスに一応言い訳めいたことを言っておく。

「かー、ホンっとロウはすげーな。空飛びながら2つも魔法使って、俺じゃ無理だよ。」

「鍛錬の結果ですよ。エイタスさんもこの前並列起動できたじゃないですか。」

「しょぼいのを2つだけな。10秒も持たなかったよ。」

「いいんですよ、僕たちはまだまだ子供ですから。鍛錬を続ければこれからどんどん伸びますよ。」


「なーんだぁ?エイタスはまた負けたことをグチグチ言ってんのかぁ?」

戻ってきたエイタスにカルゼイがちょっかいをかける。

休憩して元気が戻ってきたようだ。

「万年最下位のカルゼイ兄には言われたくないよ。」

「あぁ?空飛べるからって偉そうにすんじゃねぇ‼」

「ストップ‼ストップ‼最後くらい仲良くしなさい‼」

バチバチ始まった2人をすぐさま仲裁するクユリ。

ニヤニヤ喧嘩を見ているハリエラ。

怒られてしょんぼりしているカルゼイとエイタス。

ちょっと離れてそれを眺めるロウド。

誰が年長かわからなくなりそうだがこの5人の日常は大体こんな感じであった。


「ロウド、今日の夜の準備はどんな感じ?」

光の塔から駆け降りているとクユリから話しかけられる。

明日はクユリとカルゼイが町の学校に入学する日なのだ。

町の学校は3年間の全寮制で、家に帰ってくるのは年に1~2回くらいになるのでほとんど会えなくなる。

町にあるのは初等部だけで卒業すれば中等部への受験資格が得られる。

今夜は2人の壮行会をするのだ。


「19時からマーカス亭の大部屋をとっています。クユリとカルゼイの門出ですからね目一杯飾り付けておきますよ。あとパーティなのでおめかししてきてくださいね。」

「わ、分かった。パーティか、ちゃんとした場はちょっと苦手だな。父さんが張り切るし。」

「ダンクさんも戻られているんですか、久しぶりにお会いしますね。」

クユリの父親、ダンク・ソウ・ダーガーはシエラを森で拾った商人だ。

娘の門出に合わせて本拠地に帰ってきているようだ。


「そうなんだ。昨日ギリギリ間に合った―とか言いながら帰ってきた。」

「なになに?何のお話?」

階段を走るのではなく滑空しているハリエラが話に入ってきた。

「今夜のパーティですよ。ハリエラもおめかししてきてくださいね。」

「えへへー。ちゃんとドレスも準備したよー。クユリ姉達いなくなるのは寂しいけど来年は私たちも通うしまたすぐ会えるよね。あ、うちのお父さんも来るって言ってた。」

「はい、セファロス伯爵から話は聞いています。スポンサーにもなっていただけたので豪華なパーティになりますよ。」

辺りの都市を治めるイータス・エアル・セファロス伯爵はハリエラとエイタスの父親だ。

セファロス家の子供はパーセルにある別荘に幼少時は預けられ、初等部卒業とともに王都ヘルツォートの中等部に進むことになっている。


「えっ。セファロス伯爵に金を出させたのか?ケチで有名な?」

クユリが驚いた口調で失礼なことを言う。

「いえいえ。伯爵はケチではありません。無益なことには投資しないだけです。とても有能な投資家ですよ。」

ロウドはハリエラの手前フォローを入れる。

「そうかなぁ。どうやってパパを引き込んだの?」

しかし、残念ながらハリエラも父親に対して厳しいようだ。

「特別なことではないですよ。マーカス亭が繁盛している理由をちょっとお話しただけです。」

有能な投資家であり政治家のセファロス伯爵は変わったこと、新しいことがあると気になって仕方がないようで、その好奇心を少しくすぐってみたら投資してくれた。

「それだけー?ロウはいっつもなんか隠してるからねぇ。面白い物でも見つけた?」

ハリエラに疑われている。そんなに普段の行いが悪かったか?

悩んでも答えは出そうになかったので笑って誤魔化しておいた。

アハハハハ


塔の入り口まで降りて朝の鍛錬はおしまい。

そこで解散となった。

これで毎朝2時間の鍛錬は終了である。

正直4歳の子供にしてはやりすぎだが、世界を救うのが目的のロウドはまだまだ足りないと感じている。


もっと力を付けなければ。


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