結局見た目がものをいう。
お外はもうまっくら。
家に帰るとご主人様がおまるの帰りを今か今かと待っていました。
夕食後、おまるはご主人様とインターネットを楽しみました。
しかしこともあろうに、ご主人様がうっかり『生きた鳩をぺろりと食べるペリカンの動画』を見てしまったのです。
「ぺ、ペリカンが鳩を食べるだなんて……」
心優しいご主人様は心を痛めているようでした。
でもおまるはペリカンが鳩を飲み込んでも、さほど驚きませんでした。
おまるにとって、ペリカンが生きたまま鳩を食べるのは、人間が白魚を踊り食いする事と同じように映るのです。
「とっても新鮮だ」などと言いながら、生きたままじわじわと骨身を噛み砕き、泣き叫ぶ魚たちを食べるなんて、人間はとっても残酷です。
生きているんだから新鮮なのは当たり前です。
でもご主人様はそんなことしません。
ちゃんと息根の止まったものしか食べません。
食べるときもちゃんと「いただきます」と言います。
「いただきます」は命をいただきます、という意味もあるのです。
おまるは賢いアヒルなので知っていました。
それはそうとこのペリカンです。
おまるは画面に現れたペリカンを見たときから気が付いていたのです。
ペリカンの目はイっていました。
こいつは危険だ。
こいつは何かをしでかすだろう、とおまるの本能が告げていたのです。
見た目で人を判断することがいけない事だということはおまるも知っています。
でも実のところ、8割くらいは見た目で判断します。
夜なのにサングラスをかけ、黒く焼けた肌に両耳400万円のダイアモンドのピアスをぶらさげ、片手にストロー、もう片手に注射器を持った人に誰が好んで近づきましょうか。