命を食べたことのないやつなんていない。
公園に行く途中、おまるは道端で小鳥が死んでいるのに気が付きました。
小さな小さな小鳥です。
おまるはその小鳥の死を悼みながら「なんまんだぶなんまんだぶ」と手を合わせました。
おまるはこの小鳥を荼毘に付してよいものか、考えあぐねました。
人間の法律はよく分かりません。
死体損壊容疑をかけられたらことです。
おまるが困っていると、突如、左羽のすぐ横を通り過ぎてゆく影がありました。
近所のデブネコです。
デブネコはさっと小鳥を銜えると、速疾鬼のように走り去っていきました。
ああ、なんて可哀想な小鳥だろうとおまるは思いましたが、これは仕方のない事なのだということも、ちゃんと分かっていました。
所詮、生き物は命を喰らってでしか、生きていくことはできないのです。
命は命を食べて命を繋げるのです。
生滅を繰り返し、物事はすべて移ろい往く。
なんという皮肉な世の中なのでしょう。
しかしこれがおまるの生きる世界であり、全てです。
おまるは賢いアヒルなので知っていました。
「諸行無常よ」
おまるはそっと呟きました。
けれども正直、たとえおなごがわんさか集まってこようとも、あのデブネコとは力を合わせたくないなと思いました。
おまるのお尻の穴が恐怖できゅっと締まりました。