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絶望が続かないように、幸福も続かない。
兄も買い物に出て行ってしまったので、おまるはひとりで散歩に行くことにしました。
散歩に出かけるときはいつもおめかしをします。
数年前までとってもトレンドだった、ネコの被り物です。
そうです。
ネコとアヒルが力を合わせたあれです。
今の若い子はあまり知りません。
その昔、これを着ると若いおなごがわんさか集まってきたことを、おまるは賢いアヒルなので覚えていたのです。
若いおなごがわんさか集まってくるだけで、おまるは幸せになれました。
でも、それが刹那の幸福であることをちゃんと知っていました。
今ではダックが猫の格好をしても誰も寄ってきません。
白いダックと黒いダックが2羽で歩いていた方がまだ希望があります。
しかし、それでも構わないのです。
所詮、この世の栄光など、めまぐるしく変わってゆく世界の一瞬のキラメキでしかないのです。
おまるは賢いアヒルなので、そこのところをちゃんとわきまえていました。
でも、過去の栄光にはまだちょっと縋りついてみたりします。