アジト!?
お待たせしました!これからいつも通り周一。月曜日更新を再開します!
ミリアンナ達が拐われてから、何時間も時間がたった後。ミリアンナは目を覚ました。
殴られて気絶したせいか、意識が朦朧としている。
ミリアンナは、殴られた場所の痛みに顔をしかめながらうめき、倒れていたミリアンナは、ゆっくり上半身を上げた。
ミリアンナは痛みと目眩で少しふらつきながらも、自分の置かれている状況を確認しようと考えて、ノロノロとした動作で首を動かし回りを見渡してみる。
粗末な服を着ていて痩せ細り今にも餓死しそうな五歳前後子供達。反対に裕福そうな服装をした12歳前後の少年少女達が泣いているのが見えた。
多分。
裕福そうな子供達は拐われ、粗末な服を着た子供達は売られてきたのだろうと思う。
という事は…やはり此処はあのチンピラ達のアジトで間違いないと言う事だ。
ヤバイ…このままでは売り飛ばされてしまう。
ミリアンナが逃げるためには、これからどうすればいいのかと頭を抱る。そして何となく目を伏せると、視界にエレナが倒れている姿が入ってきた。
あまりにも近い場所にいたから、気づかなかった。
というか忘れていたよ…ごめんなさい…
ミリアンナは、心の中でエレナに対し盛大に土下座しながら、慌ててエレナを揺り起こす。
…エレナお姉さん…死んでないよね?
「エレナお姉さん!エレナお姉さん!! 」
怪我をしているかもしれないので、出来るだけ優しくミリアンナがエレナを揺すっていると、エレナが微かに動き、ゆっくりと瞼を上げた。
良かった!!生きてた!!
「…ん…ミリアンナ…様…ミリアンナ様! 大丈夫ですか!お怪我は…」
エレナは初め、寝ぼけたような顔でミリアンナの顔を暫く見ていたが、暫くすると完全に覚醒した。
そして、覚醒するやいなやミリアンナにすがりつきながら叫んだかと思うと、ミリアンナの体をさわりまくりながら怪我がないか調べ始めた。
ミリアンナは、嫌そうに体をさわるエレナの手を掴んで体から離す。同姓にまさぐられて喜ぶ趣味は無いからだ。
そして、元気そうなエレナの様子に安心してハーと息を吐く。
そしてミリアンナは、優しくエレナの頭を撫でた。
「ああ。大丈夫大丈夫。頭が痛いだけだし。それよりも…こんな広い馬車なんてあるわけないから…船かな?」
初め気がつかなかったが、地面が揺れている。
室内は何か湿気ってるし、小屋位の広いから多分。間違いないだろう。
自分の感覚だけでは疑わしいので、確認のためにエレナに聞いてみると、彼女は真面目な顔でコクりと頷いた。
「ええ。多分ですが」
ガンガンガン!!
突然。扉から大きな音がして、室内に男の怒鳴り声が響いてきた。
ミリアンナ達が騒いだせいで、扉の向こうにいた見張りが腹をたてたらしい。
男は、扉をガンガン叩きながらミリアンナ達を恫喝してくる。
凄く怖い…回りの少年少女達も震えている。
「おい!!うるせぇぞ!!黙れ…あ!何だてめぇら…ひっ!!やっやめ…ぐふっ…」
いきなり怒鳴り声が止み、扉の向こうが騒がしくなる。
数秒もしないうちに、剣と剣がぶつかる音や、何かを切り裂く音。水を壁にぶちまけた様な音が響いた。
そして…唐突に全ての音が無くなると、鍵のかけられているだろう扉がガチャリと開く。
開いた扉から現れたのは…一人の、軍服を着た男性だった。
血塗れの…
彼の姿を見る限り、扉の向こうは…かなりの惨状だろうと思う。
ミリアンナが、そんな事を考えながら震え上がっている間に、軍人男性が部屋に入って来た。
そして、中を見渡し嫌そうに顔をしかめてから口を開く。
「うわっ…奴隷商売なんかに手を出してたのかよ…おーいお前ら喜べ!俺はマグダリア鳥獣騎士団団長のリウスって言う奴だ!今 王様の命令で海賊退治しててさ、竜騎士団もいるんだけど、おデブな竜が降りたら船が潰れちまうから代わりに俺達鳥獣騎士団が船に突入したってわけ。という訳でお前らを保護してやる。まあ、取り敢えずお前らが運が良かったって事だな。助けに来たわけじゃなくて、偶然見つけただけだし…取り敢えず王様に報告してくるから、ちょっと待ってろ!」
男性は、室内にいる人間全てに聞こえるように大声でそう言うと、急いで部屋の外に出ようとした。
そんな彼に、ミリアンナは慌てて駆け寄り、グイッと彼の服の裾を引っ張っる。
「ちょっと待った!お兄さん!」
服を引っ張られた男性は、転びそうにになりながらも踏ん張り、転倒を回避してからミリアンナはに向かって振り向いた。
彼は転倒しかけた原因。
つまりミリアンナを一瞬睨んだが、ミリアンナが子供である事に気づくと、大人気ないと思ったよだ。
彼は、律儀にしゃがみこんでミリアンナの目線に合わせる。
「なにしやが…何だ?チビッ…ん?お前ウイング家の人間だったりするか?」
「シー!! 私については詮索無用だよ。それより、毛布と食べ物を持って来て!皆餓死寸前なんだから!」
男性が、ミリアンナの赤い髪と白眼を見て親しげに訪ねる。
しかし…ミリアンナは、唇の前で人差し指をピンとたてて黙らすと、暴行の痛みと飢えのせいで、呻く事しかできない幼い少年少女を指差した。
それを見た軍人男性は、目を見開いてああ!!と叫ぶ。
そこまで気が回らなかったらしい。
こいつアホだな…
「お!?本当だ!直ぐに手下どもに持ってこさせるから安心しな!」
彼は大声でそう叫ぶと、ミリアンナの頭をグリグリ撫でてから部屋を飛び出す。
彼は走って階段をかけあがり、甲板に飛び出すと海賊達を縛り上げていた部下達に叫んだ。
「おおい!下に拐われたらしい餓鬼共がいて餓死しかけてるから、海賊共の食料をあさって飯作ってくってくる!だから俺の代わりにお前ら王様に報告しといてくれ!!」
「あんた馬鹿か!!俺達が飯を作るから報告はあんたがやれ!団長だろ!」
血塗れの軍服の軍人が叫ぶと、部下らしき真面目そうな男性が駆け寄ってきて、上官の頭を軽く殴り、ビシっと 団長の相棒であるイーグルバードを指差した。
部下に睨まれた団長は、仕方なく引き下がると、王に報告するために、素早く相棒のイーグルバードに飛び乗り空に飛び出した。
あ~あ…報告に行くより料理したかったな…海賊なんだから未知の食材とかあったりするかも…ジュルリ…あ!涎が!
涎が相棒の身体についた瞬間。相棒は急降下と急上昇を繰り返し始める。
相棒はきれい好きなので、無言抗議らしい。
…もう…乗せてくれないかもしれない…
アジト?!でした。
まあ、アジトではなく船でしたが。
次回はマグダリア王様が登場します!