そして……
明けましておめでとうございます!
そしてスレイナの章。最終話です!
孤独に死んでいったスレイナが、次に目を覚ました場所は神の世界だった。
いつも通り神様と前世の夫達に迎えられたスレイナは、神様達の姿を見や否や大泣きしながら夫達にすがり付いた。
あまり自覚していなかったが、かなり精神的にやられていたらしい。
暫くして落ち着いた頃。神様はスレイナの為に水鏡を作り出してくれた。
落ち着きを取り戻したスレイナが、自分の死後を気にしているのを察してくれたらしい。
スレイナは恥ずかしげに笑って神様に軽くお礼を言うと、前世の夫達と一緒に水鏡を覗き込んだ。
水鏡の中の光景は早送りの様に駆け巡る。
その映像をスレイナ達は黙って見つめる。
そして、毒の影響で全ての生物が死滅した辺りで、スレイナは顔を嫌そうに歪めると一緒に水鏡を見ていた神様に質問した。
「コレやばくない?この星はどうなるの?」
「自然に環境が戻るまで放置する」
どういう意味かと神様に詳しく聞いてみると、なんと千年もすれば生態系が回復して大体 元の環境に戻るからと言う事らしい。
まあ。多少地形や気候は変わるらしいが、神様らしいなんともアバウトな対応だ。
スレイナが、なんとも言えない顔をしながら生き物が居なくなった世界をじっと見つめていると、突然。神様が慰めるような手つきでポンポンとスレイナの頭を軽く叩きだした。
ん?と神様を見上げると、彼は優しくスレイナを見下ろしていた。
「……今回は孤独死だったな…寂しかっただろ?」
スレイナは神様を見上げながら、しょんぼりしと肩を竦めるとコクリと頷く。
神様は。何時もと違いスレイナが余りに素直な態度を取るので、意地悪そうにニヤニヤ笑いだした。
「お?素直だな」
面白そうにニヤニヤする神様に苛立ったスレイナは、拗ねたようにそっぽを向く。
そして、神様が作った直径二メートルはある巨大なクッションにダイブした。
恥ずかしがる幼児のようなしぐさで、クッションに顔を埋めるスレイナに、いつの間にかスレイナの側にいたグレルが依りそう。
その反対側には、嬉しそうにスレイナを見つめるシュエがいた。
シュエに優しく頭を撫でてもらい機嫌を良くしたスレイナは、楽しげにシュエに抱きついく。
その様子を見ていたグレルは、悔しげに唇を噛んでいた。
「シェイドがシュエだったなんてね。ラミアはグレルだったし」
甲斐甲斐しく自分を世話する二人を見ながら、スレイナは染々と呟く。
この世界に来て神様に温かく迎えられた後に、夫達にも慰められながら色々な話をして判明したのだが、彼等はやはり転生していた。
しかも、スレイナの身近にいた人物だったのだ。
シェイドはシュエ。グレルはラミア。
二人に何で言わなかったのか聞いてみると、そろって困ったような顔をされた。
「この場所に来るまで記憶はなかったんだ」
「ビックリだよな」
シュエとグレルは苦笑いながらそう言っていた。
シェイドの父親のサリードは炎華で、スレイナの兄はルシフル。
一日だけルームメイトだったカリファさんが、サヴァーだったと気づいた時は驚いた。
スレイナがクスクスと思い出し笑いをしていると、いきなり笑いだしたスレイナを見て不思議そうな顔をする五人。
ひとしきり笑ったスレイナは、皆に笑っていた理由を教えてあげた。
「スレイナに……惹かれたのは本能だろうな」
炎華は照れながらそう言うと、持ってきたジュースをスレイナに差し出す。
そしてルシフルは、悲しそうにユリナの姿に戻ったスレイナを見つめて呟いた。
「自分は、スレイナを録に守ってやれなかった」
兄さん…ルシフルには、中学生までは守って貰ったので 十分だ。
いつの間にかユリナの姿に戻ったスレイナが、慰めるようにルシフルの肩を叩いていると、いきなり元 五番目の夫が泣きそうな声で叫びだした。
「私なんか…何にも出来ずに死んだ!!」
確かにカリファ…サヴァーは、開戦当初。予備戦闘員として基地にいた所を、ゼルギュウム国に爆撃されて死んだとサリード。いや炎華から聞いている。
この中では彼が先に死んだのだった。
カリファが最初に死に、次にラミアと兄が、そしてサリードが死に、シェイドが死んだ。
そしてスレイナは、一人寂しく死んだだけでなく、敵陣に一人残されて戦わされて死んだのだ。
仲間一人居ない状況で。
一人寂しく死んだスレイナが神の世界に戻ってきた時。先に死んでいた皆が温かく迎えてくれた。
冷えきった心を抱えて死んでいたスレイナは、前世の夫に泣きながら抱きつく。
今まで、寂しいとか悲しいとか余り考えた事は無かった。
それは、本当の孤独を知らなかったからなのかもしれない。
孤児であったオウルの時でさえ、自分には動物と言う友達がいた。
一人は楽しいけど、たまには寂しくて悲しい時がある。
そんな時だけ人に構って貰おうなんて……自分勝手だったかもしれない。
ユリナはそう思いながら。召し使いのように尽くす男達を見つめた。
「皆…いつもゴメンね…それと私を見捨てないでくれてありがとう」
「いや構わない」
「ユリナの為なら何でもするさ」
シュエが頬笑み、グレルがニカッと笑う。
他の男達も皆、嬉しそうに笑っていた。
因みに……
ややこしくなるので、ここではスレイナをユリナと言う事になった。
幾つもの名前があるが、これが気に入っているから。
回想していたユリナは、水鏡に視線を戻した。
水鏡の中に広がるのは見渡す限り砂漠。生き物どころか植物すら居ない。
「砂漠しかないね」
「いや。よく見てみろ」
シュエが指差す場所を見てみると、代わり映えのしない砂漠に植物が生えていた。
「お!あれ?でも普通の植物だ!つまらない!」
ユリナが叫ぶと、近くで見ていた神様が呆れた顔で呟いた。
「つまらないって……お前な……じゃあお前がいじくってみるか?」
「いいの!やるやる!」
そして神様に力を貰ったユリナは、ノリノリで世界を作り替え始めた。
まず。人類を作り出す為に、海には新たな生態系を作り出す。
そして上位種として、炎華の細胞をベースに海竜種族を作り出した。
数百年くらいすると、大気の状態は安定し動物がが暮らせる世界にかわる。
その頃には、海の生物が進化し両生類の様な生物が産まれていた。
海竜の因子を持つ生物は、竜族と呼ばれ比較的早く進化していったのだが、強い個体ばかりなので文化は発達せずに原始的な生活を送り、新たな人類は生物として弱いが、文化の発展が目まぐるしく大きな国や町が多くできていき、瞬く間に世界は人間で溢れ帰っていた。
しかし……このままでは、また あのような大戦が起きてしまう。
ユリナは傲慢だなと思いつつも。人間を間引く事にした。
ルシフルの細胞から、人間しか襲わない魔獣を作りだしたのだ。
それにより国は減り、共通の敵により団結し、人間同士の争いは減った。
魔獣は、神殿で清めた武器しか使えない様にして人類を操作する。
ユリナはそれからも色々と世界を作り替え、最終的に三つの国だけの世界に変えていった。
スレイナの章最終話でした。
後。一二話で終わります!
最後までお付きあい下さい。




