S級魔女
かなり長くなってしまいました!申し訳ありません!
夕方。スレイナが腹を空かして目を覚まし、むくっと起き上がると同室の三人が時計を見ながら何やら話しているのが見えた。
どうしたのだろうか?
スレイナが三人に向かって話しかけようとする前に、三人の中で一番活発そうな少女がスレイナに気づき声をあげた。
「あ!やっと起きた」
「良かった……何度声をかけても起きないかもう置いてい…コホン…さあ食堂に行きましょう」
どうやら、スレイナをどうやって起こすかを相談していたらしい。
何かの蓋と棒は良いとして、そのバケツで何をする気だろうか……まあいいか。
腹が減っていたスレイナは、ベッドから起きあがるとフラフラと立ちあがり、ルームメート三人と一緒に部屋を出て食堂に向かった。
スレイナ達三人が食堂に行くと、食堂は既に大勢の生徒で賑わっていた。
食事はビッフェ方式らしく、幾つもの大きなテーブルに美味しそうな料理がズラッと並んでいる。
三人に確認した所、かなり豪華なのに食事代は学校持ちらしい。
私が大好きな肉料理に、輸入したのかマイ料理もあった。
……じゅるり
思わずヨダレが出るくらい魅力的である。
さんざん迷い料理を選んだ後。その辺の椅子に座ろうと思ったら、ルームメートに腕を引かれた。
「行こう!皆まってるよ」
仲良く皆で食べましょうと言う事らしい。
あったばかりの人間と食事など正直。気まずそうで仕方がないが、ルームメートだし……断ると後々面倒そうなので、スレイナは抵抗する事なく大人しく彼女に従った。
少し歩いて着いた場所は、窓際にある三 四人が座れる程度の小さな丸テーブルだった。
大きな窓からサンサンと光が差しこみ、綺麗に整えられた中庭景色が見えるこのテーブル席は、かなり人気が高そうだ。
…花より団子の私には全く興味がないがな。
テーブル席には、既に他のルームメート達が座って待っていた。
二人はスレイナ達が来たのに気づくと、にこりと笑う。
多分。愛想笑いだろう…女はこうやって本心を隠すんだ…怖い怖い。
「やっときたわね」
「さあ。食べましょう」
ルームメート達がそう口にすると、四人はパクパク料理を食べ初める。
三人は楽しげに談笑し、時おり思い出したようにスレイナに話しかけてくるが、スレイナは適当に返すだけ。
色々諦めた三人は、スレイナに話を振るのを止めた。
しかし、当の本人は全く気にせずに料理を貪っていた。
美味しすぎて、手が止まらないのだ!
スレイナが至福な顔で、料理をパクパク食べていると、突然後ろから声をかけられた。
「あ!いた!リングハルトさん!」
「はい。スレイナ・リングハルトですが?」
振り向いて声の主を見ると、声をかけてきたのは知らない女性だった。
年齢からして生徒ではないので教師だろうか。
女性はホッとしながらスレイナに近づくと、一枚の紙を渡ながら話しかけてきた。
「私はセシリア・アアルバント。この学校の教師をしています。リングハルトさん。明日の朝一に実力テストをしてもらうから、明日は登校せずに制服に着替えてから寮で待機していて。七時には迎えに行くから朝食もそれまでに済ましておいてね。これはテスト範囲よ。よく確認していて」
「モグモグゴックン…はい……分かりました」
スレイナは紙を受けとり頷いた。
その後。
四人は部屋に戻り、着替えをもって一緒に風呂場にいき入浴を済ませると、談話室には行かずに直ぐに部屋に戻ってきた。
スレイナは部屋に戻って来ると、直ぐにベッドに潜り込ん……
「!!リングハルトさん!勉強しなくていいの!明日テストだよね!」
寝ようとしたスレイナを、ルームメートのカリファが慌てて止める。
たが。スレイナはベッドから動かずに目を閉じた。
「一夜漬けしても結果は変わらない……じゃあ。お休み」
数秒後。
スレイナは本気で寝てしまった。
翌日テストがあるなら普通。予習位はするものなのだが……
カリファはあきれて呟いた。
「……自信が有るのかしら」
三人は寝てしまったスレイナを起こすことを諦めて、自分達の予習をするために教科書を広げた。
翌日。
スレイナが寮で着替えて待っているとセシリア・アアルバントが約束通りに迎えに来た。
そのまま指導室に連れていかれ、スレイナは予定通りテストを受ける。
テストは、パォティス語。数学。社会。共通語。魔術学。の六科目だ。
パォティス語は古語つまり今は使われない言葉なので、地球で言う所の英語の感覚。共通語は国語のようなモノで、普段の生活になくてはならないモノだったりする。
「!!何なのこれ!」
目の前で解答用紙の採点をしていたセシリアは、採点が終るとワナワナと震えだし耐えきれずに叫ぶ。
その姿を見たスレイナは、頭をかきながらヘラっと笑った。
「やっぱり赤点でした?」
スレイナがそう口にすると、セシリアはギロッとスレイナを睨み付ける。
「社会は七十点。魔術学の八十点と共通語の六十点はまあ良いとしてパォティス語と数学は何なの!零点じゃない!」
社会のテスト範囲はそもそもその時代に生きていたから身をもって知っているし、共通語はもう何百年も使っていて体に染み付いているから、大体は分かる。
しかし数学は見ているだけで頭が痛くなるので、今まで一度も全く勉強していない。
しかもパォティス語は、パォティスに転生するまで全く知らなかった。
なので、一から勉強しないといけなかったのだが……人生に必要性は無いとサボッた。
魔術学は、教科書の学者言葉を読んでいると詞のようで面白いので教科書を読むのが楽しいので、悪くない成績が取れた。
なので、私の成績はかなり片寄っている。
他が良くても、数学とパォティス語のせいで成績が平均を大きく下回る。
なので、馬鹿学校しか受からなかったのだ。
「……数学の先生とパォティス語の先生を呼んでくるわ。待っていなさい」
先生は、呆れた顔をしながらそう口にすると立ち上り扉に向かった。
……逃げちゃおうかな……
「言っておくけど、逃げたら山ほど課題をだすからね」
……バレている…
スレイナは、冷や汗をかきながら暇潰しに机の傷を数え初めた。
数分後。
セシリアと、何やら教材を持ったパォティス語と数学の先生が指導室の扉を開けた。
三人は指導室に入ると、直ぐにスレイナの解答用紙を確認した。
「……これは酷いな」
「こっちは計算した形跡すらないな」
教師二人は、ギラつきいた目でジロっとスレイナを凝視した後。ため息混じりに呟く。
「「骨が折れるな」」
スレイナは教師二人の気迫に怯えながら、渡された教材を広げた。
数時間後。
寮に帰ってきたスレイナのルームメート達は、異様に暗いスレイナを心配して遠慮がちに声をかけた。
「リングハルトさ……うわっ何?この課題の量」
「……寝る……もう嫌だ」
スレイナは、山のような課題を見て死んだような目をして遥か彼方を見つめた後。ノロノロと立ち上りベッドに向かう。
そしてスレイナは、パジャマに着替えすらせずにベッドにもぐりこんだ。
その姿を見た面倒見がいいカリファは、課題とスレイナを見比べると、慌ててスレイナのベッドに近づきスレイナを揺する。
「これ 提出日は何時なのよ!起きなさいったら!」
「寝る!疲れた!」
スレイナは、揺するカリファの手を引き剥がすと、ヤケクソ気味にそう叫び布団を頭から被って寝息をたて初める。
「え!寝てる!ちょ!リングハルトさん!」
アメリアとラタリアは呆れ顔をしながら、スレイナを放置し自分達の課題をはじめた。
翌日。
スレイナが起きない。
大声で呼んでも揺すっても叩いても起きず、諦めてカリファ達が朝食を食べて戻って来ても起きなかった。
暫く放置してみたが、スレイナは全く起きない。
流石に、もう起きないと授業に遅刻してしてしまう。
慌てたカリファは、激しくスレイナを揺すった。
「リングハルトさん起きて!リングハルトさん!」
「アメリア!諦めて行くわよ!私達が遅刻するわ!」
「でも……」
「先生に訳を話しましょう!行くわよ!」
人が良すぎるカリファを宥めたアメリアとラタリアは、遅刻しないように全速力で教室に向かう。
息を切らして教室に飛び込んだ三人は、結局遅刻してしまった。
授業はまだ始まってなかったのだが、先生がくる前に席につく決まりなので、先生が来ている時点で遅刻だったのだ。
「三人とも遅刻ですよ!あら?転入してきた方は?」
セシリア先生は、スレイナもルームメートである彼女等と一緒にいると思っていたらしい。
カリファ達は、困り顔で事情を説明した。
事情を聞いたセシリアは、ハーと深いため息を吐くと生徒に向かって口を開いた。
「分かりました。貴方達!少し自習していてください!」
セシリアが急いで教室を出て職員室に行くと、職員室にいた教師達が慌てた様子のセシリアに驚いて何事かと立ち上り駆け寄った。
「アアルバント先生!どうしました!?」
セシリアは授業の予定が書いてあるホワイトボードを確認してから、話しかけてきた教師に近づいた。
「リングハルトさんがどうやっても起きないらしいので、起こしてきます。ライムント先生には自習の監督を頼みたいのですが……」
ライムントは 今日。午前中の授業がない。
午後の授業の準備はもう終わっていたので、ライムントはコクリと頷いた。
「分かりました。直ぐに行きましょう」
セシリアから、出席を確認するファイルを受け取ったライムントは教室に向かい、ファイルを渡したセシリアは女子寮に向かう。
スレイナの眠る部屋につくと、セシリアはドアをノックする。
五分。十分叩き続け、いい加減手が痛くなってきたセシリアは行儀が悪いと思いつつも無断で扉を開けた。
「リングハルトさん。リングハルトさん!入りますよ!」
部屋に入ると、一つのベッドだけ人形に膨れている。
セシリアはそのベッドに近づき、布団を日っぺがした。
「リングハルトさん!リングハルトさん!スレイナ・リングハルト!起きなさい!起きなさい!お・き・な・さ・い!!」
暫く叫んでいると、スレイナはノロノロと起き上がった。
「……うるさいな……起きるよ。起きればいいんでしょ」
心底嫌そうなスレイナの態度にぶちギレたセシリアは、スレイナを怒鳴り付ける。
「スレイナ・リングハルト。直ぐに着替なさい!今すぐ!」
スレイナは一応制服をきていたのだが、制服のまま寝ていたので制服がシワだらけになっていた。
とても人前にはだせない。
セシリアは、スレイナの名前が書かれたクローゼットから替えの制服を取り出すと、無言でスレイナに差し出した。
スレイナは、大人しく制服を受けとるが動かない。
セシリアが不信に思い顔を覗き込むと……
寝ていた…寝るな!!
あの後。
セシリアはスレイナを無理矢理起こし、着替えさせてから机の上にあった課題を持たせて指導室に向かう。
指導室に来ると、課題を出した教師達が待っていた。
どうやら他の先生方から話を聞いたらしい。
課題の進み具合を見ていた教師はため息をついた。
「課題は一枚も終わってないな」
「ヤル気が無いのか!!」
刑事の尋問の様に教師が怒鳴ると、スレイナはキョトンとした目で教師を見上げた。
「え?無いですよ?有るわけ無いじゃん」
「!貴様」
スレイナの態度に激昂し初めた教師を放置し、他の教師達はコソコソと話し合いを初めた。
「……どうする」
「彼女を改心させるのは無理さうだ。校長の指示を仰ぐぞ」
そうして先生方が校長室に校長を呼びにいき、暫くして校長先生を連れた教師達が指導室に戻ってきた。
指導室に入ってきた校長は、スレイナ近づくとにこりと笑う。
「初めまして。私は校長のサリード・ライムント。君がスレイナ・リングハルト君だね」
「はい……」
校長に問われ頷きかけたスレイナは、次の瞬間。校長を睨み付けた。
「……くっ……噂以上か流石だ」
突然ふらついた校長に、教師達は驚いたように目を見開く。
訳がわからないと言った感じで教師達は固まり、シェイドだけはいち早く復活し校長に駆け寄った。
「父上?」
シェイドがそう言って、校長を心配そうに見る。
似ているから親類だろうなと思っていたら、親子だったらしい。
「学校では校長だ。スレイナ・リングハルト。君の課題とテストは免除しょう。代わりに君には直ぐに入隊してもらいたい」
「「「校長!」」」
教師達は、校長の言葉に驚愕する。
スレイナはまだ十五歳。未成年者なのだ。
「国王陛下が決意なされた。我 パォティス国は今日。ウイング国に宣戦布告したのだ。戦争が始まってしまった。S級全てに出陣命令が出ている。私と勿論シェイドにもね」
校長がそう言ってシェイドを見ていると、セシリア達が声を荒らげた。
「そんな!彼女はまだ学生ですよ!」
「戦いかたすら学んでいません!」
貴女も何とか言いなさいと睨まれたスレイナだが、諦め顔で深く頷く。
権力者に抵抗するだけ無駄だろう。
「……強制なら仕方ない」
「!リングハルトさん!」
「では軍の本部に行こう。服装はそのままで良いですから。シェイドも来なさい」
スレイナは嘆くセシリア達の声を背中で聞きながら、ライムント親子に着いて軍学校を後にした。
軍の本部に着くと、既にスレイナの事は通達されていたらしく直ぐ様 試験会場に連れていかれる。
軍の最新鋭の機械でスレイナの魔力を計ると、歴代最高位の魔力が判明した為。実技試験をする事なく 合格してしまった。
そして、直ぐ様入隊登録をされたスレイナは、軍服に着替える。
着替えると、お偉いさんが沢山いるホールでスレイナ一人のための入隊式が行われた。
最後に、国防長官に立派なバッチをつけられると国防長官は、通信魔術に向かい叫ぶ。
「スレイナ・リングハルト。貴殿をS級として認める」
今。ここに。最年少のS級魔女誕生した。
対に魔女になりました。
次がスレイナの章。最終話です。
目指せ孤独死はあと一章で終わる予定です。
当初 私が考えていた終わりかたとは、少し違ったモノになってきました。自分でもどうなるか予測できないかもしれません。




