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目指せ孤独死!御一人様!!  作者: 柳銀竜
王子シリウス
41/55

結局……

色々入れたら、かなり長くなってしまいました。


シリウスの死因は本編で。

 

 マグダリア王の離婚騒動から数年間。


 マグダリア王は、王妃の仕出かした様々な案件の事故処理に追われ、引退どころではなくなった。


 直ぐに引退出来なくなったマグダリア王は、一筋の不安を感じてアルカスにシリウスの様子を訪ねてみる。


 すると…やはりというべきか……


  シリウスは即位まで時間的な猶予が出来た事で、王にならなずに済むように悪あがきを秘密裏に始めているらしい。


 自分の評判を落としたり、逆にアリシオンスの評判を上げたりが主な行動だが、ほっとくと何をするか分からない。


 なのでマグダリア王は、シリウスに無理矢理。王太子がするべき仕事を割り振った。


 当然。


 シリウスは、やりたくない!!と渋る。


 しかし、それくらいでマグダリア王は引き下がらない。


 マグダリア王は、シュナや侍女達からシリウスの性格を聞き、一番効果のある言葉を探して、シリウスを説き伏せた。


 この仕事をしないと民が苦しむとか、王子としての責任を果たさないのか等。色々な良心を刺激する言葉で説得されたシリウスは、結局のところ……割り振った全ての仕事をこなした。


 マグダリア王も初めは即位までの時間稼ぎのつもりだったのだが……シリウスは、割り振ったマグダリア王本人でさえ驚く程の有能ぶりだったのだ。


 何故。シリウスがそこまで有能かと言うと、前世での知識が関係していた。


  シリウスは、転生する度に施政者として働いてきた。


  その時の知識と、日本人としての知識のお陰で全てをそつなくこなせている。


 その上、毒蛇の兄弟達の協力と、臣下に下ったアリシオンスの補佐があったモノだから、次々に問題を解決してしまっていた。


 シリウスが民に慕われ、貴族達まで崇拝してくる様になってきた所で、シリウスは焦り出す。


 焦ったシリウスは、何とかアリシオンスを王子として復権させようと試みたのだが……無理だった……


 本人が拒否しているので、どうしたって無理だ。


 シリウスはどうしようも無くなり、なげやりな気持ちで毎月城で開かれる舞踏会に参加していると……


  幼馴染みの伯爵令嬢と公爵令嬢。ケントルムの末姫様達を見つけた。せっかくなので、彼女達にも相談してみる。


 シリウスが深刻そうな顔で彼女達に相談すると、彼女達は何故か顔を見合せ可笑しそうにひとしきり笑うとシリウスに近づいて来た。


 末姫様にいたっては、シリウスの腕に手を絡めてくる……何か嫌な予感……


「アリシオンス様が王になる手助け等……私達がするわけが無いでしょう?」


「同意見ですわ」


「逃がしませんわよ。シリウス様」


 シリウスは彼女達の台詞に、目を見開いて涙ぐむ。


 やっぱりか!!


 シリウスはこの時。王位からは逃げるのは無理だと覚った。


 実は彼女達は、バルトリーグの妃候補として幼い頃から度々城を訪れていたのだが、 バルトリーグの余りに酷い性格に逃げ出し、いつもシュナの離宮に隠れていた。


 その時に、離宮で暮らしていたシリウスと出逢い。シリウスの人となりに惚れてしまい、彼女達は長年 彼の妻の座を得ようと水面下で争っていたのだ。


 しかしシリウスは争いを嫌う。


 なので、シリウスにバレて嫌われないように気を付けながら、美しさを競い合っていた。


 そんな中。シリウスが王太子となると言う話が持ち上がった。


 バルトリーグとアリシオンスが失脚したのだ。


 その話を聞いた三人は狂喜乱舞し、必死に貴族達にシリウスの素晴しさを吹き込み、シリウスが王太子になれるように全力押しした。


 何故。彼女達がそこまで喜んだかと言うと、マグダリア王国では王と王太子に限り一夫多妻が許可されるのが理由だ。


 シリウスが王になるなら、全員妻になれる。


 長年決着が付か無かった三人は、全員妻になれると涙を浮かべて喜んだ。


 因みに正妃は、一番身分の高いケントルムの末姫様であるセレナーシア。


 公爵令嬢のリシアンヌと、伯爵令嬢のサリアが側妃となる事で話はついている。


 マグダリア王にも話を通しているので、もう確定と言っていい所まで話は進んでいた。


 しかし彼女達三人は、シリウスの気持ちを無視しているわけではない。


 両親やマグダリア王に話を持って行く前に、彼女達はシリウスに三人の誰と結婚したいか聞いてみたのだ。


 すると彼はこう口にした。


「出来れば、結婚したくないな……面倒そうだし」


 その一言で、彼女達はシリウスと無理矢理にでも結婚することに決めた。


 人生に疲れたような目をする彼を、三人がかりで幸せにするのだ!


 三人は決意を新たに、そして強い絆を結んだ。

 

 そしてマグダリア王は、元々彼女達を次期王の妃にと考えていたので、彼女達をシリウスの妃にする事に欠片ほどの問題も無く婚約はトントン拍子に進んでいった。



 それからシリウスの母シュナは、アルカスの義父の養子になり、ウイング家の一員になるとマグダリア王は彼女を王妃に据える。


 母親が王妃ならと最後まで渋っていた貴族達にシリウスは認められてしまい、翌年。シリウスは正式に王太子になってしまった。


 シリウスが王太子になると、待ちきれなくなったセレナーシア達はワッと城に押し掛けてきた。


 とりあえず。三人と婚約だけはしていたので、急ピッチで式の準備を終わらしシリウスは彼女達と盛大な結婚式を上げた。


 そして結婚した次の年には、シリウスは三人の子持ちになってしまう。


 夜は基本三人で過ごしていたせいか、三人は同じタイミングで妊娠してしまい、セレナーシアの息子が最初に生まれ、サリアの息子が次に生まれ、最後にリシアンヌの娘が最後に生まれた。


  生まれた時刻は、数分違いだった。


 そして出産は、不公平にならないように三人の意向で同じ部屋で行われ、シリウスは半強制的にその出産に立ち会い一仕事終えた妻達を労った。


 それから数年。


  シリウスは渋ったが、結局。王になることを受けいれ、戴冠の儀式を経て正式にマグダリア王に即位した。


「結局俺が即位するのかよ!」


「お前以外に誰がなれる!私も宰相として力をつくそう」


 儀式が終わり、豪奢な重たい衣装を引き釣りながら先代の王も使っていた私室に戻ると、シリウスは重たい上着を椅子に引っかけ、ソファーに寝転び悪態をつく。


 そんなシリウスに苦笑いしながら、最年少で宰相まで上り詰めた義兄であるアリシオンスは、脱ぎ捨てられた衣装を侍女に片付けるように命じて、宰相らしく明日の予定を話始める。


 先代のマグダリア王はと言うと、シリウスが即位して直ぐに田舎に屋敷を構え、逃げるように急いでシュナと共に隠居していった。






「……あのクソジジイ!!」


 先代のマグダリア王が田舎に引っ込んだ数日後。


 シリウスは、執務室の机をバン!と机を叩き鬼の形相で立ち上がる。


 そんなシリウスに、隣で種類整理をしていたアリシオンスが目を見開いて駆け寄った。


「シリウス!?どうした?」


「あの野郎…大事な仕事を残して行きやがった」


「?……ああ……だがシリウスがすれば良いんじゃないか?」


 アリシオンスは、そう言いながら机の上でシワだらけになっている書類から目をそらす。


 アリシオンスはシリウスの気持ちも分からないでも無かったので、シリウスを直視できなかった。



「ケントルムの王との関税やら何やらの話だぞ!先代のケントルム王とならこっちが有利になるように持っていけるが、当代はねちっこいし俺にケチをつけたくてしょうがない奴だぞ!先代の時に話をつけとけば楽だったのに!」


「まあ……愛しい妹を奪われてるからな……セレナーシア様もバルトリーグを嫌っていたし簡単に連れ戻せると思っていたら、シリウスにべったりだからな……まあ……仕方ないだろう……諦めろ」


「畜生!!」


 それから怒鳴り散らすシリウスを、アリシオンスは哀れんだ目で見守った。


 シリウスは全力で怒っても、数分も持たないので仕事に差し支える事はない。


 アリシオンスは、怒鳴るシリウスの声を聞きながらさりげなくシリウスの執務机に書類を追加した。



 数日後。


 予定通りケントルム王がマグダリア王城をに来ると、ケントルム王と従者達を客間に通し、彼等が荷物を置いた後で文官を迎えに行かせて会議室に案内させた。


「これくらいでどうだろうか?」


「高いな。我がケントルムは農地に向かない土地でな。其ほど裕福ではないから無理だ。安くしろ」


 ケントルム王の傲慢な台詞に、シリウスの頬がヒクっとヒクツいた。


「……鉱物が豊富に取れるだろう。この金額なら、農民でも払える筈だ」


 ケントルム国内の経済情報は、文官や毒蛇達に頼んで調べたので確実だ。


 シリウスの言葉に間違いはない。


 しかし、ケントルム王は溜め息を吐いて頭を振った。


 かなり嫌みな態度だ。


「高圧的だな。セレナーシアも、こんな夫では泣き暮らしている事だろう。可愛そうに……」


 ケントルム王が目元を隠す仕草をした瞬間。


 バン!!と勢い良く会議室の扉が開き、美しい女性が飛び込んできた。


「お兄様!」


「セっセレナーシア?!シリウス!貴様!」


 鬼の形相で会議室に乱入して来た女性は、王妃セレナーシアだった。


 最愛の妹に何を言ったんだと、ケントルム王はシリウスを睨む。


 濡れ衣だ。


 シリウスは、会議室にセレナーシアを呼んでない。


 シリウスが困惑しながらセレナーシアを見ると、セレナーシアの後ろからアリシオンスが資料を持って入って来た。


 セレナーシアを連れてきた犯人は、アリシオンスらしい。


 シリウスがアリシオンスを軽く睨むと、事態を察したアリシオンスがケントルム王に頭を下げた。


「?ああ。ケントルム王陛下。セレナーシア様をお招きしたのは私です。シリウス様の指示ではありません」


「何で……」


「お兄様がシリウスに絡むからよ!王として以前に男らしくないわ!そんなお兄様なんか嫌いよ!」


 アリシオンスが答える前に、セレナーシアがケントルム王に詰め寄る。


 ケントルム王は泣きそうになりながら、椅子に座ったままセレナーシアを見上げる。


「セレナーシア!セレナ!すまん!謝るから!」


「シリウスに謝りなさい!」


 ビシッとセレナーシアに言われてケントルム王は、シリウスを忌々しげに睨みながら椅子から立ちあがりシリウスに深く頭を下げた。


「すまなかった。謝る」


「別に構わないのでコレにサインしてください」


 ケントルム王はセレナーシアに睨まれ、渋々ながら書類にサインした。


 実はこの関税はケントルム王にとって大した問題は無い。


 ケントルム王が無理矢理にでもシリウスにケチをつけたのは、理由をつけてマグダリア王国に居座るためだ。つけて


 勿論。妹姫セレナーシアと少しでもふれ合う為に。


 それから数か月。


 ケントルム王は、鬼の形相の王妃が迎えにくるまでマグダリア王国に居座った。


 それから数十年。


 シリウスは、奴隷やそれに近い扱いをされる者が出ないよう、法改正や納税の仕方を改めて、王立の孤児院を作り、様々な仕事を割り振り孤児達が自立できる様に手助け等を中心に活動した。


 シリウスは長年国のために働き、玉座を温め体の衰えを感じた頃に息子に位を譲った。


 晩年は母と過ごした離宮にこもり、三人の妻と毎日押し掛けてくる子供達と孫達の相手を適当にしながらだらけた毎日を過ごした。


 リシアンヌが五十代の頃彼女は風邪をこじらせ肺炎になった。


「リシアンヌ。大丈夫……じゃないよな。シナヨ食べないか?」


「ありがとうございます。シリウス様。頂きますわ…ゴホゴホ……」


 シリウスは咳き込み出したリシアンヌの背中を擦る。


「ありがとうございます……シリウス様……私…幸せでしたわ。貴方様の妻になれて……」


「側妃なのにか?」


「クスクス……ゴホゴホ……シリウス様は私達を分け隔てなく愛してくださいましたわ。普通は偏るモノなのですよ?気を付けても……シリウス様はものぐさな割には私達を良く気遣ってくださいましたわ……本当に幸せな……」


「リシアンヌ……」


「もう少し……もう少しだけ独占させてくださいな……」


 シリウスは弱ってしまったリシアンヌを、割れ物を扱うように優しく抱き締める。


 扉の向こうにはセレナーシアとサリアがいるが、気をきかせたのか二人は室内に入ることは無かった。


 その三日後。


 リシアンヌは、シリウス達に見守られながら息を引き取った。


 その数年後。


 今度は、サリアが病を患ってしまった。


「サリア。気分はどうだ?」


「シリウス様……今日は少し気分がいいですわ」


「シナヨ食べるか」


 シリウスがそう言うと、サリアはクスクス笑い出す。


「クスクス……申し訳ありません。リシアンヌ様にもシナヨを進めていましたよね……思い出してしまいましたわ」


「シリウス様……私は半分諦めてましたのよ?だってリシアンヌ様公爵令嬢で、セレナーシア様にいたっては王族でしょう?だからさりげなく助けるだけで思いを押し込めていたんですの……そしたら、セレナーシア様とリシアンヌ様にバレてしまったんです……可笑しいですわよね……シリウス様には気付いて貰えなかったのに……」


「え?そうなんだ……知らなかったよ……」


「私は諦めた夢がかなって幸せですわ……子供に孫までいて……」


 それから一週間後。


 サリアはベッドの中で、静に息を引き取った。





 リシアンヌもサリアも死んで、十年以上たった頃。


 庭園で昼寝をしていたシリウスの横に、セレナーシアが腰かけた。


「セレナーシアか。どうした?」


「クスクス。いえね、歳を取ったなと思ったのよ。お互い」


「そうだな……お互いシワだらけ……でもないか」


 今年。八十代になったセレナーシアは、五十代と言っても分からないくらい若さを保っている。


 しかし、手足は病的に細くなり顔色も悪い。


 部屋からここから歩いてきただけで辛そうにしている。


 若く見えるセレナーシアも、確実に衰えていた。


 シリウスがノソッと起き上がると、セレナーシアがシリウスに甘えるようにもたれ掛かってきた。


 シリウスは、そんなセレナーシアを避けたりはせずにやりたいようにやらせて上げた。


「シリウス様……愛しているわ……貴方はリシアンヌもサリアも私も分け隔てなく愛してくださいました。喧嘩をすればトコトン理由をきいてくださいましたね。素直になれない時に聞くから益々腹立たしい時もありましたけど…貴方は…聞いてくれましたわ。私達を必死で理解しようとしてくれた…何に怒り……何に悲しみ……何に喜ぶか……王としての責務も忙しいのに」


「後回しにすると拗れるからな…」


「フフフ…貴方は平和が大好きですものね」


「当たり前だよ」


 シリウスはそのまま、ギュッと妻を抱き締めた。


 その翌朝。


 シリウスの隣で。セレナーシアは冷たくなっていた。


 老衰だ。


 冷たくなっていた彼女の顔は…


  幸せそうに微笑んでいた。




 そのさらに一年後。


 シリウスにも死期が訪れた。


 シリウスの最後は、沢山の子や孫。曾孫に囲まれた賑やかなモノで、皆に惜しまれながらシリウスはシリウスとしての生涯を閉じる。

 

  お一人様には慣れなかったけど、とても楽しく幸せな人生だったと笑いながらシリウスは神の世界に旅立った。




シリウスの死因は老衰でした。

段々と家族もイイモノだと思い始めています。

次回がシリウスの章、最終話です。

後、二章位で終わらせる予定です。

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