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目指せ孤独死!御一人様!!  作者: 柳銀竜
王女ミリアンナ
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貧民街

第四話です!


 

「へー。ここが貧民街か…何か臭くない?」


 庶民が行き交う街から薄暗い貧民街に入ったミリアンナは、鼻をヒクヒクさせががら、前世を思い出していた。

 近所の親戚の家が汲み取り式の古いトイレ…よく言うボットントイレと言うモノで、そのトイレの臭いと、今 回りにたちこめている嗅いがそっくりだったからだ。


 しかも…牛舎や養豚場の匂いまで混じった感じで、かなりきつい臭いがたちこめている。


「排泄物は垂れ流しですし、体を洗う余裕も気力も無いですからね…ってミリアンナ様!! 」


 嫌な顔をするミリアンナの横で、エレナが回りの地面に寝転んでいる老人や、今にも崩れそうな建物にのし掛かかりながら、力無くうずくまっている痩せ細った若者や子供を、チラチラ見ながら小声でミリアンナに説明する。


 ここに立っているだけで、回りから警戒するような視線を感じのだ。


 立ち上がる気力もない癖に、目線だけは異様に鋭くて、エレナはかなり身の危険を感じた。


 恐怖で顔を強張らせるながら、エレナはミリアンナにそう説明しつつ、ミリアンナをグイグイと街の方に引っ張る。


 エレナは、かなり危ない上に不衛生なこの場所から離れたくてしょうがない。


  だが、ミリアンナはエレナの気持ちをくむ気の無いらしい。


  ミリアンナはエレナが引っ張るのを完全無視して、直ぐ近くの建物に背中をつけて座り込んでいる、小枝のように痩せ細った少年に話しかけた。


「オーイ!! ちょっと話をしないかい? 」


「え! ミリアンナ様?! ちょっ! 危ないですよ! 」


 エレナは、いきなり目の前の少年に話しかけたミリアンナに驚ながら、ミリアンナを庇うように前に回り込んだ。


 この少年はかなり飢えていて、何をするか分からない様子だ。


 危険な行動をするミリアンナを、エレナは必死で止めるが、ミリアンナはそれを無視して無理矢理エレナの前に出る。


 ミリアンナはエレナの前に出ると、少年の顔を覗きこんだ。


「何だよお前!! 」


 直ぐに立ち去るだろうと、成り行きを見ていた少年は、ミリアンナが かなり近い場所まで近づいてきた事で、瞳に警戒心を宿らせて立ち上がる。


 そして、少年は威嚇する様にミリアンナを睨み付けた。

  ミリアンナは警戒心の強い野良猫のような少年に、ニヤリと笑いかけると、残っていたもう一本の串肉を少年に差し出した。


「串肉を一本やるから、貧民街について教えてくれない? 」


「ミリアンナ様?! ちょっと!! 」


 二人のやり取りを聞いていたエレナは、悲鳴のように叫ぶ。

 そして、エレナはガクガクとミリアンナの肩を揺らした。


 だがミリアンナは、半狂乱になっているエレナを軽く放置して、少年と話 続ける。


「何を話せばいいんだよ! 」


 少年は余程飢えていたらしく、ミリアンナが差し出した串肉を奪うように受け取り、モグモグと咀嚼しながらミリアンナに質問した。


 それを見たミリアンナは、楽しそうな顔で。少年に質問を始めた。


「流民の数はどれくらい? 後、貧民街ってボスとかいる? 」


「流民って数なんか分かんないほどいるからな…あっ!ボスならいるよ。竜胆っていう人!!すっげぇ美人ですっげぇ怖いんだよ」


「怖い?」


 怖い…それを聞いたミリアンナが、色々な怖い女を想像していると…


 串肉を咀嚼していた少年が、少し顔を青ざめながら言いにくそうに口を開いた。


「あの人を 妾にしようとした貴族が…なますぎりにされてたんだ…」


「…うっわぁお…コワッ!! 」


 なますぎり?! やりすぎだよ!!


「早く帰りましょう!! ミリアンナ様! 」


 こんな怖い所から早く出たい!! と泣きそうになっているエレナに、ミリアンナはコクリと頷いた。


「うん。じゃあね少年」


「ああじゃあな!!」


 肉を貰った事で心を開いた単純な少年は、笑顔でバイバイと手を振ってミリアンナ達を見送ってくれた。

 ミリアンナは、その姿を可笑しそうに笑いながら貧民街を後にした。




 ミリアンナとエレナが、貧民街を出て街に戻ってくると、ミリアンナは直ぐ後ろで安堵のため息をつくエレナに、無邪気な笑顔を向けながら腕を引っ張る。


「じゃあ買い物するよ! 」


「え!! 帰らないんですか! 」


 もう城に帰るとばかり考えていたエレナは、疲れたようにため息をついた。

 ミリアンナに、何を言っても無駄らしい事は痛いほど理解出来たので、エレナは大人しくミリアンナに従う。

 そんな、諦めモードのエレナの腕をミリアンナは引っ張りながら、服を売っている店を指差した。


「あれ。古着屋さんかな? 」


「…そうですね…布ではなく服を売ってますから…古着屋ですね…」


 もう…何も考えたく無くなって、なされるがままになっているエレナがそう言うと、ミリアンナはエレナから手を離し、楽しそうに店に入って行った。


 エレナは、楽しそうに店に入って行くミリアンナを眺めながら見ながら、ハッと我に返る。


 ああ!! 普通に置いていかれたぁぁぁ!!


「待ってください!! ミリアンナ様! 」


 エレナが慌てて店に入ると、ミリアンナは既に幾つもの商品を抱えた上に、色々な商品をじっくり品定めしながら、ブツブツと呟いていた。


「んーこれと、これと、これと、これ。針と糸と毛糸にリボンに箱っと」


「いくつ買うんですか!! 」


 ミリアンナに追い付いたエレナの手には、いつの間にか多くの商品がつまれている。


 ミリアンナは、エレナが追い付いてきた事に気付くと、これ御願い。と言って次々に品物を乗せていったのが原因だ。


 返事をする前に積まれてしまった荷物で、既に前が見え無くなっている。


 いつの間にか荷物持ちにされていたエレナが、もう持てないと言いたげに叫ぶが、ミリアンナは全く気にしていない。


 そして、ミリアンナは 粗方 目的のモノ集め終わると、よし!! と頷き会計に向かった。


 会計に向かうミリアンナを見たエレナは、良かったと思いながらも帰りの道中を憂いた。


 これを持って帰るのか…と。


「おっさん!!お会計」


 ミリアンナが、自分が持っていた少量の品物を店主の前に置く。


 そして、エレナも持っていた大量の品物を机に置いた。


 店主は、目の前に置かれた品物を全て確認してから、エレナに金額を告げる。


「銀貨一枚だ」


「ほい。」


「!!…まいど…」


 大人であるエレナが金を出すモノと決めつけていたおじさんは、ミリアンナが支払いをしたことに驚いた。だが、金は金。


 誰が払おうと、金には違いないとおじさんは深くは聞かずに代金を受けとった。


 会計が終るとミリアンナ達は、この店で今 外の品物と一緒に買った袋に、品物を畳んで詰める。

 そして、荷物をエレナと二人で分けて持つと、二人は仲良く店を出た。


「よし! じゃあ また 貧民街に行くよ!」


「え! ミリアンナ様!! 」


 エレナは、分けがわからない!! と言いたげにミリアンナに叫び、彼女を止めようとするが、既に駆け出したミリアンナは全く聞いてくれない。


 そんな無駄に元気なミリアンナを、エレナは仕方なく彼女を追いかける。


 死ぬほど重い…大きな袋を抱えながら…




「よう。少年!」


「あっ! また来たのか、姉ちゃん! 串肉くれるのか! 」


 エレナを放置したミリアンナが、再び貧民街に戻ると先程 肉をあげた少年が、嬉しそうにミリアンナはに近づいてくる。


 ミリアンナは、そんな少年を冷たく見つめると、少年にピシャリと言い放つ。


「甘えるなよ。串肉をやったのは私の気まぐれ…毎回やるわけ無いじゃん。

 ホレ。今回は これを持ってきてやったぞ」


 何もやるわけがない。と言った癖に品物を差し出すミリアンナ。

そんな支離滅裂で横暴なミリアンナに対し、少年は言ってる事とやってる事が違うなと、呑気に首をかしげながら貰った袋を開けてみる。


「何コレ…はあ? 服? 食い物のほうが…ムグッ!! 」


 少年が、こんなの要らないと口にしようとした瞬間。


 ミリアンナはさっと近づき、少年の口をガシッと掴む。

 そして、ドスの利いた声で少年の顔面に囁いた。


「黙れ餓鬼。これはコレから始める商売の商品になるもんだ。良く見てろよ」


 少年…餓鬼はウンウンと涙目で頷く。


 お前と俺…そんなに歳は変わらないだろう。とは思っても口にしない。


 言えないくらい…威圧してくるミリアンナの目は、少年にとって怖かった。


 ミリアンナはウイング伯爵家の当主として、そして領主として生きた人生の中で、何度も領地に害をなす老害達を相手にしてきた。


 なので、貧民街の少年を威圧する位朝飯前だ。


 ミリアンナは少年を黙らせると、その場にしゃがみこんで、作業を開始した。


 彼女はまず始めに、カラフルな服を長方形に切り、それを斜めに切って細長い台形の布を幾つも作る。


 それを半分に折って、クルクルと巻き、根本を縫い止めた。


 そして、緑の服の切れ端を折り紙の手裏剣みたいな形に折り、先程のモノに縫い止めて、形を整える。


 すると、布の薔薇が出来上がる。


 それを、可愛いリボンに縫い付けると薔薇の飾りが付いた髪飾りが完成した。


 そして、同じ要領で紫陽花の様な小さな花を一つ作る。

 全て作り終わると、フーと疲れたように息を吐き、ミリアンナは目の前に立っている少年をジロリと見上げた。


「作り方分かった? 」


「うん。見た目 凄いのに…結構簡単だな…」


「そう…はい。作って見て」


 ミリアンナが、少年に布と道具を渡しながらそう言うと、先程の威圧ですっかり怯えた少年は、困惑しながらもそれを受け取る。


「え! はっはい! わかりました! 」


 そして、少年が試しとばかりに作ってみると、彼はかなり器用だったらしく、ミリアンナが作ったモノよりかなり綺麗な花ができた。


 ミリアンナは、できあがった花をくまなく見ながらウンウンと頷く。


「うん。上出来。また明日、同じくらいの時間にここに来るから、同じ要領で。そして、あんたなりに工夫を凝らしたモノを作れるだけ作っておきなさい。作っていなかったら…分かるよね? 」


「はっはい。わかりました! 」


 少年を睨み付け、ちょっと魔力もプラスして威圧する。

 すると、少年は首降り人形のように縦に激しく首を振った。


 ミリアンナは、少年の反応に満足したように頷くと、立ち上がる。

 そして、ミリアンナの威圧にビビって震えているエレナに笑いかける。


 ミリアンナの、子供らしい無邪気な笑顔を見たエレナは安心したように、ホッと息を吐き力無く微笑んだ。


「よし。じゃあ帰ろうか」


「はい」


 そして、ミリアンナの気が変わらないうちにと、エレナは急いで城に戻る。

 城に戻ると、ミリアンナは再びエレナの外套に隠れて、待ち合わせに使った部屋に戻った。

 そして、再びドレスに着替える。

 着替えが終わると、廊下に誰も居ないことを確かめてから廊下に出た。

 そしてミリアンナは、室内にいるエレナに楽しそうに笑いかける。


「じゃあまたね。」


 そのまま去ろうするミリアンナの腕を、エレナはガシッと掴む。

 そして、真剣な目でミリアンナの目を見つめた。


「姫様!! 無理矢理にでも休みを取りますから、絶対一人で行かないでください!! 絶対! 絶対に行かないでくださいね!! 」


 ミリアンナは、エレナにガシッと腕をつかまれたまま、怖い位に念押しされた。


 エレナは、かなり心配しているみたいだ。


 ミリアンナは…何か怖くて、ついつい敬語になる。


「はい! わかりました!」


「では、また同じ時間ですよね? 」


 エレナは、ミリアンナの返事に安心したように頷くと、掴んでいたミリアンナの腕を放した。


「うん。また明日 ここでねお休みなさい。エレナお姉さん」


「はい。おやすみなさい ミリアンナ様」


 ニコニコと笑うエレナに軽く手を振ると、ミリアンナは誰にも見つからないように、物陰や柱に隠れながらこっそりと、自室に戻ると窓から入る。


 ミリアンナは部屋に戻ると、ソファーに寝転んだ。


 …今日はかなり疲れたな…


四話でした!

次回。ミリアンナは、大変な事になります!

次回も宜しくお願いします!!

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