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目指せ孤独死!御一人様!!  作者: 柳銀竜
王子シリウス
30/55

アリシオンス

今回は長くなってしまいました。

シリウスの兄その1が登場します!

 

 月すら出ない…真っ暗闇に支配された真夜中。


 シュナがグッスリ眠っている離宮の寝室の窓を、黒装束の男達が音も無く開ける。


「!!」


 シュナの寝室に侵入しようとした男達は、窓を開ける寸前に音も無く中庭に転げ落ちた。


 降りたのでは無く、落ちたのだ!にも拘らず無音。


 黒装束の者達は見つかった事よりも、自分達の回りで音がしない事に一瞬驚き、瞬時にそれが魔術である事を見抜いた黒装束の者達は、術士を警戒して身構えた。


 だが…


 既に遅かった様で、彼等の体は一ミリも動かなくなっていた。


 口すら動かせないので、黒装束の中に二人いた魔術師も何も出来ない。


 そんな彼等を嘲笑うかのように、ニヤニヤしながら一人の少年が暗闇から顔を出した。


「初めまして。俺は君らが暗殺しようとした女性の息子だよ。これを飲んで?あれ?飲まないなら…こうだ!」


 シリウスは、口を閉じることすらできなかった黒装束の男の一人に狙いを定め、紫色の液体が入った薬瓶の口を男の口に注ぐ。


 だが、男は飲み込まない。


 それに焦れたシリウスが、男の顔を上に向け、ギュッと鼻を摘まんだ。


 呼吸器を塞がれた男は、しばらく耐えてはいたのだが、最終的には息苦しさに我慢できず薬を飲み込んだ。


「!!」


 シリウスは、飲んでしまった薬を必死で吐き出そうとする男を無理矢理押さえ込み、暫くして薬が効いてくると、口元の拘束だけといて黒装束の男にニコヤカに質問した。


「何をしようとしたのかな?まあ…見ればわかるけどね…ふむふむ…やっぱり王妃様が…へー」


 飲ました薬は自白剤で、飲まされた男の声は音を集めているシリウスしか聞こえない。


 薬の影響で、始終ボーとした様子だった男は、粗方話終えた後。突然バタリと倒れ込んだ。


 シリウスは、それを冷たく見下しニヤリと笑った。


「悪く思わないでね」


 実はこの自白剤には、麻薬成分が含まれている。


 なので、間違いなく記憶は飛ぶだろう。


 多分…この男が次に目覚めた時。シリウスの事処か、今夜の出来事 全て覚えていないだろう。


 シリウスが上手くいったと楽しそうに笑っていると、遠くからバタバタバタバタ!!と走る音がした。


「ん?来たか逃げよう」


 シリウスが闇に溶けるのと同時に、宰相が近衛兵を連れてその場に駆けつけた。


 かなり急いで駆けつけたらしい宰相と兵士達は、既に全てが終わっている事を知ると目を見開いて驚き、宰相は愕然とした様子で呟いた。


「いったい誰が…」


 実は宰相は、暗殺者の情報を入手すると、直ぐ様兵士達をつれてこの場所に駆けつけた。


 しかし…


 既に、暗殺者達は何者かに捕縛され縛られていて、戦闘を覚悟していた宰相は呆気に取られてしまっていた。


 呆けてしまい、一向に指示をくれない宰相に、兵士達の一人が焦れてしまい遠慮がちに宰相に問いかけた。


「宰相…この者達を捕縛してよろしいですか?」


「!!すまない。捕縛してくれ」


 兵士の言葉で我にかえった宰相は、慌てて兵士達に指示を出すと、暗殺者を撃退した人物を探すために密偵部隊の影を呼び出した。



 翌日。


 昨夜暗殺者を撃退し、殆ど眠って無いシリウスは、寝不足で注意力散漫な状態でゲオルグの厳しい訓練を受けていた。


 そんなシリウスを見ていたゲオルグは、弛んでいると怒り、何時も以上に厳しい訓練をシリウスに課していた。


「ハアハアハア」


「弛んでいる!しかっし…あれだけ毎日訓練してるのに、本当に体力つかないな」


 ゲオルグは、ダラダラ訓練をして最終的に倒れ込んだシリウスに怒りながらも、呆れたようにシリウスの体を見る。


 毎日訓練しているが、殆ど筋肉が付いていない。

 新人兵でもこれだけ訓練をすれば、もう少し筋肉がついているはずだ。


「仕方ないじゃ…ぐえっ!!」


 疲れはてたシリウスが、文句を言うゲオルグに抗議した瞬間。


 おもいっきり背中を踏まれて、シリウスは一瞬意識が飛んだ。


「ゲオルグ!稽古をつけて…うわっ!すまない少年!大丈夫か!」


 シリウスを踏みつけた犯人は、第一王子アリシオンスだった。


 シリウスに気づかず踏みつけてしまったアリシオンスは、慌ててシリウスの背中から足をどけてシリウスを立たせると、シリウスの背中にくっきりついた足跡をバタバタと手で払って落とした。

 シリウスの汚れを落としたアリシオンスは、心底申し訳なさそうな顔で、他に汚れや怪我が無いか調確認していた。


 道見ても故意にシリウスを踏みつけた様にも見えないし、悪い人でも無いようだ。いや寧ろ好い人かもしれない。


 シリウスはアリシオンスにニコッと笑うと、ペコリと頭を下げた。


「ありがとうございます」


「すまない。ゲオルグを見付けて嬉しくなって…」


 アリシオンスはそう言うと、申し訳なさそうにシリウスに軽く頭を下げる。


 シリウスは悪意には悪意で返すのが心情だ。


 アリシオンスがシリウスに悪意を持っていないなら、シリウスがアリシオンスに悪意を向ける事はない。


 ななでシリウスは、笑顔でアリシオンスの謝罪を受け入れた。


「いいんですよ。じゃあ私はこれで…ひっ!」


 シリウスはどさくさに紛れてに逃げようとした。

 だが失敗し、ゲオルグに襟首をガシッと捕まれて捕獲されてしまった。


「待て。まだノルマは残ってるぞ。シリウス」


 逃げれないらしい。


 もう嫌でも訓練するしかないと観念したシリウスが、模擬刀を持ち上げて構える。


 すると、ゲオルグの言葉を聞いたアリシオンスが、目を見開いて驚いていた。


「シリウス…シリウス!!私の弟ではないか!」


「まあ。弟って言えば弟ですね」


 シリウスが心底興味なさそうにそう言うと、アリシオンスはシリウスの手をとり嬉しそうに叫んだ。


「よし!一緒に訓練しようではないか!」


「え!ちょっ待って!」


 無駄にヤル気満々なアリシオンスの勢いに負けたシリウスは、その後五時間。


 アリシオンスと一瞬に、いっそう厳しくなったゲオルグの訓練を受け続けた。


「もうだめです!一歩も動けません!」


 五時間後。


 シリウスは、もう嫌だ!と地面に寝転び駄々をこねるように地面に倒れ込む。


 本当に…本当にもう限界だったのだ。


 地面にへばりつき、イヤイヤイヤ!!と全身でアピールするシリウスを、アリシオンスは優しげに見つめて口を開いた。


「では休もう!ゲオルグもお茶にしないか?」


「いんや。俺は結構。訓練に戻ります。シリウス!明日もこの時間だからな!」


「…イエッサー」


 シリウスは動かない体を無理矢理動かし立ち上がると、去っていくゲオルグに向かって一礼した。


 明日は…手加減してくれるといいんだけどね。




 ゲオルグが見えなくなると、アリシオンスはシリウスの手を引き、笑顔で笑いかけた。


「では行こうか」


「はい」


 笑顔で答えたシリウスが連れていかれたのは、側室アリーマシュナの離宮だった。


 アリシオンスはまだ成人前なので、アリシオンスは母親の離宮で生活していた。


 成人すると王子が住む区域の離宮を貰えるらしいが、成人するまでは母親の離宮で過ごす慣例らしい。



 シリウスが連れてこられた庭にはテーブルと椅子が準備されていて、侍女達が既にお茶の準備をすましていた。

 直ぐにでもお茶会はできたが、アリシオンスもシリウスも五時間に及ぶ訓練で汗と泥でドロドロだった為、侍女に頼んで着替えを準備してもらい、二人でワイワイ楽しく風呂場で体を清めると、庭に戻り楽しい茶会が始まった。


 因みにシリウスが着ている服は、アリシオンスが小さい頃に着ていた服を借りている。


「わあっ!!美味しそうです!」


「旨そうだろう?私の好物だ」


「好物って、てっきり肉料理だと思っていたけど甘いお菓子なんですね!」


「肉は嫌いか?」


「大好きです!」


「私もだ」


「うん!美味しい!あ!中にシナヨが入ってる!こっちはベリーだ!此方はアップルかな?」


「凄いな当たっている。こっちのパイはどうだ?」


「美味しい!」


 意外に気があった二人が、食べ物の好き嫌いや趣味の話でもりあがりながら茶会をたのしんでいると、空気を凍りつかせるような声がその場を凍てつかせた。


「あら?何故此処に、娼婦の子供がいるのかしら」


「リラマリア様!何故ここに?!」


 アリーマシュナの離宮に王妃。リラマリアが現れたのだ。


 シリウス達が驚いていると、その後ろからアリシオンスの母親、アリーマシュナがヌッと現れて責めるように愛息子をねめつけた。


「私がお茶会に御呼びしたのよ。貴方こそ…汚らわしい娼婦の息子を何故 此処に呼んでいるのかしら?」


「…シュナ様は貴族です!」


「貴族だったでしょう?陛下もあんな汚らわしい娘を」


 アリーマシュナの余りの言いようにアリシオンスは絶句し、シリウスはその物言いに我慢できずアリーマシュナを睨み付けて声をあらげた。


「母は、カレシュド伯爵家の娘ですが」


「正妻の娘はサナリアだけでしょう?貴方の母は庶子じゃない!」


 サナリア?確か母の異母妹の名前ではないか。


「違いますよ。サナリア様が庶子です」


「嘘おっしゃい!サナリアの母親はマテイシス伯爵家の三女よ!」


「…?マテイシス伯爵の三女はもう死んでますが?」


「は?先日お会いしたわよ」


「…ああリサ様ですね。あの方 元々高級娼婦で平民ですよ」


「!!嘘よ!」


 イヤイヤ真実だ。


 母にも確認したし、貴族録にもしっかり書いてあった。

 祖母の兄弟と母は良く似ているし、反対にリサと祖母の兄弟は似ても似つかない。


 完全に他人だと断言出来るほどだ。


「賎しい子ね!離宮から追い出しなさい!どんな教育を…」


 シリウスは真実しか口にしていないのだが、アリーマシュナは虚偽と判断したらしく、グチグチと口汚くシリウスを罵った。


 その余りの酷さに我慢できなくなったアリシオンスが、ガタンと椅子を蹴倒して母に叫んだ。


「母上!彼は私が!」


「貴方には、謹慎を言い渡します連れていきなさい」


「あら?その服はアリシオンスのモノではないの!衛兵!直ぐに服を脱がして、あの娼婦の館に連れていきなさい!」


 アリシオンスは、喚きながらアリーマシュナの護衛兵達に連れていかれ、シリウスは身ぐるみはがされシュナの離宮の前に捨てられた。


 服を剥かれたシリウスが、夏で良かったと思いながらゆっくり立ち上がると、目の前にアリシオンスが現れた。


 どうやらアリシオンスは、監禁場所から逃げてきたらしい。


「シリウス!」


「アリシオンス様?」


 アリシオンスは最低限の肌着しか着ていない状態のシリウスを、心底申し訳なさそうに見つめると自分の着ている上着をシリウスの肩にパサリとかけて、深々とシリウスに頭を下げた。


「シリウス…すまない。これを」


 アリシオンスは、そう言って大きな箱をシリウスに渡してきた。

 シリウスがふたを開けると、思わず涎が出そうな、色とりどりのお菓子が詰められていた。


「食べ損ねただろう。持って行け」


「ありがとうございます。しかしどうやって…」


「私の味方をしてくれる侍女もいるのだ。その侍女にたのんだのだよ」


 どうやら、アリシオンスの味方である侍女達が用意してくれたらしい。

 何故(達)かと言うと、一人では無理な量だからだ。


「すまなかった。またいつかお茶をしよう」


 アリシオンスが申し訳なさそうにシリウス笑うと、シリウスは明るくニカッと笑った。


「はい。いつか」


 アリーマシュナは最悪な女だが、アリシオンスは間違いなく好い人だった。




兄その1。アリシオンスでした。

アリシオンスはいい子です!

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