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目指せ孤独死!御一人様!!  作者: 柳銀竜
王女ミリアンナ
3/55

街に行く!!

第三話です!!

今回も結構長いです!

 


「さて、どうやって脱け出そうか」


 ミリアンナは、下女の一件で両親に(特に父が、母を泣かせたことを怒っていた)ひどく叱られ、一週間の自室謹慎を命じられていた。


 まあ…勉強がサボれるし、自室に本やら菓子やら持ち込んでいるから、特に不自由は無い。


 昼寝は自由に出来るし、人に会わなくて良いので、寧ろ有難いだけである。


  部屋には、侍女すら入れてはならないと、父にきつく言われているので誰も部屋に入れない。


 なので、半日位なら抜け出してもバレる危険はないだろう。


 ミリアンナがそんな事を考えながら、ソファーに行儀悪く寝転び自室を見渡しながら、どうやって部屋を抜け出すか考えていると……


 突然。部屋の外に通じる扉から、可愛らしい声が聞こえてきた。


「姉様!開けて下さい!」


 声の主は、私の双子の妹ツェリアリア。

 ツェリアリア・ウイング・ゼルギュウムだ。


 彼女の愛称はアリア。因みに私はミリーである。


 可愛らしい声の彼女は、見た目も可愛らしい。


 少女漫画に出てくるような、軽くカールした光輝く金髪に、クリクリと可愛らしい青く澄んだ瞳の美少女だった。


 私はと言うと、前世と同じで真っ赤で癖の無い髪に、白い瞳をしている。


  両親もかなりの美人夫婦なのだが、その娘であるはずの私の顔はかなり平凡顔だった。


 不細工と言うほどは無いが、美少女でもない。


 可もなく不可もない。と言った感じだった。


 双子なのに!!何故だ!!


 そんな下らない…いや…下らなくもない事を考えながら、現実逃避していたミリアンナを可愛らしい声が現実に引き戻す。


「姉様!いらっしゃるんでしょ!開けてください!」


 ミリアンナは深いため息を一つ吐くと、扉の前に向かう。


 そして、扉を開ける事はせずに、部屋の外に要るだろう少女に向かって重々しく話しかけた。


「何の用?アリア。私は今謹慎中よ?」


 ミリアンナは、かなり嫌そうな声でそう言ったのだが、ツェリアリアは全く気にせずに…寧ろ嬉しそうに声を弾ませて叫んだ。


「本を持って来ました!!一緒に読みましょう!!ね?姉様!」


「やだ。帰れ」


 ミリアンナはしかめっ面でそう言うと、カチャリと扉に鍵までかける。


 ツェリアリアは、拒絶されるなど考えてもいなかった様で、その扉をバンバン叩きながら、泣きそうな声で必死で叫んだ。


「姉様?姉様!姉様!姉様ぁぁぁぁ!!」


 ミリアンナは、扉を叩きながら叫んでいるツェリアリアを無視して、ソファーに戻り再び寝転ぶ。


 暫くそうしていると、突然アリア以外の叫び声が廊下に響いた。


「ツェリアリア!!何してるの!!」


「ヴッ母様……」


 門番のように扉の前にいた侍女達が、王妃にツェリアリアが押し掛けて来た事を報告したらしい。


 侍女達に報告を貰った王妃は、怒りの形相でツェリアリアに叫ぶ。


 ツェリアリアは、王妃である母に無断で此処に来たらしい。


 バカな奴だ。


「行きますよ!!」


「姉様ぁぁぁぁ!!」


 無理矢理何かを引きずる音が廊下に響き、泣き叫ぶ声が遠ざかる。


 そして暫くすると、声が聞こえなくなっていった。


 声が聞こえなくなると、ミリアンナは部屋の窓に手をかかける。


 この部屋は一階なので、危険は無い。


 実は扉から出るのは、既に二回失敗している。

侍女達が、交代で常に扉を見張っていたからだ。

入口から出るのは無理。なので窓から出るしか無い。


「よし。行くか」


 流石に侍女達も、ミリアンナの胸位まである窓から、彼女が脱出するとは考えてもいなかった様だと、ミリアンナはニヤリと笑った。

侍女は貴族の令嬢ばかりだし、女性は夫以外に足を見せてはならないなんて古い風習があるから、思い付きもしないのだろう。


 ミリアンナは楽しそうにニヤリと笑みを深めると、再度 窓の外に見張りがいないのを確認する。

そして、そのままドレスをまくりあげると窓から外に飛び出した。



 数分後。


 ミリアンナが、無事に 昨日密談をした部屋にたどり着くと、部屋の中には、既にあの時の下女が待っていた。


「お待たせ!」


「あんまり待ってませんよ。はい。これに着替えて下さい」


 彼女はそう言うと、一着の子供服を差し出してきた。


 シンプルな褐色のワンピースに、白い薔薇の刺繍がされたもので、かなり古い感じがするのに痛んでいない。


 何か…どうみても晴れ着の様な気がする。


 ジーっと彼女を見上げてみると、あなた様に、着古した服なんて着せられません!! とキレられた。


 …はい…ちょっと怖かったです…


 そんな少し怖い彼女に、ミリアンナは大人しく従い、先程借りた晴れ着に着替える。


 そして着替えも終わると、ミリアンナは下女が羽織った外套に隠れて、侍女達に見つからないように王族の生活圏を出た。


時折侍女とすれ違う度に、下女の羽織る外套の中で息を殺す。

何かスパイをしているみたいで、かなり楽しかった。

どうにか誰にも見つからずに済んで、ミリアンナ達は下女の通用口から街に出る事に成功した。



 唯一。見張りがいる扉を出る時は、かなり緊張したが、見張りの兵士のお兄さんは下女のお姉さんに、二言三言 だけの簡単な質問をされただけで直ぐに門を通してくれた。


 女性のボディーチェックとかは、しないらしい。


 セキュリティが緩くて良かった。


 そして、扉を出で暫くすると街が見えてくる…そこは……


 前世で見た…あの頃のゼルギュウムとは大違いだった。


 街はかなり広くなっていて、2階建てや3階建ての建物が幾つもある。


 地面には石畳が敷き詰められていて、色々な店が色とりどりの看板や外装で飾り付けされていた。



「わぁぁぁぁ!!凄い!!」


 思わずミリアンナが叫ぶと、下女も興奮した様にミリアンナの手を掴んで叫ぶ。


「そうですよね!凄いですよね!私も田舎から出てきた時には、かなり驚いたものですよ!」


 興奮しながら二人はキャイキャイ騒ぐ。


 そしてミリアンナは、ハイテンションのまま ニヤリと笑った。


「よし!じゃああの噴水で始めようか」


「え?何を……」


 下女のお姉さんが、いきなり過ぎて意味不明の発言に驚いていると、ミリアンナは括っていた髪をバサリと下ろし噴水のふちに登る。


 そして彼女は、力一杯声を張り上げた。


「さあさあ!! 皆様!! わたくしは旅の歌人でごさいます!! 良ければ足をとめて、わたくしの歌をお聴きくださいませ!! 」


 ミリアンナはそう叫ぶと、深く・・深呼吸してから歌い始めた…


 ミリアンナの歌声は……


 高く…高く澄みきっていて、歩いていた人々は一人…また一人と街を歩いていた人々が足を止める。

 そして…まるで、噴水に引き寄せられる様に集まって来ていた。


 ミリアンナが歌うのは、誰もが知る聖歌。


 一般的な歌で、平民も貴族もよく知る歌だ。


 実は、前世で子守唄を子供達に歌ってやっていたら、たまたま遊びにきていたミンストレルが、余りにも悲惨な歌に衝撃を受けたらしく……


 その後。丸っと一年間……


彼女は、わざわざ ヘクセライから転移陣で毎日。ウイング領に通い、強制的に私に歌の特訓をしてくれた。

そして、この歌唱力はその特訓の成果だった…歌なんて音痴でも、自分が気持ちよく歌えれば良いだろ!! と抵抗したが、子供達が将来音痴になりますわよ!! とミンストレル言われたので、キツくて逃げたかったが、大人しくミンストレルに従ったのだった。


 半信半疑だったが…どうやら、前世での経験がこの体に引き継がれているらしい。


多分。あの神様が何かやらかしたんだろうと思う…まあ…害は無いから問題は無いが……


そして、今回歌っているこの曲は、ミンストレルに一年間…しつこく…しつこく練習させられた歌である。

私の音痴がかなり重症だったので、一曲を一年間ひたすら練習させられていた。


なので、この曲ならばまず間違い無く目的が果たせるだろう…


 歌いはじめてから五分……


 最後のフレーズも完璧に終わると、彼女はペコリと深く頭を下げた。


 パチパチパチパチパチパチ!!


 歌い終わったその瞬間。


 辺りに、ワアアアと拍手が響く。


 ミリアンナの渾身の歌は、大盛況だった。


 ミリアンナは歌い終ると、素早く下女のお姉さんの頭から、帽子をくすねて帽子の窪んだ方を上に向けてから、両手を前につき出す。


 すると回りの人間は、その行動の意図を察し、銅貨を帽子に向けて投げてくれた。


 目的達成!! 買い食いの資金 確保だ!


「よし!集めて…あ!」


 ミリアンナは、立ち尽くしていた下女のお姉さんの名前を呼ぼうとして、重要かつ失礼な事実に気がついた。


 お姉さんの名前聞いてない!!


「…凄いですね…ミリアンナ様は。あっそう言えば、名前を言ってませんでしたね。私はエレナです」


 下女のお姉さん。改めエレナは、散らばるお金をかき集めながらミリアンナに笑う。


 彼女も、今。名乗るのを忘れた事に気づいたらしい。


「了解。金集めお願いね。エレナお姉ちゃん」


「はい」


 ミリアンナがそう言うと、二人はせっせと帽子に入りきらずに散らばった硬貨を集め始める。


 そして、粗方集め終わると帽子に入っている分を含めて袋に詰めた。


 そしてスリ対策の為に、懐やポケットに幾つかの小袋に分けて入れる。


 コレなら、スリにあっても全額奪われる事は無い。


 歌でおもいっきり目立ってしまったので、強盗の危険も……あ!!銅貨だけでなく銀貨まであった!


 ミリアンナは小袋をしまい終ると、急いで近くの屋台に走って行った。


 彼女の手には、小袋の一つが握られている。


 買い食いする気だ。


 放置されたエレナは、慌ててミリアンナについていった。


「よし!おっちゃん!! その串肉三本頂戴!!」


「あいよ。銅貨三枚だ」


 ミリアンナが、子供らしく笑顔で叫ぶ。


 すると、屋台のおじさんは微笑ましそうに笑顔で串焼きを、三本タレにつけてから焼き始めた。


 肉が焼けるまでヒマなミリアンナは、肉を凝視しながら屋台のおじさんに話しかける。

 因みにエレナは、そんなミリアンナを微笑ましそうに見ていた。


「最近どうよ?儲かってる?」


「そこそこだな。しかも。屋台じゃ貧民街の餓鬼どもに狙われやすくて…あ!コラ!!」


 屋台のおじさんが肉を焼いていると、おじさんの手元にある半生の肉を、薄汚れたチビスケ君達が隙を見て素早く強奪していった。


 それを見たミリアンナは、苦い顔をしながらも、直ぐに目の前の串焼きを焼き始める屋台のおじさんを、痛わしげに見上げた。


「いつもなの?」


「ああ。特に最近多くなってきたな…隣国のパォティスがブライアと戦争始めちまったせいだろうが…」


 屋台のおじさんは、ため息混じりに再び肉を焼き始める。

  追いかければ、奴等のテリトリーに行くことになるだろう。其処には子供だけでなく、強盗や殺人もする大人がいる筈だ。


 深追いすれば、肉だけでなく命まで奪われてしまうかもしれない。


 もう肉は諦めて、奴等を放置する方が被害は少ないだろう。


 しかしミリアンナは、追いかけない事より、おじさんの発言に驚いて目を見開いた。


「え?初めて聞いたよ!それ!」


 戦争!?父王も女官達も何も言ってなかったよ!


「当たり前だ。開戦宣言したその日に、王様が変わって終戦したからな。

 俺も、パォティスから来た旅人に聞いて初めて知った位だからな……

 でも、賠償金が凄くて税金が上がったせいで、払えない奴等がうちに流れて来たらしいんだ。

 だから、貧民街は凄い事になってるんだよ。あ!あそこには近づくなよ。危ないからな。ホレ焼けたぞ」


「了解。はい。銅貨三枚」


「まいど」


 ミリアンナは、銅貨三枚を支払うと串焼きを受け取り、三本の内一本をエレナに渡す。

  そして、両手に串肉を持ちながらトボトボ歩き始めた。


 開戦したその日って…多分犯人ウイング家だな。


 しかし…貧民街か…面白そうだな…よし。


 ミリアンナは先程。屋台のおじさん行くなと言われた場所を眺めながら、エレナにニッと笑った。


「それじゃあ。行こうか」


「はい…はい?え!!ちょっミリアンナ様?!待って!!」


 肉を食べながら反射的に頷いたエレナは、ミリアンナが貧民街に向かって歩くのを見て行先が城ではなく、貧民街であることに気付き慌ててミリアンナを止めようとすがるが…全く聞き入れて貰えなかった。


「話を聞いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 賑やかな街の喧騒の中…小さな屋台の前で下女エレナの、悲痛な叫び声が悲しく響いた……




第3話でした!

下女はエレナさんです!次回は貧民街で色々やらかします!

次回も宜しくお願いします!!

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