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目指せ孤独死!御一人様!!  作者: 柳銀竜
王子シリウス
27/55

父親は…

今度はかなり長くなりました。

シリウス君の父親登場です!

 

 生まれ変わってから十年。


 シリウスは娼婦の息子として…ではなく闇ギルド(毒蛇)の諜報員の息子として生きてきた。


 シリウスが育てられた場所。つまり娼館を装ったギルド館で生活している諜報担当の女達は、事情は様々だが全て売られてきた娘ばかりで、ボスと呼ばれていた男(毒蛇)のマスターは、そんな娘達を出来るだけ買い取り適性に合った仕事をさせていた。


因みにあの匂いは母ではなく、母の近くにいた諜報員の女性が、暗殺担当の旦那とイイコトをした結果らしい。


 孤児院育ちのマスター。ボスは口が悪いわりには優しく、子供を産みたいと言った諜報員達にはちゃんと適度な休みを与えている。此処に来る前にシリウスを孕んでいたシュナにも、嫌な顔一つせずにシリウスを生ませてくれた。


諜報員の中には何人も子供を産んだ経験豊富な女性も居たので、シュナは安心してシリウスを産み育てる事ができた。



 それに、ここで育てられた子供は他にもいたので、シリウスは六七人の赤子達と一緒に、女諜報員達が産んだ十歳前後の子供達と諜報員や暗殺者達に育てられた。


 たまに、独立して窓口用のギルド館に行った兄さんや姉さん達がフラりとやって来たりして自分達の面倒を見てくれていたりしたが、彼等彼女等は皆は仕事帰りな場合が多く、血の付いたナイフを持っていたり、薬草の話をすれば毒薬の話になったりとかなりと人間様に言えないセリフを聞いて育つはめになってしまった。


 まあ…闇ギルドの子供なら仕方がないかもしれない。


 それから五年。


シリウスが五歳になると、シリウスは上手く手先が使えるようになった。なので、毒…いや薬草に詳しいお兄さんやお姉さんに、薬の作り方を教わって薬作りを始めた。


 色々な薬の作り方をマスターし、最終的にお兄さん達の師匠に師事して十歳になった現在。


 シリウスは傷薬から解熱剤。病気の予防薬まで幅広く作れるようになっていた。





「あら?また薬を作ってるの?」


 日課になっている薬作りを部屋でしていると、ガチャリと母。シュナが扉を開けてシリウスに声をかけてくる。


 シリウスは、ん?と顔を上げると母シュナを見て笑いかけた。


「うん。傷薬だよ。ラム兄さん怪我してたから治療したら、予備まで使いきっちゃったんだ」


「そうなの。でも、そろそろご飯にするから。そこ片付けて」


「うん」


 シリウスはシュナにそう言われると、机の上を軽く片付けた。


 シリウスが机の上を片付けると、シュナと数人の子供達が朝御飯のサンドイッチを机に置いていく、皆がサンドイッチを並べていると、深夜まで情報収集していた女諜報員達がゾロゾロとこの部屋に入って来る。


 実はシリウスが作業をしていた場所は、このギルド館で食堂として使っている部屋だった。


 調合は水も火も使うので、台所に近いこの此処をいつも使っている。


 勿論。ボスと館の住人から、許可は貰っていから問題はない。


 いつも通り皆で和気あいあいと食事していると、誰かがドンドンと食堂の扉を勢い良く叩く。


「シュナ!シュナ!」


 シュナを呼ぶ低い声に娼婦達は首をかしげながら、扉を開けた。


「あらボス?まだ早いのになにかしら」


 ボスだと思った娼婦達の内の一人が、扉を開けると無理矢理一人の中年男性が部屋に押し入って来る。


 押し入ってきた男性の姿を見たシュナが、悲鳴のように叫びガバリと椅子から立ち上がった。


「!!父様」


「来い」


「え!で…でも…」


「良いから来い!」


 何の説明も無しに、止める女性達を無視してシュナを連れていこうとする男性に、まだ十歳の小さなシリウスは掴みかかる。


「母さんをどうする気だ!」


「お前は…この子供も連れていけ!」


 男性が後ろからゾロゾロとボスの様にがたいの良い男達が現れ、シュナを助けようとする女性達を拘束し、泣き喚く子供を無視して、男達は、シリウスを持ち上げシリウスの口と鼻に薬品の染み込んだ布を押し付けた。


「なっ!っ!」


 怪しげな薬品を嗅いだシリウスは、直ぐに意識を失ってしまった。






 そして次にシリウスが気がつくと、シリウスは豪華な部屋のベッドで寝ていた。

 ベッドから起き上がり、回りを見るとベッドの隣にあった椅子にシュナが座っていた。

 彼女は、とても悲しそうにシリウスを見つめながら口を開いた。


「シリウスごめんね…」


「良く分からない事態だけど、母さんのせいじゃないよ」


 シリウスがそう言いながら母を慰めていると、コンコンと控えめなノックが有り返事も聞かずにメイドが入って来た。


 入ってきたメイド達は、形だけ敬う素振りを見せて頭を下げできた。


 頭を下げてきたが、彼女はシュナとシリウスを見下すような目をしていた。


「お嬢様。御子息様。失礼します」


 メイド達は、そう言うなりシリウスとシュナをぐるっと取り囲んだ。


「え!なっ何!」


 メイド達は、叫ぶシリウスを無視して自分たちの作業を開始した。


 数分後どうなったかと言うと…


「シリウス!」


 母と感動の再会…とは言えなかった…何故かと言うと…


「うわっ…何コレ趣味悪…」


「シイー!シリウス駄目よ」


「だって母さ…うわっ…母さんのドレスの方が酷いね成金思考って言うか…なんと言うか…」


 シリウスがメイド達に着せられた服は、これでもか!!ってくらいに金ぴかの装飾品を飾り付けられた貴族服だった。


 シリウスが着せられた服は、装飾品が多すぎて元々上品なハズの貴族服が、物凄く下品な服に成り下がっていた。


 シリウスが、余りにも下品服に文句を言いながら母シュナを見ると、彼女も目が痛くなるような原色のドレスを着せられていた。


 装飾品をゴテゴテに飾られて。


「失礼な子ね!あの方の血を継いでいても母親がコレではね」


 現れた人物は、気持ち悪いくらい化粧しまくった上に、原色ドレスの中年夫人だった。


 彼女は室内に入るなり、シリウス達を見下すように見ながらそう吐き捨てる。


 彼女を見たシリウスは、思わず呟いた。


「…誰」


「母よ。義理のね」


 シリウスの疑問に、夫人では無くシュナが答えてくれた。


 夫人はシリウスと話す気は無いらしく、それを良く理解しているシュナが息子に教えてくれた。


 シュナが疲れたような顔をしているあたり、とても嫌な女性なのは間違いないようだ…それに…


「ああ…そうか。母さんはこの人に売られたんだね。ん~性格悪そうだね」


 シリウスは夫人が自分を無視した事より、見下す視線にカチンときたので、夫人を挑発するように彼女を批判を口にしてみた。


 すると夫人は、面白いくらいに目をつり上げる。


 単純だな。


「!!貴方!」


「シリウス!」


 シュナが慌てて庇うようにシリウスと夫人の間に割ってはいるが、シリウスはバカにしたように笑いながら夫人を見上げる。


 勿論これも挑発だ。


「殴らないの?残念」


「残念?何で?!」


 シュナがシリウスに聞くと、シリウスは夫人に向けるのとは真逆の顔でシュナの疑問に笑顔で答えた。


「だって俺は(あの方)って人の子供なんでしょ?何発か殴られた跡っもあれば、この人とあのオジサンが処罰を受けるんじゃないかと思ったんだけどね」


 困った困ったと、またもや夫人を馬鹿にするように首を振れば、彼女は面白いくらいに夫人が逆上した。


 ビックリするくらい馬鹿だ。


「この!」


 夫人が手を振り上げた瞬間。


 シリウスは、シュナが殴られないように彼女の前に出る。


 母を叩かせる気はない。


「シリウス!」


 その時。


 シリウスとシュナを拐かした犯人…つまりシュナの父親が、空いていた入り口からズカズカと中に入ってきた。


 入ってきたシュナの父親は、夫人がシリウスを殴ろうとしているのに気づき、ギロッと妻を睨み付け怒鳴り付ける。


「ライア!何をしている!」


「旦那様…あの…」


 夫人は怒鳴り付けられるや否や、慌てて振り上げた手を引っ込めシュナの父親にすがり付くように手を伸ばす。


 だが、シュナの父親はその手を無視してシュナとシリウスの服装を確認すると、使用人達に鋭く命じた。


「おい!馬車に連れていけ!」




 シリウスとシュナは使用人達に捕獲され、何処に行くかも教えられずに馬車に押し込められて二十分。


 引きずり出す様に馬車から下ろされた場所は、マグダリア城だった。


 シリウスは、シュナの父親に連れられて城の中を歩きながら城の装飾や絵画を見上げる。


 ミリアンナだった時代に側妃として過ごした場所でもあり、数百年の時を経ても変わらないモノ。変わってしまったモノも多くあり見ていて楽しかった。




 そしてシリウス達が謁見の間まで来ると、扉を守る兵士に先触れを頼みしばらく待つ。


 因みに謁見の間の扉は全く変わって…いや。細かい傷が増えていたから、ヤンチャな王子でもいたのかもしれない。


 シリウスがそんなことを考えている内に、許可が出たらしくシリウス達は謁見の間に入る。


 中に入ると、シュナの父親に中央で頭を下げるように言われシリウスはおとなしく頭を下げる。


 シリウス達が頭を下げて数秒後。


 玉座に座っていた男性が、静に口を開いた。


「面を上げよ。その子供がわが息子か」


「はっ。シリウスと申します」


 何となく気づいてはいたが…やはり自分は王の子だったらしい。


 顔も髪の色も瞳の色も王とは全く違うが、王は自分の息子だと欠片も疑っていないようだった…全力でDNA検査を進めるレベルで似ていないのに。


「そうか…シュナ・カレシュイド。お前を側妃に迎える。シリウス。お前は私。マグダリア王である私の三番目の息子だ。お前は今日からシリウス・カレシュイド・マグダリアと名乗るが良い」


「はい」


「はい」


 シュナとシリウスは王に礼を言い、頭を下げながら回りに見えないように顔を歪める。


 正直。王の認知など色々面倒そうだからされたくないが、今さら逃げるのは不可能。


 ならば…王子として生きるしかないだろう。


「後宮に部屋を用意させた。これからそこで生活すると良い。女官長。案内してやれ」


 王様はそう言いながら、扉の近くにいた中年女性を見た。


 彼女が女官長らしい。


「はい。承りました。

 シュナ様。私は女官長のユリアンナ・ライカルス。でございます御部屋に案内しますので着いてきてください」


「分かりました」


 シュナとシリウスが、ユリアンナに引率され部屋を出ていく時。


 祖父にあたる男が嬉しそうに、宰相を通じて王様に話しかけているのがチラリと見えた。


 あのカス…絶対いつか酷い目に逢わせてやろう…絶対に。


 シリウスが密かに暗い決意を決めている内に、これから生活する離宮に到着した。


 幸か不幸かミリアンナだった時代に過ごしていた場所で、居心地は最高だ。


 これからシュナが過ごす部屋に行くと、そこには侍女服を着た十五六の可愛らしい少女がチョコンと立っていた。


 ユリアンナは彼女の前まで行くと、振り返り頭を下げる。


 すると少女も頭を下げた。


「彼女は本日から側妃様付きとなる侍女のサリアでございます」


「サリア・ルルージュと申します宜しくお願いしますわ」


 シュナ付きになった侍女が部屋の設備の説明をしているのを聞きながら、シリウスはハアーとため息をついた。


 色々あったが、取り敢えず…


 嫉妬豚から母を護らなければ!!


シリウス君は王子でした…って章の名を見れば分かりますよね。

闇ギルドの子供はシリウスにとって兄弟で、コレからもちょくちょく出る予定です。

主に大きい義兄や義姉が。

後ボスは、シュナ達が浚われたと言うより親が迎えにきた感覚で彼を館に入れました。


シュナを売る事を決めたのはシュナの義母で、父親は知らないと聞いていたからなのですが…

シュナの父親は、奴隷にする気は全くありませんでした。

まあ…売るより王に嫁がせた方が家に利が有りますからね。


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