死因は…
オウルの章 最終話です!
見渡す限り真っ白な何もない世界。
そこに、立派とは言いがたいがとりあえず大人に成長したオウルが、ボーと空らしき場所を眺めていた。
ここは神の世界。
つまりオウルは死んだのだ。
オウルはルシアと王子の婚約破棄の事件の後、ウイング家当主に初代の生まれ変わりと認められ、ウイング領に初代が残した屋敷に移り住んだ。
ウイング家当主は自分好みの屋敷を建てているので、初代の立派な屋敷は不要。なので、何の問題もなく屋敷はオウル夫妻に譲渡される事になった。
ウイング領に移り住むと、オウルは屋敷だけではなく屋敷に蓄えられていた貴金属も屋敷と一緒にウイング家当主に譲渡された。
初代の夫達が溜め込んだ貴金属を、子孫達は初代が再び此処に現れる時に生活に困らないよう、手を付けずに残してくれていたらしい。
それは軽く七回は人生を生きられる程の金額で、オウルは働く事を止めた。
金と住む場所が有るのだから、働かなくても問題ない。
なのでオウルは、読書をしたり果物を食べたり、ゴロゴロしたりして特に目的もなく日々を過ごしていた。
一応。
無職では不味いだろうとと、当代ウイング家当主以外が(当主は別にいいんじゃない?と言ってしまい、話し合い中。執務室で馬馬車の様に働かされた)考え抜き、相談役なんて役職を貰ったがほぼ名誉職。
普段は特にする事は無い。
極たまにウイング家や領民に乞われたりして、日本人の知識や遠い昔の知恵を授ける程度はするが、する事と言ったらそれくらいだ。
基本暇人…
そこまで考えると、オウルはここに来る直前の出来事を思い返した。
…確か…たまには散歩しようと玄関を出た後…気づいたら石が…
何が起きたのだろうか?
オウルが不思議そうに首をかしげていると、突然バッと目の前に神様が現れた。
この世界の神様だ。
神様はオウルの目の前に立ち塞がると、オウルを冷めた目で見下ろす。
暫くすると神様は、諦めたようにハーとため息混じりにオウルを見ながら口を開いた。
…居心地が悪い…何だろうか?
「段差でつまづいて顔面から勢い良く地面に衝突して運悪く底に石があったんだよ!その後出血性ショックで死んだんだ!気づきなよ!」
…ああ…やっぱり?
アハハとから笑いするオウルを、神様は呆れ顔で見下ろした。
駄目だこいつと言いたげに。
神様は、オウルの全く気にしていない態度に呆れて、深い深いため息を吐いた。
「ハアー…体を鍛えないからそうなるんだよ!普通その年なら顔面から突っ込む事はないよ!踏みとどまるよ!また早死にして・もう!」
オウル・ウイング。
享年31歳。
歴代の享年新記録だ!…いや誇る事でもないか。
「あはは…言い訳もできないね」
オウルは、神様の台詞に気にした風も無く笑い飛ばした。
いつもの事だから気にしない。
オウルはそう言う奴だった。
「見なよ!皆呆れてるでしょ!」
神様が短く呪文を唱えると、オウルの目の前に現れた小さな池の様な空間が現れる。
神様は、オウルの前に造り出したそれをビシッと指差しさけんだ。
空間に写し出された映像は葬式。
オウルの葬式の様子だ…今は告別式って言うんだったか?まあそれは良いとして、葬式の様子を説明すると大体三種類に別れている。
嘆き悲しむルシアと一部の領民。
ソコソコ悲しむオルクと、義理の娘とウイング家の一部。
余りにも間抜けな死因を、酒のつまみにドンチャン騒ぎをする大部分の領民とウイング家の面々。
暫くは五月蝿いのを我慢して、故人を送るための祝詞を唱えていた神父様が突然バシン!と読んでいた聖書を叩きつけるように閉じた。
どうしたのかな?とオウルが神父を観察していると、神父は騒いでいる者達に向かってツカツカと歩いていき、彼等に詰め寄ると殴っては捨て殴っては捨てを繰り返し始めた。
神父が騒ぐ者と酒を葬儀場から追い出すと、それを見ていた現当主と、信心深い訳でもないせいか適当に祈っていた者達は、神父の迫力に震え上がり真面目に祈り始めた。
神父は、怒らしたら怖いタイプらしい。
それからは神父が壇上に戻り、再び祝詞を唱えていると、追い出された者達が入り口に戻って来た。
彼等は青筋を浮かべる神父に対して一斉に土下座を始め、誠心誠意 頼み込み葬儀場に入れて貰った。
彼等は悲しい気分を吹き飛ばしたくて酒を煽っていたらしく、その後は真面目に祈りを捧げていた。
葬儀も終盤に差し掛かり、葬儀場からオウルの体が運ばれると、ルシアが棺桶にすがり付いて泣いていた。
脱水状態にならないか心配だ。
「ルシア…ルシフル大丈夫かな」
オウルがそう呟くと、神様はフフッと笑った。
「気づいてたんだね。彼女がルシフルだって。彼女は大丈夫だと思うよ。子供が五人もいるしね」
オウルも神の世界に入るまで何故か忘れていたが、確かルシフルと一緒に転生した。映像見ている時にルシアとルシフルの魂の色が同じ事に気づいたのだ。
身分違いだったにも関わらず、オウルと添い遂げたルシフルの執念は恐ろしい。
神様がニヤニヤ笑ながらオウルを見た後映像を指差す。
すると、嘆き悲しむルシアの横に長男オルクと義理の娘リリーシアが寄り添い、その回りで次男のルシクと双子の娘シアンナとオリアンナが、必死でルシアを慰めていた。
あの様子なら、ルシアが自殺を謀っても子供達が阻止するだろう。
「まあそうか。ああ…あの精霊俺と同化しちゃったんだけど」
オウルは、映像から神様に視線を移しオウルの魂の核。
心臓辺りを指差した。
神様がオウルにつけていたあの高齢の精霊は、オウルの中で眠っているうちに長い年月をかけて徐々にオウルの魂に同化してしまっていた。
既に精霊に自我はなく、魔力はオウルの魔力に溶けている。
大丈夫なのだろうか自分。
「うん。確かに魂に同化してるね。もう個としての意識は無くなってるみたいだけど…その子は上位精霊並みの力を持っていたから、オウル。君の来世はもっと風の魔力が高まるだろうね…人外並に」
それを聞いたオウルは、嫌そうに顔を歪める。
転生を繰り返しているだけでも、普通の人間の枠から外れているのに、人外の魔力まで…
オウルは、ハーとため息をつくと、諦めたように呟いた。
「そうか…面倒事の臭いがするけど魂に同化してるならどうしようもないね」
オウルがそう言うと、神様は転生の空間を造り出すと、オウルに豪快に笑って言いはなった。
「じゃあ次の人生頑張れよ!」
「今度こそ!目指せお一人様!!」
神様はがそう言うと、オウルは立ち上がり意気込みを叫びながら神様の造り出した空間に飛び込んだ。
オウルが転生の空間に飛び込むと、真っ白な空間にあった真っ白な家具の影から、燃えるような紅い髪の青年が出てきた。
ずっとそこで隠れていたらしい。
神様は、彼を見てニヤリと人の悪い笑みを浮かべると口を開いた。
「ああ今度は君が…頑張ってあの子を幸せにするんだよって愚問か」
「本当に愚問だな。ユリナいやオウル!今度は俺が幸せにしてやる!」
彼はそう宣言すると、オウルを追って空間に飛び込んだ。
彼が誰かはその内に…
出血性ショックでした。
足腰弱ってますからね…オウル。
次の章の彼も底辺の生まれです。しかしその後…
最後に出た彼が誰なのかは次の新章で!




