さようなら
オウルの章は後二話です!
今回は、色々ぶっ混んだのでちょっと長いです!
捜し続けていた我が娘。ルシアは見つかった。
見つかったは見つかったが、ルシアは一人ではなかった…連れがいるのだ…しかも男が。
公爵が探していたルシアは、公爵に気づくと脅えたように隣にいる若い男の腕にしがみつき、公爵と護衛達の出方を此方を伺うように此方を見てくる。
公爵は娘が見つかった事にホッとしながらも、娘と親しそうにしている隣の男をギッと睨み付けた。
婚姻前の公爵令嬢に、醜聞等もっての他だ。
公爵が連れているガタイの良い護衛達に、ガッチリと囲まれている状態で落ち着いている男の素性も気になるが、今は其どころではない。
早く…一刻も早く、ルシアを王都に連れていかなければならない。
公爵はオウルを警戒しながらも、ヅカヅカとルシア達に詰め寄り、ガシッとルシアの腕を掴んだ。
「来い!色々と言いたい事はあるが、話は場所を変えてする!お前達!そこの男も連れて来い!」
「痛い!放してください!放して!」
公爵に腕を掴まれたルシアが、痛そうに顔を歪めながら悲鳴のように叫んだ瞬間。
オウルはガシッと公爵の腕を掴み、ギュゥゥッと強く握り締める。
腕を締め上げられた公爵は、ルシアを掴んでいた手を思わず放しオウルに叫んだ。
「いっ!!何をする!」
公爵が、余りの痛みに顔を歪めながらオウルを睨むがオウルは全く気にせず、公爵の手を凝視しする。
オウルは、公爵の手がルシアの腕から離れたのを確認してから、公爵の腕を掴んでいた手を離しニッコリと笑いかけた。
無害そうに笑いながらも、オウルは無詠唱でルシア達と自分の体に風の盾を作り、完全に防御を固めると公爵を冷たく見据えた。
「乱暴はしないでください。ちゃんと ついていきますから」
見つかってしまった以上。
もう隠れていても無駄だ。
こうなったら、トコトン話し合った方が良い。
「オウル…」
ルシアが不安げにオウルを見上げるが、オウルはニコッと優しげに笑い、ふありとルシアを抱き締めてた。
「ルシア。大丈夫だから」
オウルに優しく抱き締められたルシアは、ホッとしたようにオウルに寄り添うと、二人を見て苛々している公爵達の後をついて歩き始めた。
公爵が向かった場所は、ライクス達が詰めている兵士達の詰所だった。
兵士は、貴族と平民なら貴族の味方をすると思ったのかもしれない。
万が一にも逃げられないように、多くの兵士がいる詰所に来たようだ。
まあ…普通はその通りだろうが、彼等なら多分。ミスを装ってオウルを助けてくれると思う…多分。
オウルがそんな事を考えながら詰所を歩き、真っ直ぐライクスの執務室に向かう。
公爵達が、又もやノックもせずにズカズカとライクスの執務室内に押し入り、迷惑顔のライクスに公爵の後から室内に入ってきたオウルと、我が物顔でソファーにドカリと座った公爵がライクスに状況説明をする。
粗方 話を聞いたライクスは、思わず頭を抱えて唸った。
「…まさかオウルの女房が…公爵令嬢だったとは…」
ライクスがそう呟くと、公爵は目を見開いて驚き、オウルとルシアを鋭く睨み付けた。
「女房!?ルシアお前!」
睨まれたルシアは、気丈にもギッと父親を睨み返し肌寒かったので服でくるんで、ずっと腕に抱いていたオルクを公爵に見せる。
「私はもう一児の母ですわ!王子と結婚なんてできません!」
「!婚約者いたんだ…まさか婚約式してたりする?」
オウルが首をかしげてルシアを見ると、ルシアは首を振って否定した。
「いえ。婚約式の予定日より前に逃げましたから」
ルシアがそう言うと、オウルはルシアに向かってニコッと笑いながら話し始めた。
「良かった…婚約式をしていたら姦通罪に問われるところだけど、正式に書類を交わしていないなら問題ないよ…ところでお父さん」
オウルが公爵に向かってそう言った瞬間。
公爵は怒りで顔を歪めながら怒鳴りる。
「貴様の父親ではない!」
怒鳴る公爵の主張を完全無視ししたオウルは、ツカツカと公爵に詰め寄りニコッと笑う…勿論。真っ黒な笑顔で。
「ルシアは俺が責任をもって幸せにするから、死んだと思って忘れてくれる?」
オウルが公爵の前で威圧的に笑うと、少し怯みはしたが、負けじとオウルに怒鳴り付けた。
「無理に決まっているだろう!」
公爵が怒鳴ると、ニコニコしていた表情を一変し、公爵を羽虫を見るような目で見下し、吐き捨てるように言葉を吐いた。
「そう。じゃあケントルム王太子に会いに行きましょうか。ロワン・サファル・ケントルム」
「っ!消えた!」
実はオウルは、初めてこの部屋に来た時に転移陣を設置していた。
公爵と話をしても時間の無駄だと理解したオウルは、婚約者の方を片付けるべく執務室を後にした。
勿論ルシアとオルクを連れて。
今回の転移には、オウルがユリナだった時代。
つまり前々世の時代に、ケントルム城に設置していた転移陣を使った。
しかし…遥か昔に作っていた転移陣を使ったら…なんとガラス張りの庭園に出てしまった。
昔。この場所は井戸だったのだが、今は魔石を使った下水道が整備されていて要らなくなった為に埋め立てられたらしい。
それでも転移陣が残っているとは…自分の能力が恐ろしい…まあ…それよりも問題は…
「ルシア!病気は大丈夫…その男は誰だ!」
件の王子がちょうど庭園でお茶をしていたため、転移した場所の直ぐ目の前にいたのだ。
王子は目の前に現れたルシアに驚きながらも、何故か目の前に現れたルシアに抱きつこうとして、ルシアの隣にいるオウルに気付くと、愛しい人に寄り添う間男を、ギロリと睨み付ける。
「初めまして。私はオウル。ルシアの夫です」
夫…
王子はその言葉を聞いた瞬間。
王子は、オウルに掴みかかる勢いで叫んだ。
「ルシアは俺の妃だ!」
「まだ貴族達や、各種族の王族や首長に御披露目していないでしょう?婚約式もしていないのだから、妃と言うのもどうかと思いますが?」
オウルがそう言いながら嫌らしく笑うと、王子はオウルに噛みつくように叫んだ。
「内々には決まっていた!」
その言葉を聞いたオウルはニヤリと笑うと、さげずむように王子を見る。
「そして、ルシアが貴方から逃げたんですよね」
「にっ逃げた?!」
オウルの言葉を聞いた王子は、目を見開いてルシアを見る。
気付きもしなかったらしい。
「そうですよ。彼女は三年前に実家から逃げ私の住む森に逃げてきました。一緒に暮らしているうちに…まあそんな感じで内縁関係になったと言った感じですね。因みに子供いますよ」
「こっ子供!」
オウルがニャリと笑いながらルシアをチラミすると、ルシアは腕に抱く我が子を王子に見せる。
王子は開いた口が塞がらずに固まった。
「王候貴族は処女姓を重んじますからね…未亡人でなく子供を産んでいる女性を王妃にするなど無理です。なので、ルシアは死んだと思って諦めてください」
「嫌だ!」
「そうですか」
「そうだ!」
数秒間オウルは王子と睨みあっていたが、フィッとオウルが王子から目を離しルシアに笑いかけた。
「ルシア。ケントルムを捨てて別の国に行かない?あいつを説得するのは無理だよ」
「オウルが いれば私は住む場所なんて何処でもいいわ!」
オウルの申し出にルシアは幸せそうに笑い、オウルに抱きつきながらそう叫けぶ。
王子は固まったままだ。
「そう。じゃあケントルムを出ようか」
実はオウル達は、まだ転移陣から一歩も出ていなかった。
なので移動する必要もない。
「ロワン・サファル・オウル」
「ま…!!待て!ルシアぁぁぁぁ!!」
転移する瞬間。泣きそうな王子の顔が見えたが、王子が心を病もうがどうしようがどうでも良いので気にしない。
オウル達は、直ぐに家に転移すると、ツリーハウスに戻り必要最低限の荷造りをすると急いで転移陣に向かう。
敵は王子。此処にも、何時追っ手が来てもおかしくないからだ。
「何処に行くの?」
ルシアが、ぐずりだしたオルクをあやしながらオウルに聞くと、オウルは楽しげに笑って答えた。
「ゼルギュウムのウイング領だよ。忘れ物は無い?」
「無いわ」
ルシアにそう聞くと、オルクを抱き、大きなバックを肩に下げたルシアが笑う。
ヨシ!と頷いたオウルは、ルシアと一緒に木の下の転移陣に移動し叫ぶ。
「じゃあ行こうか。ロワン・サファル・ユリナ!!」
転移したオウル達が目を開くと…そこは青い美術品や美男子の絵画が大量に置いてある部屋だった。
此処はゼルギュウム国。ウイング家の領主に、代々引き継がれてきたウイング領領主の隠し部屋である。
オウル達が部屋を見渡していると、その部屋の一番奥にある青い玉座に、一人の青年が座っていた。
ダラケきった赤毛の青年は、オウル達に驚き思わず叫ぶ。
「!!誰!?」
オウルは赤毛の青年にニカッと笑うと、楽しそうに口を開いた。
「ミリ、ユリナ、ミリアンナ、オウル」
オウルは歴代の自分の名前と、今世の名前を青年に告げる。
するとダラケきっていた青年は、サッと真面目な顔つきになりオウルをじっと凝視した。
「…何が欲しいですか?」
青年が試すようにオウルを見つめに質問する。
するとオウルは、笑ながら口を開いた。
「シナヨの新種と引きこもり人生」
それを聞いた瞬間。
青年はオウルを見て、眩しいものを見るような目でオウルを見つめ、嬉しそうにニコッと笑った。
「…本当に初代みたいですね…最後にこの箱を開けてください」
青年が魔術のかかった青い箱を差し出すと、オウルは懐かしそうに…嬉しそうに笑った。
「おお!まだあったか…ミリ・ヤナギダが命じる開け」
オウルがそう言うと、パカッと箱が空いた。
しかし…中身は空っぽだ。
誰かが中身を盗んだ訳でななく、元々空っぽだから問題はない。
ならば何故これを渡されたのかと言うと、これを開けるのがユリナである証明だったからだ。
実はユリナだった時代に、息子にシナヨの品種改良をお願いしていた。
そしてそれを、代々引き継がれるよう頼んでいた。
生まれ変わって貧民になっても…他国人になってもユリナ…オウルは新種のシナヨを食べたかった。
ミリアンナの時にミリアンナがユリナの生まれ変わりと知っていたのは、ウイング家当主だけ。
なので、ユリナの歴代の名前を口にして、なおかつこの箱を開けた者は初代当主だと言うことを代々引き継がせていた。
シナヨを食べるためにと、色々無茶を聞いてもらうためだ。
「確かに…初代様。歓迎いたします」
「歓迎は良いから戸籍が欲しい。俺と妻ルシアと息子のゼルギュウムでの戸籍をくれないかな?」
「分かりました。お任せ下さい」
赤毛の青年は恭しく頭を下げると、オウル達をつれて隠し部屋を後にした。
その後。
オウルは、ルシアとオルクと共にウイング一族に迎えられ、オウル・ウイングと名乗り当主の相談役をしながら生きていく。
大人になったオルクは、当主の末娘と大恋愛の後結婚し、名実ともにウイング家の一員になった。
ケントルムから脱出→ゼルキュウムへ亡命でした!
王子は結局ルシアを諦めきれず、生涯独身を貫き弟の息子。甥っ子を養子に貰って王位を譲りました。
オウルは一生ウイング領から出ることはなく、ルシアもウイング領を出なかったので王子に見つかる事は有りませんでした。
ライクス達は放置です。友人ではなく知人だし、公爵に情報が漏れたら不味いので。




