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目指せ孤独死!御一人様!!  作者: 柳銀竜
捨て子のオウル
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貧乏子爵様

子爵様登場です!

 

 ライクスの父親に捕獲された後。


 オウルは、ライクスの父親の乗ってきた馬に乗せられ町を走る。


 前世では何度も馬に乗った事が有るので、相乗り等 余裕だった。


 馬を扱うのはライクスの父親だし、自分は体のバランスを取るだけだから。


 移動中。ライクスの父親はオウルの素性を少しでも知りたいのか、五月蝿いくらいにオウルに話し掛けてくが、オウルは今はだだの孤児でしかないし、独り身なので対した話は無い。


 前世の記憶があるなんて言えないし、言えば精神病を疑われそうだから彼に話す事は無いだろう。


 ウイング家には前世で遺言を残したから、話しても問題は無いのだけれど。


 その長ったらしい会話の中で、オウルが得た有益な情報は、ライクスの父親の名前がライエルだと言う事だけだった。


 ライクスの父親って呼ぶのは、セリフが多くて面倒だし。


 因みにライエルは、オウルから対した情報を得られなくてガックリと肩を落としていた。


 まあ…別にいいかコレは。


 馬で町を走り町の中心部に着くと、ついた場所はソコソコ大きい貴族のお屋敷だった。


 …屋敷はかなり寂れた感じの古く、あちこちにひび割れや苔が生えている。


 それでも古いくすんだ装飾は立派で、昔はソコソコ栄えていたが優秀な子孫がいなくて廃れたと言った風体のお屋敷だった。


 室内に入ると、一人の使用人が玄関付近で待っていて…待っていたのだが、この使用人はもう駄目だろう!と言いたいくらいヨボヨボな老婆で、何度も部屋を間違えるあたりボケも入っている。


 最終的に老婆を、もう大丈夫だからと部屋に返したライエルが、子爵の執務室に道案内してくれた。


 普通は応接間に通すものではないのかとライエルに聞くと、今の応接間には机も椅子も無いらしい。


 どれだけ貧しいんだ…この子爵家。


 オウルが密かに子爵家の心配をしていると、ライエルがちょっと他の扉よりちょっと豪華な扉をノックした。


 ライエルが部屋をノックをすると返事があり、入室の許可を得たオウルとライエルが部屋に部屋に入る。


 部屋の中には、清潔な装いをした商人風の青年が居て、椅子に座って此方を見ていた。


 爽やかな笑顔だ…この人が子爵様らしい。


「その子が例の盗賊の情報を提供してくれた方ですか?」


 子爵はオウルをチラッとみてから、オウルの後ろにいるライエルに聞く。


 するとライエルは、深く頷いた。


「はい。名はオウルです」


 子爵はライエルの言葉にコクッと頷くと、子爵はオウルの前でしゃがみこみ オウルと目線を合わせる。


「オウルですか…オウル。私はアイン。アイン・シュラスと言います。盗賊の件はありがとう御座いました。とても助かりましたよ。ライエルから褒賞金はもらいましたか?」


 子爵がニコッとオウルに笑いかけると、オウルはコクりと頷いた。


「はい。では失礼し…」


 そのまま逃げようとしたオウルの肩を、ライエルがガシッと掴む。


 顔合わせはしたのだから良いじゃないか…早く帰りたいとオウルはライエルを軽く睨むと、肩を掴む腕に更に力が入った…痛いから放せ!


「待たんか!子爵!この少年が土地を豊かにする秘策があると言っていました!」



「!!言ってな「本当ですか!!本当に!」


 オウルが面倒事の気配を感じ、ライエルに反論しようと口を開いた瞬間。


 今度は子爵に、ガシッと両腕を捕まれた。


 かなり痛い!ライエルに掴まれた時より痛いし、子爵の目が血走っていて怖い!


「痛いです!離してください!」


「ああ!すまない」


 オウルが必死でそう叫ぶと、子爵は慌てて手を離す。


 オウルが服を捲って腕を見ると、掴まれた腕が赤くなっていた。


 何だよこの二人…


 オウルは、ハアーと全てを諦めた様にため息をつくと、子爵をじっと見ながら語りかけるように話し出した。


「はあ…仕方ない…子爵。まず確認したいことがあります。ヘクセライ産の穀物の栽培や果物を栽培してみたりしましたか?」


 ヘクセライ大陸は極寒の大陸。


 この土地も極寒とまではいかないが、かなり寒いから育てられる植物がある可能性が高い。


「え?他国の穀物を作っても育つわけが…」


 子爵の言葉にオウルはため息をついた。


 駄目だこいつ…


「それがいけないのですよ。他国でも他領でも、同じ様な気候の地域がある可能性があります。

 外の土地での農業の仕方や種蒔きの時期を調べた上で、この土地の害虫や自生している植物を調べて外の地域の植物を栽培できないか挑戦してみたりしてみてください。それでも農業で生計をたてるのが困難ならば、畜産を始めてみるのも良いでしょう。人間が生きれる土地なのですから、環境にあった動物は必ずいるはずですよ」


 植物が無理なら、畜産でもいい。


 水さえあれば草くらい育つだろうし、牛や馬は無理でも荒れ地に強いと言う山羊のような動物を飼育する事はできるだろう。


 肉を卸すとなるとかなりの数が居ないと駄目だが、乳を絞ってチーズ等の加工品を売るなら少数の山羊でもいけるはずだ。


 それらを売って、生計をたてればいい。


「…探したいが予算が…」


 何をするにも投資はいる。


 何の投資もしないで、この貧しい土地の民の生活を改善するほどの改革をするなど無理に決まっている…ああ…そうか…


「そうですか。なら諦めて下さい」


「イヤイヤイヤ。諦め早いだろ!どうにか出来ないか?」


 無理に決まっている。


 子爵は多分…やろうとしている姿勢を民に見せたいだけだ…いや…自分がやった気になりたいだけだろう。


 そんな奴に、助言などしても無駄だ。


「だって子爵様が消極的なんだから、俺が何を言おうと無駄でしょう?」


「消極的!いや!そんなことは!」


 子爵は焦った様にオウルに叫ぶ。


 子爵も、領地改革をしたいとはちゃんと思っているらしい。


 …ならば…


「子爵様。貴方様が本気でこの貧しい領地をどうにかしたいなら、資金がないからと渋るなんてあり得ません。どんな事業にも投資のための資金が必要です。何をするにも金はいります。ライエル様だって給金をもらって兵士をしているのでしょう?」


 話を振られたライエルは、ヴッと言葉に詰まり子爵から顔を背ける。


 オウルの言い分に納得してしまい、主の味方が出来ず気まずかったんだろう。


 身を切らずに、何かしらしようとしていた子爵はオウルの言葉を聞いた後…別に顔を青ざめて下を向くいた。


 そして…数秒して顔をあげたその目には、覚悟を決めた男の…決意の炎が燃えていた。


「…確かに君の言う通りだ…王都に従兄弟がいるから彼に助力を乞おう」


 子爵はそう口にすると瞳の炎が消え、オウルに向かって力無く笑う。


 今まで助力を要請してなさそうなあたり、性格に難有りな従兄弟のようだ。


 交渉は難航するだろうが…まあ頑張れ。


 オウルは一通り話が終ると、足元をチラリと確認しニヤリと笑う。


 そして子爵とライエルに、ペコリ頭を下げてから口を開いた。


「そうですかでは俺はこれでロワン・サファル・オウル」


 オウルがそう言った瞬間。


 パッと室内が光に包まれ、オウルが部屋から消えた。


 実は会話の最中に、オウルは脱出用に魔力で子爵達にバレないように魔力で魔法陣を作っていたのだ。


 そんな事をしていたなど知らない子爵達は、オウルが転移魔術を発動しその場から消えた事実に唖然としながら、オウルがいた場所を凝視する。



 一瞬の出来事で、止める間もなかった…


「…彼は何者だろう…」


 ただの少年ではない…本当に人間か疑わしい。


「少なくとも人間だと思います…しかし…ただの少年ではありませんね」


 十歳の少年が、呼吸をするように魔術を扱える訳がない。


 世界中にいる上級魔術師でも、こんなにも上手く魔術を操れる者は居ないだろう。


「…彼の願いは、できるだけ叶えてあげてください」


 姿を消す魔術も使えるとライエルから報告を受けていた子爵は、まさか転移陣無しに転移出来るほどの魔術師とは思っていなかった。


 捕縛して投獄しても直ぐに牢屋から出ることが出来るだろうし、下手に怨みを買うと知らないうちに刺されそうなので、敵対しない方が良いだろう。


「わかりました」


 ライエルも、オウルの恐ろしさに身震いする。


 姿を消すだけならば何とかなると思ったが、何処でも転移出来るなど恐ろしい。


 オウルがその気になれば、どんなに警備を増やしても侵入し放題だし、殺ろうと思えば何時でも殺れるのだ。


 …ライクスにオウルの願いは、出来るだけ叶えるように良いきかせなければ…


 ライエルは子爵に軽く挨拶をすると、妻子に忠告するために食堂に急いだ。




ちょっと本編の捕捉をします。


オウルが呼吸をするように魔術を操れるのは、風の魔術師としての人生を既に二回経験している上に、神様の力や精霊の力を貰っているからです。


二回分の人生経験と+十年で、九十年位の知識と前世で叩き込まれた魔術の知識。地球人としての知識まであるのでバカで才能皆無ですが優秀に見えるんです。


中身大学生が、小学生の体で生活して神童と呼ばれると言ったイメージです

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