盗賊
侵入者が現れます!
オウル ピンチです!
「うわぁ!!寒っ!!もうこの季節か…」
俺改めオウルは、白い息を吐きながら窓を開ける。
オウルが換気の為に開けた窓から見える景色は雪景色。
辺り一面真っ白だった。
ここ一帯は 冬になるとかなり寒いし、毎年 大雪が降る。
海が近いせいか、降る雪は湿った重い雪ばかりだった。
重い雪を放置すると家が潰れてしまうので、オウルは風魔術で除雪作業をしながら、ウンザリする量の雪を眺めた。
これだけ雪が降るのだから、北国である事はだけは確かだが、神族は見当たらない。
なので、マグダリアかケントルム辺りかなとオウルは思っていた。
何故か神様に押し付けられ…付けてもらった精霊に聞いてはみたが、彼等には(国)と言った感覚が薄かった為に「ここはどこの国?」と聞くと「人間の国」と返ってきて、「そうじゃ無くて…」と聞き返している間に、精霊はオウルの体の中に入って寝てしまった。
この精霊はかなり年老いた精霊らしく、力が弱っているせいで長時間 自分の存在保つ事が出来ないらしい。
なので、神の力の影響を受けているオウルの体の中で眠っている事が多かったりする。
この精霊は、残り僅かの寿命を大好きな人間の世界で生きたいと神に願ったらしいが、既にかなり弱っているようで、大半の時間を眠ったまま過ごしている。
そして、思った様な答えを得られなかったオウルは、ちょっと…いやかなりここが何処か気になった。
銀猪の毛皮を売った金で 地図を買ってから、店の定員にここが何処なのか聞いてみた。
いつ地図を買ったのかと言うと、毛皮を売った直後だ。
オウルに質問された店員は、仕方無いなといった感じで何の疑問もなくオウルの問いに答えてくれた。
後で聞いた話だが、この国では自分の国が何処か分からない奴は、大して珍しくないらしい。
オウルが生まれ育ったこの一帯は、かなり貧しいようで読み書きや計算が出来ない者が大半らしい。
だが読み書きが出来ない子供でも、好奇心の旺盛な子供は外の世界を夢見て、小遣いを貯めてまで地図を買いに来る事もよくあるそうだ。
店員から教えてもらって判明した事は、ここがマグダリアの国境付近のケントルム国である事。
俺の住んでいる森は、ケントルムの中でも一際厳しい地域だった事だった。
寒さが厳しい上に、収穫時期に強い北風が吹き作物を駄目にしてしまうらしく満足に食べられない村が殆どらしい。
風が吹く前に収穫すればいいのだろうが、それでは収穫率が下がるらしく、ギリギリ収穫できる年もあるので何とか生活できているのだそうだ。
収穫出来ない年は子供に、奉公と言う名の身売りをさせるらしく、女の子はガリガリでも高値で売れ、男の子は一ブロンにもならないらしい。
だから自分は捨てられたんだな…
そんな事を考えながら、オウルはふと港町の方を眺めながらボソリと呟いた。
「もう大丈夫かな?二月たってるから大丈夫だよね」
あの恐喝事件から二月…流石にあいつらも諦めただろう…か…
「いや…まだ探してるかも…でもいい加減胡椒とか欲しいし…」
心配性のオウルは、かなり悩んだ…だが危険な目に遭う可能性はかなりある…しかし食の充実も大事だ…
しかも冬になり、新鮮な果物が取れなくなって毎日、保存食しか食べていない。
定期的に海で精製しているから塩はある。
しかし、塩だけしか無いのでスープもいつも同じ味だ…正直物足りない。
「野菜とかも欲しいし…でも山菜があるし…うん…いいや…」
悩みに悩んだオウルだが、買い物をする事をキッパリ諦めた。
自分はまだ子供だし、成人年齢になってから町に行った方が絡まれにくい筈だ。
野菜や香辛料は、成人祝いに取っておけば良い。
「まあ…果実の干した奴とか、干し肉。塩も十分あるし、蒔きもあるから暫く家に籠るか…」
そう決意したオウルは その年の冬。家から殆ど出ずに冬を越した。
寒い時期は、引きこもるのが一番幸せだ。
それからオウルは、短い春と夏と秋に果物と肉。塩と薪を集め保存し、長い冬にチマチマそれを消費しながら一年一年を生きていたのだが…
「あれ?」
十歳になったある春の日。
狩りを終えたオウルが獲物の血抜きを終えて家に戻ると、何やら家から物音がする。
ここいらの獣が、あの高さを上れるわけが無いので、確実に侵入者は人間だ。
獣に家の場所を見つけられたらまずいと考え、風魔法で体を覆っていて良かったと胸を撫で下ろしたオウルは、草むらから家を伺う。
オウルが我が家を観察すると、縁側部分にフックが刺さっていた。
刺さったフックにはロープがくくりつけられているので、賊はこれで侵入したようだった。
次に窓の方を見てみると、窓が開け放たれていて中の様子がよく見える。
家の中では五人…いや七人のがたいのいい男達が家の中を漁っていた。
その男達の一人が、家の保存庫に入れていた筈の干し肉をかじりながら、外の男達に話始める。
「これうめぇ!くってみろよ!」
「おっ!うまそうだな」
男が塩漬け肉を、塩の入った箱を開けようとしていた男に渡すと、それを受け取った男は肉をムシャムシャ食べながら肉の脂でベトベトな手で箱を開けた…汚い!!
「お!塩がたんまりあるぜ!森の真ん中なのに!」
箱を開けた男が、塩の入った袋をナイフで切り裂きながら楽しそうに声をあげる。
そしてまた他の男が、壁にかけて陰干ししていた銀猪の毛皮を見つけて、ワシッと掴んで引っ張った。
「銀猪の毛皮まであるぜ!」
「このベッド寝心地最高だ!」
オウルが声がした方を見ると、何ヵ月も体を洗って無さそうな汚ならしい男が、オウルの大事なベッドにダイブした所だった。
…後でシーツを、念入りに洗濯しなければいけないようだ。
「地図もあるな…靴も…この服のサイズだと十歳前後…飾りっけねぇし男か」
外の男達よりは頭が良さそうな男が、地図を見つけてそう言うと、ベッドにダイブしていた男が下品な笑い声をあげた。
「なんだ男のガキかよ!女だったらぐへへへ」
「てめえが そんなんだから悪さがバレて町に居れなくなっちまったんだろうが!」
肉を食べている男が、そう言ってベッドに寝転んでいる男の頭を軽く殴ると、ベッドに寝転んでいる男は、唸り声をあげながら起き上がった。
気が短いらしい。
「喧嘩は止めろ!それと誰かガキを探してこい!」
地図を見つけた男が、喧嘩を始めた二人の頭を叩き怒鳴り付けると、ベッドに寝転んでいた男がニヤリと嫌らしく笑う。
「売るのか?」
ベッドに寝転んでいた男がニヤリと笑うと、リーダーらしき地図を見つけた男は楽しそうにニヤリと笑った。
「いや。俺達の代わりに仕事をしてもらう予定だ。俺達は町に入れなくなっちまったが…このガキは入れるだろう?」
「ガキが、俺達の言う事大人しく聞くか?」
ベッドに寝転んでいる男が首をかしげると、地図を見つけたリーダー格の男は、懐から首輪取りだし楽しそうに笑いながら叫んだ。
「これがある」
「お!奴隷の首輪か!禁製品なのによく手にはいったな!」
「まあな。おい!ガキは近くにいるはずだ探せ!」
「「「「「「おお!」」」」」」
ヤバイ…
ラウルは俺達の話を最後まで聞かず、無言でその場を走り去った。
家や家具に食料…作り上げたモノを全て失うのはキツいものがあるが、あんな不潔で明らかに悪事を働いている奴らの奴隷など御免だ。
しかし…この森は広いようで狭い。
あの大木程の好条件の住みかは無いし、いつまでも森に居ればいつか捕まるだろう。
暫くは何処かに身を隠さないと…いや…まてよ…
オウルは悪事を思い付いた悪魔のようにニヤリと笑い、風魔術で空に飛び上がると、全速力で港町に向かって飛び去った。
オウルは大事な家と、大事な大事な食料を失いました…
次回。まだあの人は出て来ませんが、新キャラがでます!
次も宜しくお願いします!




