表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目指せ孤独死!御一人様!!  作者: 柳銀竜
王女ミリアンナ
13/55

死は突然に

ミリアンナの章 最終話です!


楽しんでいってください!!

 


 騒がしい結婚式から九年後。


 マグダリア城の後宮に作られた立派な庭園の、ど真ん中に作られた柔らかな芝生の上で、マグダリア王の側妃であるミリアンナと今年八歳になる息子のミリオルが、二人一緒に芝生に寝転びながらノンビリ空を眺めていた。


「あれは、ホイップクリームのタップリのったカップケーキに見えるね!」


「あれは、シナヨっぽいよ!」


「本当だ!」


 二人で雲を眺めながら楽しく談笑していると、ミリオルが何かを思い出したようにガバッと立ち上がり、慌てた様子でミリアンナに叫んだ。


「あ!母様!!今朝 母様の侍女が、今日のお茶菓子はシナヨのパイって言ってたよ!もう直ぐお茶の時間だし速く行こう!直ぐ行こう!」


 この世界の王公貴族は、昼頃に軽食を食べる習慣がある昼食を食べない代わりだ。


 平民も経済的な余裕がある者や、肉体労働する者なら軽食を食べたりする事もある。そして、ミリアンナ達の軽食はいつも甘味で今日はシナヨのパイ。


 シナヨを思い出して、だらしのない顔をしたミリオルは、寝転んだままのミリアンナをグイグイ引っ張りながら、無理矢理起こして 早く早くと母にせがむ。


 そして…そんな二人の様子を、マグダリア王シャレグが芝生の手前で微笑ましそうに眺めていた。


 だが…


 シャレグが耳を済まして良く聞いてみると、二人は食べ物の話しかしていない。


 それに気づいたシャレグは、なんとも言えない顔で ため息混じりに呟いた。


「思考回路までミリーに似るとは…」


 シャレグが、ハーとため息をつきながらそう言っていると、いつの間にか背後に一人の青年が立っていた。


 地方視察に行っていた筈のもう一人の息子。


 シャレグとエリザの長男で、今年十九歳になるエルサム王太子が期待に満ちた目でシャレグを見て笑っていた。


 彼の視察の日程を考えると、着替えすらせずにここに来たらしい。


 土産らしき物を手にもっている辺り、ここに来た目的はミリアンナと異母弟のミリオルにお土産を渡すためだろう。


 そしてエルサムは、土産をカシャカシャ鳴らしながら、シャレグにズイッと身を乗り出して来る。


 エルサムが土産を振る度に、濃い甘い匂いが漂っている…多分…土産の中身は、クッキーかチョコレートだろうと思う。


 ミリアンナ達は、甘いものが大好きだからな。


 …いや…今はそれよりも…


「父上!もしミリー様に不満があるのなら、直ぐに離縁してください!ミリー様!離縁した暁には是非私の妻に!」


 シャレグは 息子の突然の台詞に驚く…事は無い。


 エルサムは始めこそミリアンナに反抗的だったが、ミリアンナに厳しく時に優しく教育され、次第にミリアンナを慕うようになっていった。


 そしてエルサムは、ミリアンナに良く似たミリオルも息子の様に愛している。


 最近は父親である自分に、ミリアンナと離縁しろと 毎日 かなり五月蝿い。


 それに、例え自分が妻と離縁したとしても、義理とはいえ…息子と婚姻などできないはずだ!


 そして…それよりも…


「五月蝿い!!お前はさっさと其処らの令嬢をめとれ!!」


 見合いすら拒絶する問題児エルサムに、シャレグがそう言って怒鳴る。

 きつく怒鳴られたエルサムは、ギロリと父親を睨み付け力強く反論した。


「嫌です!ミリー様がいいんです!それに父上とミリー様は十も離れていますが、私とミリー様は五歳しか離れていないじゃないですか!!私の方が釣り合いが取れます!ミリー様を解放してください!」


 確かに年齢的には、息子の方が釣り合いはとれている…それは認めよう…しかし!!


「ふざけるな!ミリーは生涯私の妻だ!だれが息子に渡すか!」


 愛しいミリアンナを、どんな理由があろうと他の男にくれてやる気はない。


 しかもエルサムは、母方似の顔立ちなので奴の顔を見るだけで、内心かなり苛つく。


 この九年の間に、シャレグのエリザベス嫌いは激しくなり、今は顔を見るだけで気分が悪くなる。


 そんなシャレグの心境も後押ししたせいか、二人の言い争いが段々激しさを増していく。


 それを黙って見ていたミリアンナが、苦笑しながら立ち上がると、二人を宥めようと口を開いた。


「ハイハイ。喧嘩はやめガブッ」


 ガゴン!!バタン!


 二人の間に行こうとミリアンナが、一歩踏み出した瞬間。


 ミリアンナがなんの前触れもなく、バタンと地面に倒れ込んだ。


 三人が突然の出来事に、状況が理解できず固まっている間にも…

 ミリアンナの後頭部からは、ドクドクと真っ赤な鮮血が流れ出す。


 そんな混乱の中、いち早く我に帰ったミリオルが、困惑と焦りを滲ました…悲鳴のような声をあげた。


「え!母様?え!何で血塗れ!!父様ぁぁぁ!!兄様ぁぁぁ!!母様が!!」


「ミリー!!」


「ミリー様!!」


 ミリオルの叫び声で我に帰ったシャレグとエルサムが、慌ててミリアンナに駆け寄り止血を始める。


 そしてミリオルは、回りにいる側近や近衛と一緒に医者を呼びに走って行った。




 翌日…



 人々の心境を写し取ったような土砂降りの中…


 マグダリア国の神殿で、盛大な葬儀が執り行われた。


 昨夜…


 マグダリア王 シャレグの側妃ミリアンナが、治療のかいもなく死んでしまったのだ。


 死因は出血多量…後頭部に、何かがぶつかったのが原因らしい。


「…ミリアンナ…まさかこんな事になるなんて…」


 マグダリア王シャレグは、喪服に身を包み青ざめた顔で俯いている。


 そんなシャレグの隣で、喪服にも拘らず 何処と無く派手な服装のマグダリア王妃エリザベスが、シャレグに痛わしげに声をかけた。


「陛下。お気を確かに」


 気を使っているようにも見えるが、彼女は何処と無く嬉しそうにも見える。


 シャレグは、そんなエリザベスを嫌そうに一別したあと、息子エルサムの方に顔を向けた。


 このままエリザベスを見ていたら、彼女を殴り付けてしまいそうなくらい腹立たしかったのと、エルサムに大事な話があるからだ。


 シャレグがエルサムを見ると、彼は静に涙を流していた。


 シャレグは、エルサムがエリザベスのように腐ってなかったと優しく笑いながら安堵する…


 今のエルサムになら、任せて良いだろう。


「エルサム」


「うぐっ…あ゛い…」


 エルサムが涙声で返事をすると、シャレグは可笑しそうに…そして疲れたように笑い、静に口を開いた。


「私は退位する。葬儀が終わり次第…戴冠式を行うから準備しておけ」


「え゛…」


 エルサムが驚いて、穴が開くほどシャレグを見つめていると、シャレグの隣にいたエリザベスが、葬儀の最中だと言うのに隠しもせずに、嬉しげな声をあげる。


 そして、期待に満ちた目でシャレグを見詰めた。


「陛下?エルサムを王に?私はてっきり…ミリアンナの産んだミリオルを王にするのだと…」


 エリザベスはそう言いながら、チラリとエルサムの隣に座るミリオルを見た。


 嫌な目でミリオルを見る母から、エルサムはミリオルを守るように身をのりだし、エリザベスをギロリと睨み付けた。


 そして当の本人であるミリオルは、呆れたようにエリザベスを見ながらため息を吐く。


 性格が悪い彼女は、驚くくらい実の息子に嫌われていた。


「勘違いするな。エルサムに王位を譲るのはミリアンナの願いだ…それに…」


「うん。俺は王なんてなりたくないから、文句なんか無いよ。母様には王様の大変さを、毎日毎日言い聞かせられていたし、王位争いなんて国の毒にしかならないしね」


「と言うわけだ」


 ミリアンナは、結婚前に自分が産む息子に王位を…重荷を背負わせないで欲しいと言っていた。


 それにミリオルは権力など欲してはいない。


 それに…異母兄弟であるエルサムとも、実の兄弟の様に仲が良いので争いたくないらしい。


 ミリオルも頷いたのを見て、エリザベスは心底 安心した様に息を吐いた。


 ミリオルは、貧民街の改革や町の治安向上を成したミリアンナの息子で、優しく穏やかで頭も良い。


 なので、民や臣下からも人気が高かった。


 王妃としての仕事も、いつの間にかミリアンナが取り仕切り、名ばかりの王妃となってしまった自分の息子よりも、ミリアンナの子供であるミリオルを王に!と望む者は…かなり多い。


 なのでエリザは、エルサムが王位を継ぐのを絶望視していたのだが…


 ミリオルは継ぐ気はない上に、シャレグが エルサムに王位を継がせてくれると明言したのだ!この期を逃してなるものかと、エリザはガバッと立ち上がり、バッと笑顔でシャレグの方を向いた。


「…ミリオルの意思でもありますのね…わかりましたわ!臣下達に指示しておきます!」


 エリザベスは、嬉々として戴冠式を進めるべく堂々と葬儀を中抜けしていった。


 その様子を…シャレグから連絡を受け、ミリアンナの死を知り、急いでマグダリアに駆けつけて葬儀に参列したゼルギュウムの王族達と、ゼルギュウムの神殿長。

 そして、アルズとエレナの七人は怒りに満ちた目で、楽しそうに去っていくエリザを睨み付けた。


 側妃の葬儀を楽しげに…しかも中抜けまでした王妃の態度を心底怒ったゼルギュウム王族と神殿長が、拡大誇張して他国の王族貴族。商人に貧民にまで広めたせいで、いつの間にか王妃の母国であるパォティスの悪評に発展してしまう。


 その数年後に 国が亡びてしまったりするが、それはまたの話で。




 そして…


 何もない神の世界で、ミリアンナであった魂が、自分の葬儀の様子を水溜まりのようなモノを通して見ていた。


 勿論 神様も一緒だ。


「…また何か…変な死に方したな…君」


 神様が、憐れんだ目でミリアンナを見る。


 可哀想なモノを見る様な視線にさらされたミリアンナは、嫌そうに吐き捨てた。


「そんな目で見るな!私は…ねぇ神様。あの時…私に何がおきたのか教えてくれないかな?」


 ミリアンナがそう聞くと、神様がミリアンナの頭をぐりぐり撫でながら優しく笑う。


 …対応に困るから、優しくしないで欲しい。


「…そうか分かんないか…まあ背後からだったしな。ユリナ…いやミリアンナが庭園から戻ろうとした時に、庭園の柱の突起部分で昼寝をしていた猫が寝返りをうったせいで、外壁の一部が剥がれて偶々それが鋭く尖っていて、偶々 下にいたお前の後頭部に突き刺さったんだよ」


 …偶々多くないか?いやそれよりも…


「…後頭部に…私って運悪すぎない?それに運が悪いだけで、変な死に方じゃないよ!」


 ミリアンナがそう訴えるが、神様は首を横に振った。


「いや変。普通の人間は他人の死の運命に巻き込まれないように、本能でそれを避けるんだよ?なのに、君はあの時…自分からすすんで破片の前に出たんだよね。本当は、君の真下にいた栗鼠がその破片で命を落とすハズだったんだけど…君が代わりに死んじゃったんだよね」


 栗鼠の代わりに、私が死んだらしい。


 なんて事だろう…しかも誰でも本能的に出来る筈の事が、自分は出来なかったらしい。


 ああ…でも…


「…私が死んで栗鼠が生き延びたんならいいか…まあ。それはそれとして、シャレグ!あんた何をしてんのよ!毒で自殺とか馬鹿じゃない!」


 ミリアンナは、クルッと背後に立つ夫 シャレグを睨み付ける。


 シャレグは、エルサムに王位を継承させた後に服毒自殺していた。


 私の後を追ったらしい…馬鹿だ!


「ミリアンナ…私は…いたっえ?ミリアンナぁぁぁ!!」


 ミリアンナは、抱きついてきたシャレグを問答無用で蹴りつけ、神様が作った転生をする為の空間に蹴り落とす。


「ありゃりゃ。先に転生に入っちゃったよ」


 神様が穴を除きこみながらそう言うと、ミリアンナはフンと鼻を鳴らし転生の空間を睨み付けた。


「来世までアイツと結婚したくない!」


「あれ?シャレグが誰か分かっちゃった?」


 神様がニヤニヤ笑いながらミリアンナを聞くと、ミリアンナはムスッとしながらも素直に答えた。


「シュエでしょ?」


 神様は正解だ!と楽しそうに笑いながら、他にもいるんだよね~と捕捉をしてくれた。


「そう。シャレグ王はシュエだ。因みに君の生母がサヴァー、双子の妹がグレルで兄が炎華。因みに父親はミンストレルだったりする」


 ミンストレル?!ミリアンナはその名前に、驚いて目を見張った。


 ミンストレルは純血ではないが、ハーフなので五百年位は寿命があるから、まだ生きている筈だ。


 死ぬには早すぎる。


「ミンス…死んでたの?」


 ミリアンナがどういう事だと睨むように神様を見ると、神様はため息をつくように呟いた。


「彼女は、教王になる前からサヴァーを愛していて、サヴァーが死んだ後 直ぐに自殺したんだよ。しかし…あの国では自殺は重罪で、教王の死因がそれじゃ困るし、病気で死んだ事にしたらしい。あの国の情報は、余り他国に出回らないから、君が知らなくても無理はないけどな」


「悪いことしたな…」


 ミンストレルの気持ちを、一切知らないままサヴァーを自分の婿にしてしまった。


 私は彼女に、恨まれているかもしれない。


 ミリアンナが暗い顔で俯くと、神様がミリアンナの頭を撫でながら首を横に振る。


「いや。彼女は自分の気持ちをサヴァーに伝えてはいたらしい。しかし…サヴァーは彼女をふってからお前に求婚したそうだ。ミンストレルもお前を恨んでいなかったし、今世はあきらめるが来世は!と意気込んでいた。自殺したのも、サヴァーと同じ時期に転生するためだから、ミリアンナが気にやむ事は無い」


 …ミンストレルも結局…夫達と同じ穴の狢だったらしい。


 神様が親切に説明…あれ?


 神様の声じゃない?


 それに良く考えると、神様は普通に立っているだけだ。


 では誰が自分の頭を撫でているのだろうか?


 ミリアンナがバッと後ろを振り返ると…


「!!ルシフル!何でここに!」


 元夫 ルシフルが、慈愛に満ちた目でミリアンナを見下ろしていた。


 彼は、ミリアンナと視線が合うと嬉しげに目を細める。


 彼が何かを口にする前に、神様が嫌そうな顔でミリアンナの疑問に答えてくれた。


「ここでずっと…お前が人生を終えるまで待ってたんだよ…何か…シュエより怖い執着で、俺はかなり引いた」


 ウゲーと顔を歪める神様を無視して、ルシフルは優しくミリアンナを抱き締上げる。


 そして、ミリアンナの耳元で優しく蠱惑的な声で囁いた。


「シュエには敵わないからな。しかし、次の生では無理でも、次の次の生で私とユリナ…ミリアンナが結ばれる為に、シュエがミリアンナと同じ時代に生まれないように…転生の空間の時代を、前もって弄っていたんだ。私がシュエを蹴り落とすつもりだったが、ミリアンナが先にやってくれた…ほら…私の干渉の効果が消えて色が変わっただろう?これで、百年は時代がずれる筈だ。さあ…行こう…君の来世は私がもらうよ…」


「え!まっ…待って!ちょ…神様ぁぁぁ!!」


 ルシフルは抵抗するミリアンナを抱き締めたまま、転生の空間に飛び込み消えていった。


 数十年ぶりに一人きりになった神様は、クスクスと笑いながらヒラヒラと転生の空間に向かって手を振る。


「まあ。人生 楽しんでこいよ、ミリ」


 神様は、彼女の最初の名前を口にしながら、楽しそうに転生の為の空間閉じると、水鏡を除き混む。


 彼女の次の人生も、波瀾万丈だろうから退屈しないですみそうだ。




ミリアンナの章 最終話でした!

そして、ルシフルはシュエと同じくらいには執着心が強かったようです。


そして次の章では、ミリは生まれた瞬間から大ピンチです。


この物語は、まだまだ続きますので今後とも宜しくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ